11 / 62
第11話「やはりこいつは下衆野郎」
しおりを挟むお尻の筋をなぞりながら、苦しそうに息を吸ったり吐いたりを繰り返しているレイを見ながら、俺がここの部屋で目覚めて自分がレイに何をしてしまったのか振り返ってみる。
……ハア、ありえねぇ。
抵抗しないレイに甘んじて調子に乗りすぎた。
暴走していたとはいえさすがにやりすぎた。
「……悪い、もう終わるから」
レイの服を元の形に正していると「触るな」と拒絶された。レイが怒るのも無理はない。誰の目からしたって度がいきすぎていると思う。
俺は嫌われてしまっただろうか。
「レイ、俺はレイが好きだ。だから嫌わないでほしい」
今の俺ができることはレイに愛を伝えること。そしてレイの敵ではないと証明することだ。けれど、
「貴様の言っていることを信じられるわけないだろ。けれど、貴様は随分人が変わったようだな。日頃から悪さをしているが故、脳みそが壊れたということは理解してやる」
当然だがレイには伝わっていない。
「それに、好きだのなんだのの感情が理解できないな」
「……レイは人を好きになったことがないのか? 親に対する感情も愛情だろ」
「親だと? 言っている意味が分からない。もういい、私のことを知ろうとするな。気味が悪い」
レイの顔色はあきらかに青ざめていた。
ーー触れてはいけない話題だっただろうか。俺はレイのことを何もしらない。レイも俺には何も知られたくないようで、俺を突っぱねた。
……くそ、どうすればいい。
頭を凝らしていると、タイミングを見計らったようにレイの部屋が静かに音を立てずに開いた。姿を見せたのはミケだった。ミケは下半身を丸出しにしている俺とレイを見て顔をしかめ、俺達の方に近寄ろうとした。
だが、何かを思い出したように我に返った顔をし、ドアの入り口から近寄ってこようとはしなかった。
レイはミケが入ってきたことに気づいていない。
俺からすると何かを企んでいるようにも思える。近寄ってこないミケに「出ていけ」と合図を送ると渋々といった表情でまた部屋のドアを静かに開け、出ていき静かに閉めた。
アイツが何を企んでいるのか真実を確かめたい。離れようとするとレイから腕を掴まれた。
「どこへ行く。貴様、能力使えないのだろう。私の部屋から出ると殺されるぞ」
「なんだよ、庇ってくれるのか?」
「安心しろよ、逃げたりしないから」と言うと、どことなく安心したような表情を浮かべていた。
「少しでも変なことを考えてみろ。見つけ次第、貴様は私が殺す」
今まで俺に興味すら抱いていなかっただろうレイが、今は俺に「逃げるな」と言っている。例えそれが性的欲求のためだとしても、理由はなんでもいい。そう思ってくれることが嬉しい。
◆
部屋を出てミケを探す。
長い廊下をひたすら先へと進んでいると「それ以上進まないでください」聞き覚えがある声が聞こえた。俺の前に姿を現したのはミケだった。
「あなたに三メートル以上近づくと僕は一瞬にして殺されるでしょう?」
やっぱり。レイがあんなことになっていたのに、コイツは自分の死を恐れて俺に近づかなかった。最低な野郎だ。
「おまえ、レイに仕えてるんだよな。王様を守るのが使命じゃねぇのか?」
問いかけると、ミケは答えにくそうに口を開いた。
「……私の本来の使命は子をつくることです。なので、レイ様のお側で仕えているのです」
「レイと子を作るためか?」
「…………いいえ」
……やっぱりな、と思った。
王様の近くで仕えているふりをし、隙あらば王を殺す。もしくは殺すように仕向けさせる。やっぱりコイツが一番の悪党だ。
「悪いがレイは殺させねぇ。今はおまえ視点のストーリーじゃねぇし、なにより俺はレイが大事だからな」
「…………いったい何があったのです。以前までのあなたはレイ様を見ると目の色を変えて抹消しようと躯んでいたではありませんか。それがどうしたのです? レイ様が大事だと、本気で思っているのですか?」
「だからおまえは俺を使ってレイを殺してもらおうと思っていたのか。とんだ下衆野郎だな」
ストーリー内でレイが死んだ、と、悲劇のヒロインぶるコイツを知っていたから、尚更吐きそうになる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
218
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる