精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第2章

新しい精霊

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 禁忌……そんなのがあるのか。
 僕は初めて聞いた、そもそも、そんな事は考えられるものなのか?
 まあ、天才と凡人の僕の頭の作り方は違うか。

 話を聞いていたアグニルは、少し難しそうな表情をしながら、



「禁忌……ですか。そもそも私が精霊召喚を考えた時にはなかった術ですね」

「私が考えた? んっ? 何の事?」



 アグニルの言葉に、麻帆はもちろんの事、他の四人も疑問しか浮かんでいないようだ。
 首をかしげながら僕を見てくる。

 彼女達には何も伝えていないし、その事については知らないようだ。

 ━━僕はアグニルが初代精霊召喚士だという事を説明した。

 彼女達は終始驚いていたが、全てを察してくれたみたいで、何度か唸った後、麻帆が代表して口を開いた。



「……えーっと、じゃあこのアグちゃんは初代精霊召喚士で、アグちゃんが契約していた精霊のおかげで精霊になって……。んーごめん、やっぱり理解に苦しむよ」



 最近はすぐに理解してくれる人が多かった、それに自分自身の周りにも色々と意味不明の事が起こりすぎていて、アグニルの正体が普通に感じていた……。
 だけど、普通なら彼女のように理解するのに時間がかかる、それが当たり前なのだが。
 僕の感覚もいつの間にかおかしくなっていたのだろう。



「……ですよね。僕も最初聞いた時はそんな感じでした」

「うん……。でも、愛情を司る精霊にはそういった霊力術があるっていうのは聞いた事あるね━━まあ、その霊力術を使えても、使おうって思う精霊はいないけどね」

「そうなんですか?」

「ええ、だって自分自身が姿を消しちゃうのよ? それこそ、理想郷に還る事もできなくなって無になるんだから……本当に主を好きじゃないとそんな事はしないよ?」



 麻帆の言葉を聞いて、確かにと思った。
 理想郷、というのがどんなとこなのかはわからない。
 だけど言い方は悪いが、理想郷に還ればまた新たな召喚士と契約する事ができる、なにも消える必要はない。

 少しの沈黙の後、黙っていたシノが手を叩き、



「とにかく、これからの事を決めませんか? もしかしたら今日、遅くても明日には反日本政府が攻めてくるんですよね?」

「まあそうですね。麻帆さん、僕達に手伝える事はありますか?」

「あるあるある、いーっぱいあるよ!」



 待ってました! 
 と、言わんばかりに目を輝かせる麻帆。
 彼女は大きなテーブルに地図を開くと、全員がその周りに座る。



「まず、さっきも言ったと思うけど、反日本政府は必ずこの旧函館地点に向かってくる、だからここに戦力を集中させたいのよね」

「はい、じゃあ僕達はここで迎え撃てば良いと?」

「ううん、ここにはシノちゃんとシルフィーちゃんで、柚木君と精霊ちゃん達はこっち」



 麻帆はそう言い、すーっと指をずらして旧札幌地点の場所を指差す。
 なんで旧札幌地点? アグニルに関しては遠距離が得意だけど、エンリヒートは僕が見る限りでは近距離の霊力術しか見た事がない。
 それにカノンは僕の援護だし。



「えっと……その理由を聞いてもいいですか?」

「ええ、柚木君達は囮なのよ!」



 堂々と言ったぞ、この女《ひと》は。
 まあ、理由はわからなくもないが、もう少し優しい言い方があるような━━

 そして、その言葉を聞いて麻帆の仲間達が麻帆の頭を叩く。



「麻帆……少しは言い方を考えなさいよ」

「……わかったわよ! いいから四人は早く向かってちょうだい」

「はいはい、わかったよ」



 少しふてくされたような表情で、麻帆は四人に指示を出した。
 四人は言葉を聞き、少し不満げにしながらも部屋を後にする。
 この人達はどういう関係なんだろうか……まあ、その事は聞いてないが、とりあえずは今はいいや、うん。

 そして、四人が出てから、



「それじゃあ話を続けるけど、あいつらは柚木君を狙ってるのは確定事項、だから私的には旧函館地点と旧札幌地点に、向こうの戦力を分断したいのよね」

「なるほど……じゃあ僕達は遠距離と近距離、どちらもやればいいんですね?」

「ええ、それでお願い。後は……今現在、戦える戦力は柚木君とシノちゃん……だけでいいのよね?」

「えっ、まあ、それで大丈夫です」



 麻帆は探り探り聞いてきた。
 まあ無理もないが、ここには僕とシノの他に、柚葉、それに雫と小人達がいるが━━戦力と数えていいのか、それは不明だ。

 そして、僕の言葉を聞いて麻帆は頷き、



「じゃあ、シノちゃんとシルフィーちゃんはここ旧函館地点にいてもらっていい?」

「はい、大丈夫ですよ」

「それで柚木君には、今から旧札幌地点に向かってほしいの」

「わかりました、他の皆はどうしますか?」



 麻帆は小人を抱えている柚葉を見て、



「柚葉ちゃんは、まだ精霊と契約してないんだもんね?」

「えっはい、まだ一六歳なので……まだ学校が契約させてくれなかったんですよ」

「あー、そういえばあの学校には、そういう規則があったわね。じゃあ今から精霊と契約する?」

「えっ、ここに精霊石あるんですか!?」

「あるあるー、ここは私の科学研究所みたいなもんだからね! どう、契約してく?」



 少しお茶していく?
 それくらい軽い感じで言った麻帆だが、これには驚かされた。
 本来、精霊と契約する時には、最初に契約した時に見たあの精霊石が必要だ。

 僕達も、柚葉と小人達を契約させようと思ったが、もし両者が頷いていた場合、その精霊石を探すとこから始まっていた。
 精霊石は博物館や学校等、警備のいる施設にしかない、だから見つけるにはかなりの時間がかかると思っていた。

 が、目の前で満面の笑みをする麻帆。



「えっ……。柚葉はどうする?」

「えっ、私は……小人達《コビーズ》がいいかな」



 柚葉は小人達を強く握りしめる。
 握りしめられた小人達は、「グヘッ」と鈍い声を出す、だが満更でもないような、そんな表情をしている気がする。



「小人達は以前の召喚士に契約解除されて……まだ傷が癒えてないんですよ」

「……そうなんだね。まあそういえのは第三者がああだこうだ言うのも……ねっ。とりあえず時間はまだあるから、ゆっくり決めてよ」

「はい、ありがとうございます」



 柚葉は軽くお辞儀をするが、小人達は無表情で無言だ。
 今何を思っているのか……無表情の小人達の心は読めない。

 そして、僕はじっとしている雫に目を向け。



「雫は……本当にこれでいいの?」

「自分ですか、まあええ、自分は残りの七日間、皆さんのお手伝いをしたいと思ってます。あの人を……元のあの人に戻す為に」

「雫君……一応、柚木君と契約する事は可能だけど、契約してみない?」



 えっ、契約できるんですか!?
 そう思ったが、僕以外誰一人として驚いていなかったので、僕も知っていた感じで話を遮る事はしなかった。
 そんな中、雫は顔を横に振り、



「いえ、自分はあの人を止めたら、理想郷《シャングリラ》に戻ります、一度リラックスしたいので」

「リラックスかあ━━じゃあリラックスならあのミカンガ温泉をお勧めするぜ? あそこは風呂上がりに無料でお酒が飲めるからな」

「ああ、あそこかエンリヒートは好きだもんね……。でもあそこのお酒、あまり美味しくないイメージがあるな」

「えっ、アグニルにお酒の味がわかるの!?」

「ちょっと……それはどういう意味かな? シルフィー。私はお酒が好きだから結構味にはうるさいのよ」



 なんだろう……理想郷トークに花が咲いてる。
 それにこの幼女の姿でお酒とか言われたら━━完全に犯罪の匂いしかしない。

 四人はきっと、僕達の事を忘れているのだろうな。
 そして麻帆は「あっ」と、何かを思い出したのか、僕を見て、



「じゃあ柚木君は他の精霊と契約しない?」



 他の精霊か……んー、どうした方が良いのだろう。
 皆を守る為なら戦力が必要だしな。



「いいんじゃねえか? 主様、だけど少女か幼女が増えるのは……あんまりあれだな」

「ええ、主様がまたハーレムの世界に近付いてしまう」

「まっ、誰が仲間になってもカノンが一番愛してますからね……ねっ、主様!」



 僕の足や腕に絡み付いてくる彼女達。
 どうして女性、それも少女だったり幼女だったり限定なのか。
 まあ、三人も良さそうな雰囲気? だし。



「もう一人を扱える自信はないですけど」

『……ポンコツ主』

「━━はい!?」

「えっ……どうしたの?」



 確かに、暗い女性の声で「ポンコツ」と言われた気がする。
 だけど、誰に言われた?
 そして、もう一度声が聞こえた。



『……私がいるんだから、勝手に他の精霊と契約したら駄目だから━━わかった? ポンコツ主』

『えーっと、もしかして、僕の頭の中で喋ってる? カノンじゃないよね?』

『……ヘッポコ主、声を聞けばわかるじゃない』

『ポンコツとかヘッポコって……えっと何でかな?』

『……言葉通りの意味よ、ヘタレ主』
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