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オークションの街ガラン Ⅳ
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オークション会場へとやってきた。
会場にはすでに人がごった返していて、中に入るまでにかなり時間を要した。
番号札に記載された席を見つけどっこらせと腰掛ける。
指定されたのは最上段の席だった。
オークション会場は劇場のようだった。
ピザの切れ端のような構造で、先端にステージがあり、そこから階段状に席が展開している。
着席してから数分して、会場の照明が暗くなった。
オークションのスタートである。
〇
「次の商品はこちら!
陶芸家トウゴロウ氏の茶器三点です!
世間ではあまり知られていない陶芸家ですが、その確かな腕前とほかにない独特な表情をしている彼の茶器はコレクターの間で徐々に価値が高まってきています。
刻印、鑑定書付きの正真正銘の本物です。
それでは100万イェンからスタートしましょう!」
「110万」
「120万だ!」
「200」
「330万!」
えー、オークションの盛り上がりに反比例してどんどん居心地が悪くなっていく俺。
あの小さな茶器にそんな大金つぎ込んでどうするんだ?
どんどん値段が跳ね上がっていく様を見ながら俺は思う。
ガランの街のオークションを舐めていた。
事前予約が必要な大きなオークションならいざ知らず、今日のような通常オークションでもこのレベルだったとは。
会場を飛び交う落札額のコールは俺からしたら耳を疑う金額ばかりだ。
2億イェンもの大金を所持している俺だが、10万イェンの買い物ですら躊躇してしまう男である。
俺は根っからの庶民なのだ。
倹約家というほどではないが、とりわけ必要がないものであれば滅多に買うことはない。
それがこのオークションではなんだ?
よくわからない掛け軸に2000万、木彫りの置物に2400万、派手過ぎるネックレスに4000万……
いくら芸術的価値や希少価値があるといっても、さすがに高すぎるんじゃなかろうか?
ここにいる人たちは金銭感覚バグっているんじゃないのだろうか?
どうしてそんな大金ポンポン出せるんだと思い周囲を見回してみると、案の定いかにも金持ちといった感じの商人や貴族ばかりだ。
誰しもが高価そうなスーツや煌びやかなドレスを身にまとっていて、冒険者の恰好なんてしているのは俺たち三名だけである。
場違いもいいところだ。
あー、なんとも居心地が悪い。
二人はどうかなと思いちらりと目を向けると、ドラファルさんが手を上げた。
「6000万」
俺は唖然としてしまう。
まったく正気の沙汰じゃない。
てか、そんなに金持ってたのドラファルさん。
確かにドラファルさんは千年近く生きる伝説の人だけど、今は一応ウチの社員だ。
社員の一人がそんな大金をポンっと出してたら、上司の俺はちょっとびっくりしてしまう。
まさか全財産つぎ込んでいるわけじゃないよね?
そういえばウチの商会の給料ってどうなっているんだっけ?
ざっくりとした指示だけ出してあとは数字に強い経理のナターシャさんに任せっぱなしだ。
トップだった俺がまったく把握してないのはいささか問題がある気がするが、なんせありがたいことに次から次へと仕事が舞い込んできてたからなあ。
今度ちょっと確認してみようかなと思う俺であった。
〇
オークションは続く。
トウゴロウ氏の茶器とやらを手に入れたのはドラファルさんだった。
落札金額は最終的に7800万イェン。
ドラファルさんの6000万の提示のあとに一人だけ食らいついていた人がいたが、7800万でギブアップしたようだ。
「ふぉっふぉっふぉ。
まさかこの程度の金額で落札できるとは。
本日はライバルが少なくてよかったですわい」
ほくほく顔のドラファルさん。
7800万がこの程度って。
ますます懐事情が気になるが、一応上司である俺がそこのところ聞くのは気が引けるしなあ。
ちなみにエマさんもとある魔物の羽を落札した。
なんでも魔法の触媒になる珍しい魔物の羽らしい。
落札額は3100万イェンだった。
金額はドラファルさんの半分以下だし、なにより用途が明確だから一瞬そういうもんかと思ってしまった。
いやいや3100万イェンだぞ。
普通に大金である。
いかんいかん、会場の雰囲気に流されて俺も金銭感覚がバグってきているな。
こんなところ早く出ねばと思うが、ちょうど次が最後の商品である。
せっかくだし最後まで見ていくかと思い、俺はちょっとだけ居住まいを正した。
「さて、いよいよ本日のオークション最後の商品です。
ラストを飾るのはこちらの妖精です!
片羽がもがれており、華麗に飛び回る姿は見れませんが妖精は妖精!
魔物に襲われたのか傷だらけで醜い姿をしておりますが妖精は妖精!
剝製にして飾るもよし、解剖して魔法の触媒に変えてしまうのもよしです!
それでは1000万イェンから始めましょう!
オークションスタートです!」
会場にはすでに人がごった返していて、中に入るまでにかなり時間を要した。
番号札に記載された席を見つけどっこらせと腰掛ける。
指定されたのは最上段の席だった。
オークション会場は劇場のようだった。
ピザの切れ端のような構造で、先端にステージがあり、そこから階段状に席が展開している。
着席してから数分して、会場の照明が暗くなった。
オークションのスタートである。
〇
「次の商品はこちら!
陶芸家トウゴロウ氏の茶器三点です!
世間ではあまり知られていない陶芸家ですが、その確かな腕前とほかにない独特な表情をしている彼の茶器はコレクターの間で徐々に価値が高まってきています。
刻印、鑑定書付きの正真正銘の本物です。
それでは100万イェンからスタートしましょう!」
「110万」
「120万だ!」
「200」
「330万!」
えー、オークションの盛り上がりに反比例してどんどん居心地が悪くなっていく俺。
あの小さな茶器にそんな大金つぎ込んでどうするんだ?
どんどん値段が跳ね上がっていく様を見ながら俺は思う。
ガランの街のオークションを舐めていた。
事前予約が必要な大きなオークションならいざ知らず、今日のような通常オークションでもこのレベルだったとは。
会場を飛び交う落札額のコールは俺からしたら耳を疑う金額ばかりだ。
2億イェンもの大金を所持している俺だが、10万イェンの買い物ですら躊躇してしまう男である。
俺は根っからの庶民なのだ。
倹約家というほどではないが、とりわけ必要がないものであれば滅多に買うことはない。
それがこのオークションではなんだ?
よくわからない掛け軸に2000万、木彫りの置物に2400万、派手過ぎるネックレスに4000万……
いくら芸術的価値や希少価値があるといっても、さすがに高すぎるんじゃなかろうか?
ここにいる人たちは金銭感覚バグっているんじゃないのだろうか?
どうしてそんな大金ポンポン出せるんだと思い周囲を見回してみると、案の定いかにも金持ちといった感じの商人や貴族ばかりだ。
誰しもが高価そうなスーツや煌びやかなドレスを身にまとっていて、冒険者の恰好なんてしているのは俺たち三名だけである。
場違いもいいところだ。
あー、なんとも居心地が悪い。
二人はどうかなと思いちらりと目を向けると、ドラファルさんが手を上げた。
「6000万」
俺は唖然としてしまう。
まったく正気の沙汰じゃない。
てか、そんなに金持ってたのドラファルさん。
確かにドラファルさんは千年近く生きる伝説の人だけど、今は一応ウチの社員だ。
社員の一人がそんな大金をポンっと出してたら、上司の俺はちょっとびっくりしてしまう。
まさか全財産つぎ込んでいるわけじゃないよね?
そういえばウチの商会の給料ってどうなっているんだっけ?
ざっくりとした指示だけ出してあとは数字に強い経理のナターシャさんに任せっぱなしだ。
トップだった俺がまったく把握してないのはいささか問題がある気がするが、なんせありがたいことに次から次へと仕事が舞い込んできてたからなあ。
今度ちょっと確認してみようかなと思う俺であった。
〇
オークションは続く。
トウゴロウ氏の茶器とやらを手に入れたのはドラファルさんだった。
落札金額は最終的に7800万イェン。
ドラファルさんの6000万の提示のあとに一人だけ食らいついていた人がいたが、7800万でギブアップしたようだ。
「ふぉっふぉっふぉ。
まさかこの程度の金額で落札できるとは。
本日はライバルが少なくてよかったですわい」
ほくほく顔のドラファルさん。
7800万がこの程度って。
ますます懐事情が気になるが、一応上司である俺がそこのところ聞くのは気が引けるしなあ。
ちなみにエマさんもとある魔物の羽を落札した。
なんでも魔法の触媒になる珍しい魔物の羽らしい。
落札額は3100万イェンだった。
金額はドラファルさんの半分以下だし、なにより用途が明確だから一瞬そういうもんかと思ってしまった。
いやいや3100万イェンだぞ。
普通に大金である。
いかんいかん、会場の雰囲気に流されて俺も金銭感覚がバグってきているな。
こんなところ早く出ねばと思うが、ちょうど次が最後の商品である。
せっかくだし最後まで見ていくかと思い、俺はちょっとだけ居住まいを正した。
「さて、いよいよ本日のオークション最後の商品です。
ラストを飾るのはこちらの妖精です!
片羽がもがれており、華麗に飛び回る姿は見れませんが妖精は妖精!
魔物に襲われたのか傷だらけで醜い姿をしておりますが妖精は妖精!
剝製にして飾るもよし、解剖して魔法の触媒に変えてしまうのもよしです!
それでは1000万イェンから始めましょう!
オークションスタートです!」
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