同級生のお兄ちゃん

若草なぎ

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桜井リョウスケの場合

side :桜井リョウスケ 期末テスト①

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文化祭から何日か経った。

あの日から勝手に柏木さんを避けている。

なんとなく猪狩さんに申し訳ないという気持ちと猪狩さんの言っていた言葉が気になってしまっている。

『センパイは柏木先輩とお付き合いされてるんですか?』

『じゃあ、柏木先輩が一方的に好意を持ってるって事ですか?』

勘違いだとは思うが気にしてしまう。

情けない。

柏木さんから直接言われた訳でもないのに…

「はぁ…」と机に突っ伏しながら深いため息をつく。

「休み時間だからって寝過ぎじゃねぇの?」

顔を上げるとうっちゃんがいた。

「期末テスト来週からだぞ?今日は何処かで勉強会でもするか?」

「いや、いい」

うっちゃんは呆れた顔をして自分の席に戻って行った。

あれからずっとモヤモヤしている。

あんなに人を泣かせてしまって………俺はどうすれば正解だったんだろう。

次の授業の用意をしようと鞄に手を伸ばす。

ビニール袋の感触。

柏木さんと約束していたCDだ。

本当は文化祭の日に渡すつもりだった。

まだ渡せずに鞄の中にしまったままになっている。

チャイムが鳴る。

慌てて教科書とノートを取り出した。

世界史の授業が始まった。

テスト範囲を考えながら聞いているものの集中できない。

本当に情けないな。

豆腐メンタル過ぎる。

チラリと斜め前を見る。

窓側の席列前から2番目の席に彼女は座っている。

真剣に授業を受けている。

何日もまともに話していないな……

なんと女々しい。

こんなんじゃ駄目だ。

とりあえず、テスト勉強に集中しよう。

このままじゃ受験に向けた準備なんてできないだろ。

リフレッシュするためにも今日は図書館に行って勉強でもしよう。

まずは世界史の授業に集中だな。

黒板を見るとまだノートに書けていなかった内容が消されてしまった。

やべっ………あとでうっちゃんに見せてもらおう。


全ての授業が終わり、うっちゃんに話かけた。

うっちゃんは親から連絡があったらしく、今日はすぐ帰らなければいけないらしい。

ごめん、とポーズをとり、うっちゃんは帰っていった。

仕方なく、一人で図書館に向かうことにした。

本当ならば学校の図書室がいいのだが、テスト期間は混み合っているので

大きな図書館へ向かった。
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