素直になれなくて

吉野ゆき

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原点

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吉哉さんはまだ入院が必要なものの、順調に回復していた。


毎日現れて世話をする私に、吉哉さんは最初戸惑っていたみたいだ。


やっぱりあっちも私が自分のことを嫌っていると思っていた証拠だろう。


何か必要なものはあるかと聞くと、『缶のドロップ』と答える吉哉さんには笑ってしまった。
どれだけキャンディーが好きなんだか。


こうして毎日着替えなど必要なものを運んでいると、母が入院していたときのことを思い出す。


吉哉さんと出逢った、あのときのこと。

私、いつから吉哉さんのこと好きになってたのかな。


あの頃は本当に余裕がなかった。

何に対しても、イライラしてカツカツしてた。


父も母も誰も悪くない。
わかってる。
でも、じゃあどうしてこうなるの?

正しいこと、善い行いをした結果がコレだ。

世の中理不尽すぎる。


母の着替えを抱えながら病室を目指した。


また泣かれるのだろうか?
そうしたら宥めなきゃ。


本当は行きたくない。


心配していないわけじゃない。

でも仕事詰めで疲れている今の私に、他の人を思いやる余裕なんてない。


全部投げ出せたらどんなに楽だろう。

それも出来ずに結局心にもないことを吐き出すんだ。



「お母さん泣かないで。
なんにも心配ないから」



お母さん、最低な娘でごめんなさい。



ねぇ、私はうまく笑えてる―?
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