34 / 45
海辺の街イプスール Ⅷ
しおりを挟む
食事を終えた俺たちはコテージへと戻った。
気を失ったままのアンスリアさんはひとまずソファーに寝かしておく。
腹も膨れたところで次は風呂だ。
エマさんとミレーヌの女性陣はアンスリアさんが目覚めてから入るとのことだったので、俺とドラファルさんが一番風呂を失礼することにする。
全身をしっかり洗い、お湯に身体をじっくり沈めて温める。
冷たいシャワーを浴びて、タオルで身体の水気をある程度拭ったらいよいよサウナだ。
サウナでたっぷり汗を流し毛穴を開いたら、水風呂で一気に引き締める。
吐く息が冷たくなるまで水風呂に浸かり、その次は待ちに待った外気浴だ。
テラスのリクライニングチェアにどかっと腰を下ろし、目を閉じて爽やかな夜風を浴びていると瞼の裏に宇宙が見えてくる。
嗚呼、なんという多幸感……
いつまでもこの時間が続いて欲しいと願うが、そう長くは続かない。
瞼の裏の宇宙が徐々に縮小し現実を感じ始めたら、再度サウナへと向かう。
この流れを三回繰り返す。
サウナは最初は二分、次に四分、最後に八分だ。
これが俺のルーティーン。
これが俺のサウナスタイルなのである。
サウナをしっかり堪能した俺は最後にシャワーを浴びて風呂から出た。
ドラファルさんはすでに上がっていた。
なんでも先に出てバーテンの準備をしてくれているらしい。
俺にそんな配慮しなくてもいいのにと思うが、執事としての矜持らしくどうしても譲れないことらしい。
尽くしてくれるのはありがたいけど、やっぱり少し寂しい感じもある。
バスローブに着替えてリビングに向かうと、バーテンの恰好に着替えたドラファルさんがバーカウンターの向こうで待ち構えていた。
ジントニックをお願いし、リビングを見回す。
アンスリアさんも目覚めたようで、三人とも二階でお風呂の準備をしているらしい。
是非、親睦を深めてほしい。
ジントニックを受け取り、風呂場とは反対側にあるもう一つのテラスの椅子に腰掛ける。
酒をちびちび飲みながら、目を閉じて夜風に耳を澄ます。
しばらくすると遠くからミレーヌの「サイコー!」という声が聞こえてきた。
そうとも。
〇
艶めかしい風呂上がりの女性陣がリビングへとやってきた。
控えめに言って色気ムンムンである。
乾ききっていない濡髪がキラキラして美しい。
わざとやってるのかたまたまなのか真偽は定かではないが、三人ともいつずり落ちてもおかしくないほどバスローブを着崩している。
エマさんはいまにも乳房がこぼれ落ちそうだし、ミレーヌもそれに劣るがたまげたプロポーションだ。
アンスリアさんは少々小ぶりな果実に見えるが、これはたぶん比べる相手が悪すぎるな。
現世であれば間違いなく巨乳の部類だろう。
薄々思ってたことだが、この世界の女性はどうしてこうも巨乳率が高いのだろうか?
エマさんレベルは滅多にいないとしても、素晴らしいものをお持ちの方が多いんだよなあ。
その癖、この世界の服はなにかと露出度が高いものだから俺としては目のやり場に困ってしまう。
ビキニアーマーの冒険者女性なんてちょこちょこ街で見かけるし。
全体的に羞恥心が低いのだろうか。
この世界にもだいぶ馴染んできてはいるが、そのあたりはまだなかなか慣れることができない俺である。
〇
リビングのソファーで雑談しながらのんびりくつろぐ俺たち。
エマさんとミレーヌはお酒が入ったせいかほんのり顔が赤い。
アンスリアさんはあまりお酒が進んでいないようだ。
どうやら緊張しているらしい。
無理もないか。
一国の王ですら気を遣う最強の魔女と伝説の男が手の届く距離にいるのだ。
むしろ初対面にも関わらず高校時代の同級生かの如く会話を弾ませるミレーヌがおかしい。
これぞギャルパワー。
一気に距離を詰めてくる。
それなのに全然嫌な感じがしないのはさすがはギャルといったところか。
「そういえばミレーヌは何用で領地から出てたんだ?
イプスールへ帰っている途中なんだろ?」
ファラの神秘的な長い白髪に櫛を入れてあげながら俺は訊ねる。
「あー、ちょっと問題があってね。
実家のパパにおねだりしに帰ってたんだ」
「どんな問題なんだ?」
「ぶっちゃけ金の問題。
ウチの旦那が推し進める研究が資金難なんだよねー」
「へえ。
どんな研究なんだ?」
「なんかスライムがどうこう言ってたけどあたしにはなんのこっちゃだね。
パパも渋い顔してたし、あんまり助けてもらえそうにないなあ。
まったく可愛い娘の頼みだってのにさ」
「シマダ商会に借りればいいじゃないか。
イプスールにもあるだろ?」
「貴族が一商会から借りるわけにはいかないじゃん?
成果が出るかもわからない研究なんだし」
「まあ、そうか。
ウチもボランティアじゃないしな。
でも、そんな金欠状態でローデンブルク家は大丈夫なのか?」
「あんまり大丈夫とは言えないなー。
元々金のない貧乏貴族だしね。
色々切り詰めてなんとかやってるって感じ。
でもさ、旦那のあの真剣な目を見てるとやっぱり応援してあげたくなっちゃうんだよね」
「ははは。
ちゃんといい奥さんしてるじゃないか」
「まあね」
にひひと笑うミレーヌ。
それにしてもスライムか。
この世界にきた当初はフィクション通りの万能生物だと思っていたが、全然そんなことない害獣だったんだよな。
果たしてミレーヌの旦那はどんな研究をしているのやら。
内容次第では協力してやらんこともないけど。
気を失ったままのアンスリアさんはひとまずソファーに寝かしておく。
腹も膨れたところで次は風呂だ。
エマさんとミレーヌの女性陣はアンスリアさんが目覚めてから入るとのことだったので、俺とドラファルさんが一番風呂を失礼することにする。
全身をしっかり洗い、お湯に身体をじっくり沈めて温める。
冷たいシャワーを浴びて、タオルで身体の水気をある程度拭ったらいよいよサウナだ。
サウナでたっぷり汗を流し毛穴を開いたら、水風呂で一気に引き締める。
吐く息が冷たくなるまで水風呂に浸かり、その次は待ちに待った外気浴だ。
テラスのリクライニングチェアにどかっと腰を下ろし、目を閉じて爽やかな夜風を浴びていると瞼の裏に宇宙が見えてくる。
嗚呼、なんという多幸感……
いつまでもこの時間が続いて欲しいと願うが、そう長くは続かない。
瞼の裏の宇宙が徐々に縮小し現実を感じ始めたら、再度サウナへと向かう。
この流れを三回繰り返す。
サウナは最初は二分、次に四分、最後に八分だ。
これが俺のルーティーン。
これが俺のサウナスタイルなのである。
サウナをしっかり堪能した俺は最後にシャワーを浴びて風呂から出た。
ドラファルさんはすでに上がっていた。
なんでも先に出てバーテンの準備をしてくれているらしい。
俺にそんな配慮しなくてもいいのにと思うが、執事としての矜持らしくどうしても譲れないことらしい。
尽くしてくれるのはありがたいけど、やっぱり少し寂しい感じもある。
バスローブに着替えてリビングに向かうと、バーテンの恰好に着替えたドラファルさんがバーカウンターの向こうで待ち構えていた。
ジントニックをお願いし、リビングを見回す。
アンスリアさんも目覚めたようで、三人とも二階でお風呂の準備をしているらしい。
是非、親睦を深めてほしい。
ジントニックを受け取り、風呂場とは反対側にあるもう一つのテラスの椅子に腰掛ける。
酒をちびちび飲みながら、目を閉じて夜風に耳を澄ます。
しばらくすると遠くからミレーヌの「サイコー!」という声が聞こえてきた。
そうとも。
〇
艶めかしい風呂上がりの女性陣がリビングへとやってきた。
控えめに言って色気ムンムンである。
乾ききっていない濡髪がキラキラして美しい。
わざとやってるのかたまたまなのか真偽は定かではないが、三人ともいつずり落ちてもおかしくないほどバスローブを着崩している。
エマさんはいまにも乳房がこぼれ落ちそうだし、ミレーヌもそれに劣るがたまげたプロポーションだ。
アンスリアさんは少々小ぶりな果実に見えるが、これはたぶん比べる相手が悪すぎるな。
現世であれば間違いなく巨乳の部類だろう。
薄々思ってたことだが、この世界の女性はどうしてこうも巨乳率が高いのだろうか?
エマさんレベルは滅多にいないとしても、素晴らしいものをお持ちの方が多いんだよなあ。
その癖、この世界の服はなにかと露出度が高いものだから俺としては目のやり場に困ってしまう。
ビキニアーマーの冒険者女性なんてちょこちょこ街で見かけるし。
全体的に羞恥心が低いのだろうか。
この世界にもだいぶ馴染んできてはいるが、そのあたりはまだなかなか慣れることができない俺である。
〇
リビングのソファーで雑談しながらのんびりくつろぐ俺たち。
エマさんとミレーヌはお酒が入ったせいかほんのり顔が赤い。
アンスリアさんはあまりお酒が進んでいないようだ。
どうやら緊張しているらしい。
無理もないか。
一国の王ですら気を遣う最強の魔女と伝説の男が手の届く距離にいるのだ。
むしろ初対面にも関わらず高校時代の同級生かの如く会話を弾ませるミレーヌがおかしい。
これぞギャルパワー。
一気に距離を詰めてくる。
それなのに全然嫌な感じがしないのはさすがはギャルといったところか。
「そういえばミレーヌは何用で領地から出てたんだ?
イプスールへ帰っている途中なんだろ?」
ファラの神秘的な長い白髪に櫛を入れてあげながら俺は訊ねる。
「あー、ちょっと問題があってね。
実家のパパにおねだりしに帰ってたんだ」
「どんな問題なんだ?」
「ぶっちゃけ金の問題。
ウチの旦那が推し進める研究が資金難なんだよねー」
「へえ。
どんな研究なんだ?」
「なんかスライムがどうこう言ってたけどあたしにはなんのこっちゃだね。
パパも渋い顔してたし、あんまり助けてもらえそうにないなあ。
まったく可愛い娘の頼みだってのにさ」
「シマダ商会に借りればいいじゃないか。
イプスールにもあるだろ?」
「貴族が一商会から借りるわけにはいかないじゃん?
成果が出るかもわからない研究なんだし」
「まあ、そうか。
ウチもボランティアじゃないしな。
でも、そんな金欠状態でローデンブルク家は大丈夫なのか?」
「あんまり大丈夫とは言えないなー。
元々金のない貧乏貴族だしね。
色々切り詰めてなんとかやってるって感じ。
でもさ、旦那のあの真剣な目を見てるとやっぱり応援してあげたくなっちゃうんだよね」
「ははは。
ちゃんといい奥さんしてるじゃないか」
「まあね」
にひひと笑うミレーヌ。
それにしてもスライムか。
この世界にきた当初はフィクション通りの万能生物だと思っていたが、全然そんなことない害獣だったんだよな。
果たしてミレーヌの旦那はどんな研究をしているのやら。
内容次第では協力してやらんこともないけど。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
100
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる