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臆病者

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「真由さんとはどうなったんですか?」



いつものように図書館で勉強していたときのこと。

いきなり突拍子もなく聞いてくるから、思わずシャーペンを落としてしまった。

「は!?」

思わず声が大きくなる。

「だって、真由さんが好きだからあたしと別れたんですよね?
だったら、そのあと何か…」

「何もないよ」

俺はこれ以上話が続かないように、すばやくそう言った。


鈴原は、しばらく俺を疑惑の目で見ていたが、視線を教科書に戻し言葉を放った。

「ふーん、案外ヘタレなんですね」

「なっ!お前なぁ」

友達としてヨリを戻してからは本当に遠慮がない。


俺は頭を掻き毟りながら問題集を指差す。

「じゃあ、次これ!」

「あ、ひどい!
ここまだやってないじゃないですか!
先輩、大人げな~!!」

鈴原はブツブツ言いながら俺の指した問題に頭を抱えている。

その光景に少し満足しながら、外の景色に視線を移した。




本当はあったんだ。



『なにか』ってほどのことじゃないのかもしれないけど。


鈴原と別れた後、俺は真由の家に向かったんだ。

やっぱりどうしても、気持ちだけでも伝えたくて。


でも、いざ家の前まで行くと、中へ踏み入ることができない。


あっちは俺のことなんて覚えてないのに、なんて切り出そう?
家の事情も知ってることをなんて説明すれば?

…なんて。


いろいろ理由をつけてはそこに留まっていた。

本当はただ、振られるのが怖かっただけのくせに。



そんなだから、先を越されたんだ。
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