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絵画のような人魚ー71ー
しおりを挟むアトリエに着いた頃、辺りは夕方の気配を忍ばせた空が遠くに見えていた。
窓からカーテン越しの照明が光として確認出来た。彼女がすでに来ているみたいだ。時刻は四時ピッタリ。これなら何も疑われないだろう。
ドアの前で深呼吸をして平常心を保とうと落ち着かせる。ほんの数分前、一人の女性と寝ていたなんて自分の行動に罪悪感が降り積もる。
そしてこうも考える。このアトリエは一番目の部屋で三葉さんのマンションは二番目。こんな風に心の中で振り分けているかもしれない。誰が聞いても最低な男だろう。でも、今の僕はそんなレールの上を走っていた。
ドアを開けると、五日ぶりの彼女がそこに居た。黒目がちな瞳と笑った顔。僕は自然と抱きしめていた。色彩は無限で決して同じ色合いはないのだろうか。抱きしめて彼女の温もり、匂いに全てに想いを彼女へ染み込ませた。
僕の中で彼女は特別な存在。心の色がそんな風に感じていた。
宅配ピザを注文してくれていた彼女。アトリエでマルガリータを食べながら話しをした。ほとんど彼女が話していた。これと言って普段と変わらない。僕たちの会話は弾んでいた。
「四季に聞きたいことがあったんだけど、聞いても良い?」
「なに?もしかして課題の絵についてかな……」あれから一度も絵を描いていなかったからだ。
「ううん。課題の事じゃないけど、来週の木曜日にやる課題の事」
「来週の木曜日?なんかあったけ?」
「緑郎くんから聞いたんだけど、四季たちヌードデッサンの授業に出るんでしょう」
みゆきに言われて、僕は完全に忘れていた事を思い出した。そう言えば、連休明けにヌードデッサンの授業を参加するんだった。
「何でヌードデッサンなんかに参加するのよ?」とみゆきが少し棘のある言い方で聞いてきた。
「興味本位と言うか、芸術だよ。パッション、パッションを求めてね」
「なんか白々しい。それに四季の顔、いやらしくなってる」みゆきは目を細くしながら言う。
「ちょっと見たい気持ちもあるけど」
「やっぱり!!男の人ってわかんないよ。ヌードデッサンは立派な芸術だけど、四季みたいに女性の裸が見たいから参加するの?」
「なんかその言い方って、おれが裸見たさで参加するみたいじゃないか」
「違うの!!」とみゆきは頬っぺたを膨らませて僕の膝の上に乗ってきた。
ドスン!!!!
「そんなに裸が見たいの?私じゃ物足りない?」
「だったらみゆきがヌードモデルになってくれる?そしたら満足するよ」
「いーや!!絵になんかして描いて欲しくない。私の裸なら四季の心に描いて。四季だけの私を……」とみゆきは甘えた声で言って、僕の肩に手を回すと唇を近づけた。自然な流れになんだろう。僕と彼女は唇を重ねるとお互いを求めた。
この日、僕は二人の女性とセックスをしていた。
同時刻、四季とみゆきがセックスをしていた頃、三葉が一人、マンションの窓から空を眺めていた。
そして一言呟いた……
「四季、あなたは私だけの物、私だけの物なの」
こうして長い連休が終わり、新たな一日が始まろうとしていた。
つづく……
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