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第17話「三大欲求を取り戻したい」
「私はお前達が私を裏切るようなことはしないと思っている」
レイは一言そう呟くなり、ミケは背後から「食後の紅茶です」と、それぞれの前に紅茶を置いた。その紅茶も「飲むな」と下げる。
俺の態度が気に入らないマゼンダは舌打ちをしながら、
「……本当にソウルを許すおつもりで?」
レイに質問をする。まるで『これまでソウルにされたことを忘れたわけではないだろうな』という目をレイに向けている。レイはナプキンで口を拭き、「もちろん、許しはしない」と一言だけ返事をした。
ソウルになってしまった以上、ソウルの罪を一緒に背負う覚悟を決めたのは俺だ。今さらビビるな。誠心誠意謝り続けなきゃいけない。それが俺の罪だ。
一刻一刻と時間が過ぎる中、食事を終えた俺とレイは王室へと戻った。
また、この部屋にレイと二人きりになってしまった。
レイの部屋は俺が元いたシャドウ国の部屋とは違い色々な物が揃えられている。レイの部屋より奥の部屋は書庫になっているようで、難しそうな分厚い本が数えきれないほどずらりと本棚に敷き詰められていた。
マジマジと見つめる俺にレイは、「興味があるなら読んでみればいい」と、入ることを許可してくれた。
「レイ、読書好きなのか?」
「好きというわけでもないが、暇つぶしにはちょうどいい」
「そうか。俺も読んでみる。後でどの本が面白いか教えてくれ。それと、食事の材料なんだが、どこに売っているんだ?」
「凝った材料を使いたいならポルニア国より南にあるアクアニア国には評判がいいと言われている材料が揃っているから食事の材料などはそこで買うといい。馬車を操縦する御者にも伝えておく。行くなら私も一緒に行こう」
……一緒に。
「ふ、二人で?」
平常心を装いながら聞いてみると、レイは「ああ」と頷いた。
二人ってことはデートということだ。
やばい、デートだ。レイとデートができる。
「い、今から行こう!」
浮かれながら誘う。レイは俺を呆然を見つめていた。
「今から?」
「だってレイに味あるものを食わせたいし!」
「何を食っても同じだろう」と、あまり乗り気ではないレイは「アクアニア国に着くには半日かかる。私も色々と仕事が溜まっているし、今からは無理だ。一週間後にしよう」と、都合が良い日にちを俺に提案してきた。
「一週間後って……それまで何も食わねぇのはキツイ」
さすがに一週間も食わなかったらストレスでどうにかなりそうだ。けれど、レイには俺の意は伝わらずに「一週間くらい我慢して食え」と指摘をされた。レイが言った通り、俺は一週間、ミケの味なし食事で我慢をしたが、当然慣れることはなかった。
味なし食事で我慢をし、一週間、レイと一緒にポルニア城の中を見て回ったり、色々と知ることができた。だが、俺が廊下を歩くたびにすれ違う周囲の目にも慣れることはなく、怯えられつづけてしまった。
◆
一週間後、「待たせたな。アクアニア国へ行くとしよう」と、レイが俺に声を掛けてくれた。待ちに待った今日、この日をどれだけ待っていたことか。一週間、ポルニア国でレイと過ごしてみて、俺がレイを見る目も随分と変わった。ゲーム内ではにこにこ爽やか青年という感じで笑っているレイが当たり前のような感じだったけれど、今はツンデレ具合が強いレイが可愛くて仕方がない。
ツンデレが強すぎて時々ダークに見えてしまうけれど、そんなレイの方が共感持てる。
「レイ、大丈夫だ。値切って材料をふんだんに仕入れてきてやる」
はりきる俺にレイは「ハア」と息を吐いた。
「買いすぎて食材が腐ったらどうするんだ。けれど、買い物なんてもうずいぶんと行ってないな」
どことなく嬉しそうなレイに懲りずに質問を投げかける。
「そうなのか?」
「ああ。ここの食事は全てミケの能力で生み出してるからな。特別出かける必要もない」
……それは知らなかった。
と、同時に豪華な食事の割に味がない理由も理解できた。
「……そっか。何も知らないで味がねぇとか、不味いとか言って悪かった。俺、絶対美味いもん食わせて、レイの性欲を引き出すから」
そう言うとレイはまた呆れた顔をして俺から目を逸らした。
「……性欲取り戻したらミケの魅力にも気づくのかもな」
ボソッと聞こえないように呟いたつもりだったけれど、レイは「何を馬鹿なことを言っている。私はミケには興味ない。早く出かける準備をしろ。私はいつでも出れると言っているだろう」と、俺の頬をペチンと軽く叩いた。
『ミケには興味ない』なんて言われたら、頑張ったらいけるんじゃないかって期待してしまう。
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