28 / 62
第28話「秘密の場所」
しおりを挟む
「……っ、お、おい!! 貴様、いい加減にしろ! ここはどこだ!」
レイの声が足を止める。気がつくとひとけがない繁華街の外れまでレイを連れて来てしまっていた。
「わ、悪い。大丈夫か?」
息を切らしながら背後にいるレイの方へと振り返ると、レイは俺よりもっと息を切らしていた。レイが落ち着くまで背中を摩る。
「いったいなんなんだ……っ」
「ごめん。レイを連れ出さなきゃずっとあのままだと思って……」
「ふざけるな。そんなことあるわけないだろう。話せば分かってくれる」
「でも、誰がレイの命を狙ってるか分からないだろ。そんなことあるかもしれない。レイは危機感が足りねぇ!」
「なんだと!? 貴様、私を誰だと思ってる、ポルニア国の王だぞ」
負けじと言う俺にレイも負けじと言い返す。そんなやり取りが楽しくてついムキになって言い返すレイに対してフッと笑いを吐き出してしまった。
「ッ、ハハハハッ。やべぇ、ツボった」
お腹を抱えて大笑いをする俺にレイは顔を赤くして睨みるける。
「貴様、いったいなにがおかしいんだ。何故そんなに笑っている」
「……いや、レイと言い合えていることが面白くて。レイと出会った当初、俺、動くレイが新鮮で見たことない表情を見せてくれるレイが愛おしくて感動してさ。何も言えなかったから。一緒にいるようになってそんなに時間経ってないけど慣れってすげぇな」
「貴様はいちいち大袈裟だな。愛おしいだの好きだの、まったくもってその心情が理解できん。ほら、さっさと繁華街の方まで戻るぞ」
レイは俺を置いてどんどん先に進んで行ってしまう。レイを追いかけるように俺も後をつけた。街は賑わっており色々なお店が出ている。果物屋さん、野菜屋さん、米屋さん、パン屋さん、衣装屋さん、小物屋さん、本屋さんと、出ているお店も様々だ。
さっそく衣装屋さんに入り、レイを変装させるためにハットが着いている黒色の深い帽子を購入した。念のために黒いサングラスをレイに頂いたお金で購入し、その場で付けさせる。
「……私は何もいらんと言っただろう」
自分の為に買われたのがそんなに嫌だったのか、不満げな声を出すレイ。
「好きなもの買っていいって言っただろ。変装してない状態でウロつかれるとこっちが困るんだよ。いいから変装しとけ!」
帽子を深く被っているレイをいいことに、レイの頭を帽子の上からグリグリと撫でた。
「やめろ、痛いだろ。で、貴様は何を買うんだ」
「普通に飯の材料を買うだけだよ」
離れてしまわないようにレイの手に自分の手を絡める。すると、レイは「やめろ!」と俺の足を踏んだ。だが、そんなことでやっと繋げた手を離すわけがない。レイの手は白くてすべすべしていた。ただ手を繋いだだけなのに俺の手が先に火照っていくのが分かる。
真っ赤なりんごを一つ購入しその場で一口だけかじってみる。うん、美味しい。ちゃんと甘いし水気もあるし良いりんごだ。味覚があるか分からないレイにも「これ、食べてみろよ」と、りんごをかじらせる。シャリッという美味しそうな音を鳴らしながら口の中に頬張るレイ。
「……んぐ、水気があって、う、うまいな……」
味覚が無くなったわけではなく、王父がレイの大切な感情までも奪い去ってしまったんだなと、レイのリアクションから思い知らされる。
美味しそうにりんごを頬張るレイにもっと色々な物を食べさせてあげたくて、その後もパンやおにぎりを含め、目についた食べ物や飲み物を片っ端から購入した。
「う、美味いがもうお腹に入らんぞ……」
御者からもらった水晶のおかげで購入したものは全て水晶内に入れることができた。その間もレイは一切口出しをせず、ただただ俺が購入する姿を眺めているだけだった。
「よし、一通り買い終えた。後は……」
「お香か?」
「そ、そうだ……けど……レイは大丈夫か? 今から行くところは……その……」
「何が言いたい。さっさと行って帰るぞ。貴様、私のために料理をするんだろ?」
「う、うん。よし!!」
自分に気合を入れ御者に教えてもらった繁華街の一本の路地に出た。その奥に、草木で覆われている古びた古民家がある。
「な、なんだここは? 店ではなかろう?」
レイは外観の汚さに顔を歪める。
御者に言われた通り細かく戸を探すが見つからない。視覚だけではなく、戸がないかを触って確かめる。
すると、ずるりと建物の一部をずらすことができた。
「レイ、あった! 早く!!」
離れたそうにしているレイを自分の元へ引き寄せ、よっこいしょと扉となる部分を開ける。
レイの声が足を止める。気がつくとひとけがない繁華街の外れまでレイを連れて来てしまっていた。
「わ、悪い。大丈夫か?」
息を切らしながら背後にいるレイの方へと振り返ると、レイは俺よりもっと息を切らしていた。レイが落ち着くまで背中を摩る。
「いったいなんなんだ……っ」
「ごめん。レイを連れ出さなきゃずっとあのままだと思って……」
「ふざけるな。そんなことあるわけないだろう。話せば分かってくれる」
「でも、誰がレイの命を狙ってるか分からないだろ。そんなことあるかもしれない。レイは危機感が足りねぇ!」
「なんだと!? 貴様、私を誰だと思ってる、ポルニア国の王だぞ」
負けじと言う俺にレイも負けじと言い返す。そんなやり取りが楽しくてついムキになって言い返すレイに対してフッと笑いを吐き出してしまった。
「ッ、ハハハハッ。やべぇ、ツボった」
お腹を抱えて大笑いをする俺にレイは顔を赤くして睨みるける。
「貴様、いったいなにがおかしいんだ。何故そんなに笑っている」
「……いや、レイと言い合えていることが面白くて。レイと出会った当初、俺、動くレイが新鮮で見たことない表情を見せてくれるレイが愛おしくて感動してさ。何も言えなかったから。一緒にいるようになってそんなに時間経ってないけど慣れってすげぇな」
「貴様はいちいち大袈裟だな。愛おしいだの好きだの、まったくもってその心情が理解できん。ほら、さっさと繁華街の方まで戻るぞ」
レイは俺を置いてどんどん先に進んで行ってしまう。レイを追いかけるように俺も後をつけた。街は賑わっており色々なお店が出ている。果物屋さん、野菜屋さん、米屋さん、パン屋さん、衣装屋さん、小物屋さん、本屋さんと、出ているお店も様々だ。
さっそく衣装屋さんに入り、レイを変装させるためにハットが着いている黒色の深い帽子を購入した。念のために黒いサングラスをレイに頂いたお金で購入し、その場で付けさせる。
「……私は何もいらんと言っただろう」
自分の為に買われたのがそんなに嫌だったのか、不満げな声を出すレイ。
「好きなもの買っていいって言っただろ。変装してない状態でウロつかれるとこっちが困るんだよ。いいから変装しとけ!」
帽子を深く被っているレイをいいことに、レイの頭を帽子の上からグリグリと撫でた。
「やめろ、痛いだろ。で、貴様は何を買うんだ」
「普通に飯の材料を買うだけだよ」
離れてしまわないようにレイの手に自分の手を絡める。すると、レイは「やめろ!」と俺の足を踏んだ。だが、そんなことでやっと繋げた手を離すわけがない。レイの手は白くてすべすべしていた。ただ手を繋いだだけなのに俺の手が先に火照っていくのが分かる。
真っ赤なりんごを一つ購入しその場で一口だけかじってみる。うん、美味しい。ちゃんと甘いし水気もあるし良いりんごだ。味覚があるか分からないレイにも「これ、食べてみろよ」と、りんごをかじらせる。シャリッという美味しそうな音を鳴らしながら口の中に頬張るレイ。
「……んぐ、水気があって、う、うまいな……」
味覚が無くなったわけではなく、王父がレイの大切な感情までも奪い去ってしまったんだなと、レイのリアクションから思い知らされる。
美味しそうにりんごを頬張るレイにもっと色々な物を食べさせてあげたくて、その後もパンやおにぎりを含め、目についた食べ物や飲み物を片っ端から購入した。
「う、美味いがもうお腹に入らんぞ……」
御者からもらった水晶のおかげで購入したものは全て水晶内に入れることができた。その間もレイは一切口出しをせず、ただただ俺が購入する姿を眺めているだけだった。
「よし、一通り買い終えた。後は……」
「お香か?」
「そ、そうだ……けど……レイは大丈夫か? 今から行くところは……その……」
「何が言いたい。さっさと行って帰るぞ。貴様、私のために料理をするんだろ?」
「う、うん。よし!!」
自分に気合を入れ御者に教えてもらった繁華街の一本の路地に出た。その奥に、草木で覆われている古びた古民家がある。
「な、なんだここは? 店ではなかろう?」
レイは外観の汚さに顔を歪める。
御者に言われた通り細かく戸を探すが見つからない。視覚だけではなく、戸がないかを触って確かめる。
すると、ずるりと建物の一部をずらすことができた。
「レイ、あった! 早く!!」
離れたそうにしているレイを自分の元へ引き寄せ、よっこいしょと扉となる部分を開ける。
7
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる