冬水花(とうすいか)

璃翆

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通し見る想い

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「凛導(リンドウ)は雪花(セッカ)に会いたくないのか?」
「あいたく・・・・ない」
少し考え込むような動作をしてから力なく頷く。
店の外に詰まれた木箱に腰掛ける少年と青年、目の前には古びた隣の店の壁だけ。
「いつも雪花のことばかり訊いてくるのに会いたくないのか」
その一言で何かに気づいたように驚いたような困ったような顔をした。
「あっ・・・ごめんなさいっ!ボク、とっても失礼なことを・・・・・
水仙(スイセン)のことより雪花のことばかり訊ねて・・・・
何回も来てくれてるのに、いつもいつも・・・・・」
「なんだ、そんなこと気にしなくていい。凛導に雪花のこと訊ねてもらえるのは、とても嬉い。」
「・・・・・・・水仙、雪花をきちんと守ってくれているんだね。」
じーっと見た後、上目使いでの笑顔。あいつと似ている顔。
それを見るだけでおもわず緩む目元、口元。
オレは今、とてつもなく優しい、切ない、・・・・普段し無いような表情してるんだろうな・・・・。
あいつの前では見せるわけにはいかない、オレのこんな顔なんか・・・・
見せてしまったら、最後。
守ることが出来なくなる。
砦であるオレがあいつを守らず誰が守るんだ。
「水仙は雪花のこと大好きなんだ、・・・・ありがとう」
さっき以上にニコニコしながらオレを見る凛導。
完全にバレてる。凛導に雪花を映していること、雪花への想い。
それでもいいと、むしろそれくらいの方がいいと云ってくれる。

凛導を通して雪花を見るオレ。
オレを通して雪花を想う凛導。

「・・・じゃあ、また来る。今度は客として来るから部屋でゆっくり話そう。
雪花の土産話を沢山持ってくるから」
裏口の狭い道、今日も手を振ってくれている。オレが見えなくなるまで、雪花をよろしく、と
店同士に挟まれた長い道、やっと現れた角を曲がると凛導が見えなくなる。
必ず、曲がる前に手を上げる。まかせろ、と

凛導とオレと雪花の関係はとても特殊なものなのだろう。
それでも凛導とオレはこれを選んだ。
・・・・・雪花は、雪花はどう思うだろうか。一番大切なお前に選択権がないなんて、
あの時もオレの手を取る以外は道がなかった、そうさせてしまった。
あれは、あの時はまだ選べたかもしれないのに・・・・・
「・・・・・・・・・オレのエゴだよな」
冷たい風が首筋をすり抜けていく、こんなオレの呟きは掻き消えてしまう。
冬に向かい冷たさを増す木枯らしが身体を冷やす、・・・・・・・・それでいいんだ。
胸に秘めた熱さを伝えてはいけない。
冷やして冷やしてやっと常温を保てる。
平静を、理性を、あいつの前で保ち続けるために、冷静でいたい。冷たくいたい。


オレが・・・・守るべき、守りたい者。

どんなにつらくても、守れないことよりつらいことは存在しないから、あいつの傍にいる。
約束したとおり、一生。

「いつもより遅くなったな、・・・・急ぐか。」
一番いとおしい人が待っているから。





「遅い、遅い、おそい、おそい・・・・・おそ・・・い・・・・・」
船を漕いでいたのがとうとうとう沈没した。
突っ伏した横には海老や貝を使った料理が並べられていた。
自分の分と、この家の主人の分。
ご主人様がご帰宅しないので待っていたら眠気に襲われ、負けた。
「・・・・・・はやく・・・かえって・・・・きて・・・」
バタン。
寝言とほぼ同時に待ち人は帰ってきた。
が、
「ん・・・・・すい・・せん・・・はやく・・・・」
寝ていてまったく気づく様子は無い。寝言を云うほど待ち望んでいた人物がやっと帰宅したというのに爆睡。
「・・・・・待たせすぎたか」
眠気だけではなく空腹感もあっただろうに今まで待っていてくれた。
・・・本当にこいつは・・・・・・・・
「雪花、帰ったぞ」
白銀に近い薄い、水色の髪を撫でる。
サラサラとした雪のようにオレの手から零れ落ちる、髪の毛の一本一本。・・・・やっぱり綺麗だな。
「・・・・ん・・・・・・・あ・・・おかえり、すいせん」
ゆっくりとした動作で寝ぼけ顔を机から離してオレを見上げる。
「あぁ、遅くなって悪かったな、料理が冷めちまったか。」
「そうだよ、せ~っかく美味しいの作ったのにー。冷たくても文句言わせないからっ!」
不貞腐れながらも、帰ってきたのが嬉しくて、雪花はちょっとだけはしゃぎ気味になっていた。
怒ってはいない雪花を見て内心安堵したオレは、
「今日もまずそーだな」
と、心にも思ってないことを言いながら冷めた心温かい料理に舌鼓を打った。

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