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第2章
日本第一支部 9
しおりを挟む「えーっと、あの」
いったい何から聞けばいいんだ?
目の前には少しエッチな女性、その女性を、さっきまで戦っていた四人が止めている。
他の皆もその様子をぽかんとして見ている。
なんだこれ……そう言葉に出したかったが、とりあえず、
「柊……麻帆さん、でいいんですもんね?」
「だからー、そう言ってるじゃない。さあさあ、早く中に入って!」
手招きする麻帆、その表情は飼い主を待っていた犬のような、そんな愛しさを感じさせる。
それに、年齢は二十後半……だと思うんだけど、声色、反応━━どれを見ても幼い印象を与える。
そして、僕達は広い部屋へと案内される。
朱色のコの字のソファー、何台も置かれたパソコン、誰かわからない似顔絵の額縁。
どれを見ても金持ちの家にある物達。
僕達はソファーに腰掛けると、硝子の長テーブルを挟んだソファーに座る麻帆が話を始める。
「まずは……手荒な歓迎ですまなかったね。柚木君」
「いえ、敵対する人達じゃなくて良かったです」
まだ何も言ってないが、おそらく━━敵対はしていないだろう。
何故僕達に攻撃を仕掛けたのかはわからないが。
そんな中、少し威嚇的に言葉をはっしたのはカノンだった。
「どうして主様を狙ったんですか? もしかしたら傷をおっていたかもしれないんですよ!?」
「……どうして主様を、か。自分の心配じゃなくて主人の心配なんて━━柚木君の事が好きなんだね、カノンちゃんは」
「━━っ! 話をごまかさないでください!」
麻帆は母親のような眼差しを向け、高々と笑っている。
そんな麻帆の言葉を聞いて顔を赤らめ、さらに激昂するカノン。
僕だけじゃなくてカノンの名前も知っているのか、どこでそんな情報を仕入れたのか、ニュースでは流れていなかったはずだけど。
そして、麻帆は隣に座る四人に声をかける。
「説明する前に……ねえ、四人は戦ってみてどうだった? じゃあ、しまっちから」
「どうだったって……」
麻帆の視線は、シノ達と戦っていた男性(しまっち)に向けられる。
男性は少し唸りながら、
「風の二人は良かったと思いますが……他はちょっと」
「━━みさみさは?」
「えっ……私ですか? そうですね、二人以外が戦わないと早い段階でわかったので━━正直楽でしたね」
大人しめの女性(みさみさ)ははっきりと答えた。
見かけによらずはっきりと言う事は言うんだな。
それに、麻帆は皆の事をあだ名で呼んでいるのか、しまっちはどんな名前かわからないけど、みさみさは、おそらくみさという名前なのだろう。
「でもお前ら時間かかってたじゃねえか、志磨《しま》も心咲《みさき》も、結構苦戦してたんじゃねえのか?」
みさき……か、それにしまっちはしまか。
色々と外れてしまった。
エンリヒートと戦っていた男性が笑いながら問い掛けてる、それを志磨と心咲は睨み、
「仕方ないだろ……麻帆さんの命令なんだから」
「そうそう、私がもう少し様子を見て! って言った」
「なんだ……そういう事ですか」
様子を見てって言った? どうやって伝えたんだ?
もしかしたら、戦闘中に危惧していたカノンに似た精霊というのは━━
憶測が巡る中、話は進んでいく。
「っで、ファイヤーライオンはどうだった?」
「━━っ!」
その言葉を聞いて、青年は顔を赤くしながら悶絶している。
ファイヤーライオン、まあ、精霊はそんな感じだけど━━絶対に名前の方が短いよね。
なんだか可哀想という感情と、笑いの感情が同時に込み上げてくる。
ファイヤーライオンはわざとらしい咳払いをして、
「僕は繁信《しげのぶ》ですから、恥ずかしいのでそう呼んでください━━っで、彼らはかなり強いですね、個々の力は僕らよりも上ですし、作戦も良かったです。それに連携も……たぶん、麻帆さんに似た精霊術を使ってたと思います、通信機器は付けていませんでしたから」
ファイヤーライオン改め、繁信は僕らを見ながら答える。
これは……褒められている?
個々の力、は三人の力の事だと思うけど、作戦と連携を褒められたのは嬉しい。
麻帆は何度も頷き、
「うんうん、っで、パペットマスターは?」
「…………」
麻帆の不意の攻撃に、攻撃を受けた者はピクリと揺れ、返事をしない。
ただ、これには三人も我慢できず吹き出してしまった。
その三人はもちろん、アグニルとエンリヒート、それにカノンだ。
僕はなんとか堪えたが、三人は声に出しながら笑っている。
それを見て、パペットマスターと呼ばれていた女性は、
「おいっ! お前ら何笑ってんだよ!」
「だって、だってパペットマスターって、まんまじゃんか」
「ほらー、良かったね! うけてるよ!」
パペットマスターは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしながらテーブルを何度も叩いている。
エンリヒートの反応に、真っ赤にした彼女の肩を叩き、麻帆も嬉しそうにしている。
「はあ、私の名前は芽衣だ! パペットマスターって呼ぶな!」
「まあまあ芽衣ちゃん、少し場を和ませようとしただけなんだからそんな怒らないで、それで? どうだったの?」
「……はあ、それは良かったと思いますよ? 何度か危ないところがありましたから」
「何度かって……結構あっただろ?」
「うるせっ、あんたが一体に的を絞ってるから他の奴等がうちに来たんだぞ!? わかってんのか!?」
完全に僕らを無視して話をしている。
確かに、彼等のような実力者から受ける評価は気になる。
だけど、今気になるのは別の事だ━━それは、
「すいません、取り込み中かと思うんですけど、僕達を狙った理由はなんですか?」
「あー、ごめんね、それは皆の実力を知りたかったのよ!」
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