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桜井リョウスケの場合
side:桜井リョウスケ 文化祭②
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上映が終わり、お客さんが、ぞろぞろと教室から出てくる。
「桜井センパイ!」
後ろから猪狩さんに声をかけられた。
「あの、お、面白かったです!」
「ありがとう。でも無理にほめなくていいよ。学生の限界を感じる内容でしょ」
「あーもう。リョウは一言多いな!猪狩さん、来てくれてありがとね!」
笑顔でうっちゃんが話しかける。
長谷川さんも「猪狩ちゃんとそのお友達ありがとう♪」と伝える。
「じゃあ、リョウ。休憩行って!」
急に大きな声で休憩を告げられる。
「桜井センパイ、休憩……なんですか?」
「そうだけど」
猪狩さんは友達2人の顔を見る。
友達のひとりが「これから私たち、委員会だから。また後でね!」と告げ、
2人はその場を立ち去っていった。
「なんだ。猪狩ちゃんも一人?せっかくなら桜井くんと一緒に屋台でも行ってきなよ」
長谷川さんが不敵な笑み浮かべている。
俺は猪狩さんを見る。
猪狩さんは「いいんですか?」と俺の方を見ながらいう。
想定外だが、特に問題はないので「うん」と答える。
猪狩さんは少し顔を赤らめながら嬉しそうにしている。
とりあえず、2人で屋台に行くことにした。
「センパイは何食べます?」
猪狩さんは少し距離をとりながら隣を歩く。
「定番の…やきそば?」
「いいですね。3組がやきそばだったと思うので行きましょう!」
こちらを向きながら話しているので、前から来ている人に気付いていない。
俺は咄嗟に猪狩さんを自分の方に引き寄せる。
「っ!!」
少し驚かせてしまったようだ。
「すみません…前から人が来ていたから。無理に引っ張ってごめん」
「い、い、、、いえ。わ、私が前を見ていなかったのが悪いので。こちらこそすみません!」
「じゃあ、やきそば。行こうか」
そのあと猪狩さんはあまり話さないまま、屋台の場所まで歩いた。
「すみません。やきそば2つ」
屋台に着き、やきそばを購入。
近くのテーブルが空いたのでそこで食べることにした。
お腹が空いていたので、すごく美味しく感じた。
猪狩さんは、先程から俯いている。
「ごめん。さっき引っ張ったときどこか怪我した?」
「え。いえ!ご、ごめんなさい。黙っちゃって…」
猪狩さんは少し呼吸を整えてから俺を見た。
「センパイ。今日の後夜祭って誰かと参加したりしますか?」
「誰か?うっちゃんといようかなって思ってたけど」
「じゃあ、あの、途中でいいので少しお時間もらえたり…しますか?」
「今じゃなくて?」
「はい…今は、ちょっと」
「そっか、まあ。見かけたら声かけてくれればいいよ」
猪狩さんの顔がパッと明るくなる。
「ありがとうございます!やきそば、美味しいですね」
やきそばを食べ終え、猪狩さんの教室のクレープに案内された。
せっかくなので!と猪狩さんがクレープを作ってくれた。
バナナチョコクレープ。確かに美味しい。
「どうですか?」
「美味しい。いいデザートの紹介ありがとう」
「はい!」
猪狩さんは嬉しそうに笑ってくれた。
食べ終わったので、猪狩さんにお礼を伝えた。
「今日は発表……頑張りましょうね!センパイ」
「そうだね。頑張ろうね。じゃあ、また発表で」
猪狩さんの教室を後にし、うっちゃんと合流した。
部活の発表前に楽器の確認を行う。俺とうっちゃんはチューバを担当している。
「そろそろ本番か。緊張するなぁ、リョウ!」
「大会よりは緊張しない」
「可愛くないやつ」
「吹奏楽部みなさん、そろそろ移動お願いしまーす」
「「はあーい」」
体育館を仕切っている3年生達から声がかかる。
大会より緊張しない、とは言ったものの吹奏楽はみんなの力で作る音楽だ。
俺の失敗でみんなの努力を無駄にはできない。それは、大会じゃなくても一緒だ。
この数十分間、俺達の音楽に耳を傾けてくれる人たちに少しでもいい時間を
過ごしてもらえるように精一杯、心を込めて演奏する。
わざわざ時間をとって聞きに来てくれている人もいるはずだ。
俺は気持ちを込めて演奏を始めた。
「桜井センパイ!」
後ろから猪狩さんに声をかけられた。
「あの、お、面白かったです!」
「ありがとう。でも無理にほめなくていいよ。学生の限界を感じる内容でしょ」
「あーもう。リョウは一言多いな!猪狩さん、来てくれてありがとね!」
笑顔でうっちゃんが話しかける。
長谷川さんも「猪狩ちゃんとそのお友達ありがとう♪」と伝える。
「じゃあ、リョウ。休憩行って!」
急に大きな声で休憩を告げられる。
「桜井センパイ、休憩……なんですか?」
「そうだけど」
猪狩さんは友達2人の顔を見る。
友達のひとりが「これから私たち、委員会だから。また後でね!」と告げ、
2人はその場を立ち去っていった。
「なんだ。猪狩ちゃんも一人?せっかくなら桜井くんと一緒に屋台でも行ってきなよ」
長谷川さんが不敵な笑み浮かべている。
俺は猪狩さんを見る。
猪狩さんは「いいんですか?」と俺の方を見ながらいう。
想定外だが、特に問題はないので「うん」と答える。
猪狩さんは少し顔を赤らめながら嬉しそうにしている。
とりあえず、2人で屋台に行くことにした。
「センパイは何食べます?」
猪狩さんは少し距離をとりながら隣を歩く。
「定番の…やきそば?」
「いいですね。3組がやきそばだったと思うので行きましょう!」
こちらを向きながら話しているので、前から来ている人に気付いていない。
俺は咄嗟に猪狩さんを自分の方に引き寄せる。
「っ!!」
少し驚かせてしまったようだ。
「すみません…前から人が来ていたから。無理に引っ張ってごめん」
「い、い、、、いえ。わ、私が前を見ていなかったのが悪いので。こちらこそすみません!」
「じゃあ、やきそば。行こうか」
そのあと猪狩さんはあまり話さないまま、屋台の場所まで歩いた。
「すみません。やきそば2つ」
屋台に着き、やきそばを購入。
近くのテーブルが空いたのでそこで食べることにした。
お腹が空いていたので、すごく美味しく感じた。
猪狩さんは、先程から俯いている。
「ごめん。さっき引っ張ったときどこか怪我した?」
「え。いえ!ご、ごめんなさい。黙っちゃって…」
猪狩さんは少し呼吸を整えてから俺を見た。
「センパイ。今日の後夜祭って誰かと参加したりしますか?」
「誰か?うっちゃんといようかなって思ってたけど」
「じゃあ、あの、途中でいいので少しお時間もらえたり…しますか?」
「今じゃなくて?」
「はい…今は、ちょっと」
「そっか、まあ。見かけたら声かけてくれればいいよ」
猪狩さんの顔がパッと明るくなる。
「ありがとうございます!やきそば、美味しいですね」
やきそばを食べ終え、猪狩さんの教室のクレープに案内された。
せっかくなので!と猪狩さんがクレープを作ってくれた。
バナナチョコクレープ。確かに美味しい。
「どうですか?」
「美味しい。いいデザートの紹介ありがとう」
「はい!」
猪狩さんは嬉しそうに笑ってくれた。
食べ終わったので、猪狩さんにお礼を伝えた。
「今日は発表……頑張りましょうね!センパイ」
「そうだね。頑張ろうね。じゃあ、また発表で」
猪狩さんの教室を後にし、うっちゃんと合流した。
部活の発表前に楽器の確認を行う。俺とうっちゃんはチューバを担当している。
「そろそろ本番か。緊張するなぁ、リョウ!」
「大会よりは緊張しない」
「可愛くないやつ」
「吹奏楽部みなさん、そろそろ移動お願いしまーす」
「「はあーい」」
体育館を仕切っている3年生達から声がかかる。
大会より緊張しない、とは言ったものの吹奏楽はみんなの力で作る音楽だ。
俺の失敗でみんなの努力を無駄にはできない。それは、大会じゃなくても一緒だ。
この数十分間、俺達の音楽に耳を傾けてくれる人たちに少しでもいい時間を
過ごしてもらえるように精一杯、心を込めて演奏する。
わざわざ時間をとって聞きに来てくれている人もいるはずだ。
俺は気持ちを込めて演奏を始めた。
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