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オークションの街ガラン Ⅷ
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ファラの入社も決まったことだし、とりあえず今の見た目をどうにかしないとな。
簡単な食事を終えた後、ファラの治療に当たる。
といっても回復のポーションをぶっかけるだけなのだが。
この世界はポーションという万能治療薬があるから医者要らずだし、回復に時間がかからなくていい。
三柱の一体である蒼鯨さんからの頂き物である最高級ポーションをかけると、ファラの傷はみるみると癒えていった。
痛々しい傷だらけの身体がすべすべの肌に元通りである。
さすがは妖精といったところか、傷の癒えた美しい身体は艶やか且つ神秘的な雰囲気を漂わせる。
身体の欠損すら再生させるこれ以上ない最上位のポーションを使ったが、どういうことかファラの羽は依然欠けたままだ。
ファラ曰く、妖精の羽は神からの贈り物であるから一度失ってしまったら二度と元に戻らないらしい。
どうにかして治してやりたいが、神の使途である妖精のファラの言うことだ。
おそらく治す手立てはないのだろう。
この世界には神という存在が偶像でも神話の中でもなく明確に存在する。
神は信じるものではなく、確実に存在しているのだ。
三柱は神によって生み出された存在であるし、高位の神官には神託を授けていたりする。
俺はまだ神の言葉を授かったことはないが、もし対話ができるのであればどうして俺がこの世界で生きることになったのか聞いてみたいものだ。
元の世界に戻りたいという気持ちはとうに失せてしまっているので、ちょっとした知的好奇心によるものに過ぎないけど。
治療が終わったので次は風呂だな。
妖精とはいえ一応女の子であるのでエマさん、ターニャ、ティーナの女性陣に任せることにする。
入浴を終えたファラはますます神秘性が増していた。
身の丈ほどもある絹のような長く白い髪、鮮やかな青色と金色のオッドアイ、エルフのような長い耳。
こうして見ると翠狼の森にいた妖精とはかなり見た目に違いがあるな。
俺は翠狼の森の妖精しか見たことがないが、仮にあの地にいた妖精が一般的な姿であれば、ファラはだいぶ異端である。
そのあたりがファラのいう忌み子というものに繋がっているのかもしれない。
ターニャに任せていた仕立て屋の方もすぐに動いてくれたらしく、突然の注文にも関わらずファラの洋服は既に用意されていた。
黒のワンピースに袖を通したファラは表情に出してこそいないがどことなく嬉しそうである。
テーブルの上でくるりと回ったり、ぴょんと跳ねてみたりしている。
表情から察するにどうやら着心地は問題なさそうだ。
「よし。
ファラの身支度も整ったことだし、これからのことについて考えるとしよう。
俺としてはガラン支店でターニャとティーナのお手伝いをしてもらえればいいかと思っているが……ファラはどうしたい?」
「ファラ、コウタロウと一緒ならどこでもいい。
コウタロウについていく」
おっと、そうきたか。
こいつはまた予想外。
俺はすっかりターニャとティーナに任せるつもりでいたのだ。
女の子同士であるし、ろくでもない奴らがファラの妖精という希少性に目を付けたとしても二人なら問題なく撃退できると考えていたからだ。
魔法の実験体であったターニャとティーナは様々な非人道的な改造を施されており、幸か不幸か人より遥かに優れた能力を持つ。
ターニャは筋力、ティーナは魔力をブーストされていて、戦闘経験こそ少ないものの実力はゴールドランクの冒険者並みだ。
悪党風情じゃ、あの大男みたいにDDTの餌食になって終わりだろう。
デンジャラス・ドライバー・オブ・ターニャ。
可愛らしい見た目のターニャからは想像もつかないえげつない必殺技だ。
これからも増えていくであろう犠牲者に南無である。
「ふふふ。
すっかりなつかれてしまっているようですね。
いいのではないですか?
一緒に旅をするのも」
「ふぉっふぉっふぉ。
エマ殿と共に旅路を彩る美しい花が二輪。
いいではないですか」
「えー。
ファラちゃんここに残ってくれないの?」
「ターニャ、わがまま言わないの。
ファラちゃんの意思なんだから」
「まあ、ファラが望むならそれでも構わないけどさ。
それでいいのか?」
「うん。
ファラ、一緒に行く」
「わかった、じゃあ一緒に行こう。
あっ、旅といえばそうだ……
俺、無一文になっちゃったんだけどどうしようか?
さすがに続けられないよな?」
俺がそうたずねると、一瞬場が沈黙した。
四人とも揃いも揃ってきょとんとした顔になると、まったく同じように首を傾げる。
「……え?」
「は?」
「はい?」
「はて?」
ん?
俺はなにかおかしなことを言ったかな?
簡単な食事を終えた後、ファラの治療に当たる。
といっても回復のポーションをぶっかけるだけなのだが。
この世界はポーションという万能治療薬があるから医者要らずだし、回復に時間がかからなくていい。
三柱の一体である蒼鯨さんからの頂き物である最高級ポーションをかけると、ファラの傷はみるみると癒えていった。
痛々しい傷だらけの身体がすべすべの肌に元通りである。
さすがは妖精といったところか、傷の癒えた美しい身体は艶やか且つ神秘的な雰囲気を漂わせる。
身体の欠損すら再生させるこれ以上ない最上位のポーションを使ったが、どういうことかファラの羽は依然欠けたままだ。
ファラ曰く、妖精の羽は神からの贈り物であるから一度失ってしまったら二度と元に戻らないらしい。
どうにかして治してやりたいが、神の使途である妖精のファラの言うことだ。
おそらく治す手立てはないのだろう。
この世界には神という存在が偶像でも神話の中でもなく明確に存在する。
神は信じるものではなく、確実に存在しているのだ。
三柱は神によって生み出された存在であるし、高位の神官には神託を授けていたりする。
俺はまだ神の言葉を授かったことはないが、もし対話ができるのであればどうして俺がこの世界で生きることになったのか聞いてみたいものだ。
元の世界に戻りたいという気持ちはとうに失せてしまっているので、ちょっとした知的好奇心によるものに過ぎないけど。
治療が終わったので次は風呂だな。
妖精とはいえ一応女の子であるのでエマさん、ターニャ、ティーナの女性陣に任せることにする。
入浴を終えたファラはますます神秘性が増していた。
身の丈ほどもある絹のような長く白い髪、鮮やかな青色と金色のオッドアイ、エルフのような長い耳。
こうして見ると翠狼の森にいた妖精とはかなり見た目に違いがあるな。
俺は翠狼の森の妖精しか見たことがないが、仮にあの地にいた妖精が一般的な姿であれば、ファラはだいぶ異端である。
そのあたりがファラのいう忌み子というものに繋がっているのかもしれない。
ターニャに任せていた仕立て屋の方もすぐに動いてくれたらしく、突然の注文にも関わらずファラの洋服は既に用意されていた。
黒のワンピースに袖を通したファラは表情に出してこそいないがどことなく嬉しそうである。
テーブルの上でくるりと回ったり、ぴょんと跳ねてみたりしている。
表情から察するにどうやら着心地は問題なさそうだ。
「よし。
ファラの身支度も整ったことだし、これからのことについて考えるとしよう。
俺としてはガラン支店でターニャとティーナのお手伝いをしてもらえればいいかと思っているが……ファラはどうしたい?」
「ファラ、コウタロウと一緒ならどこでもいい。
コウタロウについていく」
おっと、そうきたか。
こいつはまた予想外。
俺はすっかりターニャとティーナに任せるつもりでいたのだ。
女の子同士であるし、ろくでもない奴らがファラの妖精という希少性に目を付けたとしても二人なら問題なく撃退できると考えていたからだ。
魔法の実験体であったターニャとティーナは様々な非人道的な改造を施されており、幸か不幸か人より遥かに優れた能力を持つ。
ターニャは筋力、ティーナは魔力をブーストされていて、戦闘経験こそ少ないものの実力はゴールドランクの冒険者並みだ。
悪党風情じゃ、あの大男みたいにDDTの餌食になって終わりだろう。
デンジャラス・ドライバー・オブ・ターニャ。
可愛らしい見た目のターニャからは想像もつかないえげつない必殺技だ。
これからも増えていくであろう犠牲者に南無である。
「ふふふ。
すっかりなつかれてしまっているようですね。
いいのではないですか?
一緒に旅をするのも」
「ふぉっふぉっふぉ。
エマ殿と共に旅路を彩る美しい花が二輪。
いいではないですか」
「えー。
ファラちゃんここに残ってくれないの?」
「ターニャ、わがまま言わないの。
ファラちゃんの意思なんだから」
「まあ、ファラが望むならそれでも構わないけどさ。
それでいいのか?」
「うん。
ファラ、一緒に行く」
「わかった、じゃあ一緒に行こう。
あっ、旅といえばそうだ……
俺、無一文になっちゃったんだけどどうしようか?
さすがに続けられないよな?」
俺がそうたずねると、一瞬場が沈黙した。
四人とも揃いも揃ってきょとんとした顔になると、まったく同じように首を傾げる。
「……え?」
「は?」
「はい?」
「はて?」
ん?
俺はなにかおかしなことを言ったかな?
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