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彼女
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しおりを挟む『頼もうかな』
そう返事をしたときの鈴原の顔は見物だった。
自分から言い出したくせに、目が飛び出るんじゃないかってくらい見開いて。
思わず定規で測りたくなるほどだった。
そのあと、笑うかなと思ったのに…泣くから。
なんだかとても愛しく感じた。
きっと、うまくいく。
そのうち、真由の事なんて綺麗な思い出になるんだ。
次の日から、告白の返事は『好きな人がいるから』ではなく『彼女がいるから』に変わった。
なんだか最初は変な気分だったが、だんだん慣れていった。
鈴原 明【スズハラ アカリ】
その名前の通り、とても明るくて表情のくるくる変わる子。
俺の初めての…彼女。
大事にしなきゃ。
真由との思い出よりも、彼女との今を。
中学生が1人では危ないからと、鈴原に帰りに学校へは来ないよう約束させた。
かわりに休日に一緒に映画を観に行ったりするようになった。
「先輩っ」
犬のしっぽが見えるようだと思いながら、鈴原がこちらに走ってくるのを見ていた。
「別に走らなくても逃げたりしないのに」
笑いながら冗談のつもりで言ったのに、鈴原の表情は一瞬だけ固まった。
「だって少しでも早く逢いたいじゃないですか~。
それに今日は制服デート!
1回やってみたかったんですよね~」
すぐにいつも通りに戻ったが、その表情は俺の心に焼きついた。
「休日に制服なんて、俺にはわからないけどな」
悪態を衝きつつも、考えてしまう。
やはり、不安にさせてしまっているのだろうか?
付き合って数ヶ月。
俺たちはまだ手すら繋いだことがなかった。
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