精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第2章

日本第一支部 8

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「いやー惜しかったね……実に良い作戦だったんだけど、後少し足りなかったみたいだ」



 エンリヒートが相手をしている男性が笑みを浮かべる。
 馬鹿にしている様子はなく、本心から言っているのか、両手を叩き、称賛の拍手をこちらに贈っている。

 ━━何故、決まらなかった。

 タイミングは完璧だった。
 なのにどうして詠まれた?
 絶望に沈む最中、エンリヒートの声が響く。



「主様! 動揺している暇は無いぞ! 次の、次の策を!」



 召喚士と精霊に追い詰められ、必死に日本刀で抑えるエンリヒート。
 だけど策は……。



『━━主様!』



 思考を巡らせていると、頭の中にアグニルの声が聞こえた。
 その声は動揺した声ではなく、ハッキリとした力強い声だった。



『少し……こいつらの連携が良すぎる気がします』

『連携が良すぎる?』



 確かに僕も思う、でもそれが経験の差だと思っていた━━カノンの声を聞くまでは。



『おそらく……私と一緒で声を発せずに、離れた位置から会話をする事ができる精霊がいるのだと思います』

『ああ、私もそう思うぜ、主様が矢を放つ前、私の相手をしているこの男、ずっと主様を見ていたからな』

『でも、誰がそんな事を』



 もしその言葉が正しいなら、誰がそんな事を?
 エンリヒートの相手をしている男性はライオンの精霊と契約してるから違う、それに奥に見える女性も人形使いだ、二体の精霊と契約してる可能性はある━━だけどたぶん違う。
 だとすれば。



『僕達が相手をしていない、シノさん達が相手をしている二人の中に、カノンに似た精霊がいるのか?』

『おそらく……それか、全く別な者か。どちらにしても、そいつを倒さないと劣勢は続きます』



 人形達だけでも厄介なのに……そんな面倒な奴がいるのか。
 シノさん達の姿も音も、炎の柱が邪魔で聞こえない、もしいるのなら、向こうは一人を相手にしている事になる━━シノさん達の実力なら時間がかかり過ぎている気もする。

 ━━とりあえず。



「カノンはエンリヒートの援護をして!」

「えっ、じゃあ主様は!?」

「僕はアグニルの所に向かう!」



 カノンは動揺した表情でこちらを見ているが、何か決心したのか、頷き、エンリヒートの側に向かって羊達で援護している。

 その隙に僕は急坂を登る。
 その途中、人形達が邪魔をしてくるが細い矢を放ち吹き飛ばす。
 人形達は後方へ飛んでいくが、すぐに体を起こし、再び僕に狙いを付けて走ってくる。

 かなり霊力を使ってきた、僕の霊力はまだ持つだろうか?
 だが具合は悪くならない、まだ大丈夫のようだ。



『アグニル! その人形の主の付近に他の精霊召喚士の姿は見えない!?』

『えっ! 特には見えませんが……それよりどうしてこっちに!?』
 


 アグニルは周りの人形を相手にしながら、顔は振り返らず、少し驚いた声を出す。
 その言葉に答えず、僕は走り続けた、人形達は無駄に多い、今も増え続けている、だけど今は無視だ━━今は、



「へえー、うちを狙いに来たってことか……いいよ、おいでよ」

「アグニル! 雑魚には構うな! 本体を狙え」

「は、はい!」

「……雑魚、だと? 私の人形を舐めるなよ!」



 丘の上で仁王立ちしている召喚士は、おそらく怒っている━━いや、激怒だな、あれは。
 まあ、雑魚ではないけど、そう言った方がいいと思った、なんとなく。

 金色に光る弓を構え、召喚士目掛けて矢を放つ、速度を意識、威力はそれなり。
 だが数を━━彼女を守る人形を倒れさせる程、多く連射する。



「甘いよ! そんな弱っちい矢なんてよ! 人形達、あの召喚士を狙え!」

 「主様の所には行かせない! 敵を貫け━━電撃槍《ライトニングスピアー》」



 僕の元に走ってくる人形達に、アグニルは雷というよりも大きく太い、雷を棒状の物体に纏った槍を人形達目掛けて放つ。
 触れた瞬間、バンっと破裂音を鳴らし、人形達の粘土状の体は爆発し、粉々になって地面に撒き散った。

 おかげで目の前に道ができた、召喚士までの道、後はこいつをやれば、僕は弓を構え、人形の主に狙いを定める━━だが、人形の主は笑う。



「惜しかったね……でも、終了だよ?」

「━━えっ?」



 突然、隣で燃え盛っていた炎の柱は消え、右側の視界が開かれる。



「……ごめん、如月君」



 動きを封じられているシノとシルフィーが目に入った。
 その後ろには大柄で無精髭を生やした男性と、小柄でおとなしめの女性がいる。
 柚葉や雫、それに小人達も無事のようだ━━一応。



「おせえよ、どんだけ待たせんだよ!」

「すまん、結構粘られてな。そっちは苦戦していたみたいだな?」

「はっ! うちらは苦戦してないから!」

「もう……皆さん、喧嘩は止めましょうよ━━それより」



 二人の元に、僕達の相手した者達も集まり、いつのまにか固まって話をしていた、そして、僕に目を向け。



「如月 柚木君……だね? ゆっくり話をしないか?」

「話を? それより彼女達を離してもらえないですか?」

「ああ、そうだね、はい、これでいいかい?」



 僕の言葉に、あっさり皆を離した。
 何が目的だ? 全然理解ができない、だけど、この状況は、



「……わかりました、ここで話をしますか?」

「いいや、あそこで話をしようか?」



 エンリヒートと戦っていた青年の召喚士は、ニコッと爽やかな笑みを見せ、丘の上の一軒家を指差す。
 あそこは……雫が言っていた場所、どうして彼らが?



「じゃあ、付いて来てくれるかな?」

「ええわかりました、みんな行こう」



 僕達は後を付いて行く、逃げる隙は━━無いな。
 青年男性は前を歩いているが、他の三人は左右、そして後ろに付き、ぴったりとマークされている。



『主様……どうしますか?』

『どうするって……とりあえず付いて行く』

『逃げるのは不可能だな……あいつら、ぴったりと柚葉ちゃんをマークしているぜ』



 柚葉を抑えれば逃げられない━━そういう事か、とにかく、逃げられないなら一緒に向かうしかない、元々の目的地であるこの家に。



「それじゃ、入ってくれ」



 綺麗で大きな家、そして、庭では犬が僕達の姿を見て吠えている、なんとも気の緩みそうな光景だ。
 僕達は中へと入って行く、扉の先には横幅の大きな階段、外で見たよりも中は広く、何処かのお屋敷の一部のような内装だ。



「あっ、いらっしゃーい」



 そして、急に間抜けな女性の声が聞こえた。



「ちょっと! 麻帆さん、もう少し緊張感持ってくださいよ、それにその格好で歩かないでくださいよ」

「えー、だって折角のお客様だよー、それにー」



 階段を上がった所にいる大人の雰囲気がだだもれの女性。
 ピンクのドレスを着こなし、華やかな茶色の巻き髪、そして、胸元はガバッと開き、見えてはいけない所まで見えそうだ。

 それに、今なんて言った?



「もしかして……あなたが、柊 麻帆さんですか?」

「ふっふっふっー、あなたが会いたがっていた柊麻帆ちゃんですよー」
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