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絵画のような人魚ー56ー
しおりを挟む何かの音に気付いて、僕は暗闇の中から瞼を開けて光を求めた。それでも目の前に映る光景は暗く、何かの音だけが耳の奥に聴こえていた。
頭はぼんやりとしていたし、ここがどこで何をしていたのかわからない。
でも、誰かの部屋に居ることだけは理解した。何故なら、見慣れない部屋だったから。さらに自分が裸でベッドに寝ていること。それは僕に驚きと戸惑いを滲ませた。少しずつ頭が冷静になっていく。僕は一人の女性と遅くまで飲んでいたんだ。確か、僕の歓迎会だったよな。
それからどうした!?お酒の量は多かったと思う。それに僕はずいぶんと酔っていた。だから酔いが覚めないままに、女性のマンションへと向かった。
走馬灯のように浮かぶ映像。僕はだんだんと焦りの色を溢れ出した。
この音……この音はシャワーの流れる音だ。誰かが朝早くからシャワーを浴びている。もちろん誰がシャワーを浴びているのかわかった。それでもどこかで違っていてくれと心の中で願うのだった。
シャワーの音が止まり、彼女が浴び終わった。僕は微動だりもせずに動けなかった。視線は浴室の方を見て、彼女がお風呂場から出て来るのを待っていた。喉の奥で唾液を飲んだ音が鳴った瞬間、目の前に彼女が現れた。
バスタオル一枚を身体に纏って、西條三葉が立ち止まって、僕のことを見つめた。この状況に、僕は開いた口が閉まらない。僕と彼女は一夜を共にしてしまったのだ!!
「……起きたのね」と彼女が澄んだ声で話しかけて来た。
「なんて顔してるの?」
白い肌から滴る雫が、スルリと滑り落ちてフローリングを濡らした。えくぼの似合う笑顔に、僕は一瞬だけ心を奪われたような気がした。
「……三葉さん。おれ……」
スローモーションのように彼女は近付くと、ベッドへ腰を下ろして僕のそばに寄り添った。
「そんな顔しないで、四季くんが考えてるような事はなかったわよ」と彼女は言ってから、悪戯っぽい表情で笑った。
「三葉さん、おれ……まったく覚えてなくて」
「四季くん、ずいぶんお酒を飲んだから途中で寝ちゃったのよ」
「寝てしまった!?」
「うん。でも正確に言うと途中まではいったけどね。心配しないで、最後まではしてないから」
彼女の言葉に無言になったしまう。そんな僕を見て、三葉さんが僕の上にまたがって身体を寄せた。急に心臓の音が速くなる。バスタオル一枚だけを羽織った彼女と裸のままの僕……
「それとも最後までしたかった?」
僕は上半身を起こして、彼女の顔を見つめた。すると彼女がそっと唇を重ねてきた。突然のキスに、僕は驚いて顔を逸らした!!
「ふふ、可愛い」
三葉さんは微笑んでから、僕の鼻先を指先で触った。驚きと彼女の笑顔に、僕の心は魅了されていた。すると彼女は笑ってから、自然な仕草でバスタオルを外した。彼女の乳房に胸の鼓動が激しくなる。次の瞬間、彼女は唇を重ねてキスをした。甘いカシスの匂いが仄かに残っている。頭の中が真っ白になっては本能が呼び覚まされて、僕もキスに応じて激しく唇を求めた。
止まらないキスに、火照った感情に火がつく。激しいキスはやがて舌を絡ませて、彼女の吐息と溶け込むように激しいキスを続けた。呼吸が荒くなり、唇が離れた時、僕たちは見つめ合っていた。
「今は私だけを見て……」
理性が吹っ飛んだ!!終わりのない欲望なのか、それともこうなる事を望んでいたのか、僕はもう一度唇を求めて舌を絡ませた。甘い香りが漂う中、彼女が下半身へ手を滑らせる。勃起してペニスに手のひらが触れると、僕は彼女への気持ちが加速した。
「三葉さん……」
彼女の形良い乳房を触り、綺麗な乳首を吸い付いては愛撫する。そんな時、二人の動きを止めるように携帯電話が鳴り出した!!ベッドの下で、僕の抜け殻みたいなジーパンのポケットから携帯電話が鳴り響く。
「……出たら?」と三葉さんが言う。
彼女に言われるまま、僕は腕を伸ばして携帯電話を掴んだ。そして息を整えてから電話へと出るのだった。
つづく……
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