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離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。②
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えええええー!? 確定事項にした!!
心の中では有給を取得するとか言っていたのに! 今も絶賛、どん引きするような心の声が聞こえてくる。その中にはちょいちょい気になるワードが出てきた。
「そ、早期解決であれば、離縁のほうが手っ取り早いのでは?」
「……先ほども言ったが、離縁は認めない。白い結婚を盾に離縁をするのなら、その条件をクリアできなくするまで」
「──っ、それは……」
つまり無理やり抱くということよね?
思わず身構えた瞬間。
【ああああああああああああああーーーーー。何言っているんだぁあああ。それじゃあ、離縁したくないから抱くみたいじゃないか! 抱きたいのはやまやまだし、なんなら初夜だってやり直したいいいいいい! いややり直そうにも、そもそも呪われているから無理なんだけれども!!】
呪い?
そういえばアレの発症って、さっきも言っていたような?
この世界において魔法や呪いは身近にある。そして割と簡単に呪われてしまったりする。気まぐれな魔女様は退屈凌ぎに、恋愛関係の呪いを無差別に振りまくとか。もしかしなくても、ドミニク様が?
でも魔女に呪いがかかっているなら普通は協力を仰ぐし、相談するような?
「ドミニク様。私に隠し事をしているようなら、今すぐに話してください。後妻様のことも」
【後妻なんていないのに……。俺は妻一筋……信じてもらえないのは……今までの行いのせいか……】
「何も話さないのなら、言い方を変えます。……繁華街に出入りしているのは、お気に入りの娼婦と会うためではないのですか?」
「!」
私の言葉にドミニク様はキッと眉を吊り上げて睨んできた。
威圧が半端ない。もし心の声が聞こえない状態だったら、身が竦んで目を合わせ続けるのは難しかったかもしれない。だって背景にズゴゴゴゴ! とかラスボスの放つようなオーラが出ているんだもの!
「あれは魔女を追っていたからだ」
「(やっぱり魔女!)……もしかして何か薬を探していたのですか? それとも魔女関係で困りごとが?」
「………………呪いを解除する方法を、探していた」
「まあ! 呪いに……。旦那様はどうして呪われてしまったのですか? 政敵からの攻撃ですか?」
魔女様を捜し回るなら、城下町よりも繫華街のほうが情報は回ってくる。ということは、旦那様に女の影はない?
ちょっとだけホッとしたような気持ちになったので、その程度で離縁を反故にはしないと姿勢を保つ。さあ、どんな言い訳が頭の中で繰り広げられているのかしら。
【い、言えない! 王太子の馬鹿に届いた手紙が私の机にあったので、不用心にも封筒に触れた──なんて!! 『もしかしたら妻かな?』なんてうっかり喜んでいた私の馬鹿!! 仕方ないじゃないか。決算繁忙期で忙しかった上に横領が次々に出てきて、それらの対応が重なって……三徹だったんだから……】
なっ……なによ、それ。
思ったよりも可愛い理由で呪われたの!? わ、私の手紙を浮かれていたなんて……。べ、別に嬉しくなんかないわ。今さらよ。……そう言えば二年前から財務で不祥事があったからと、王城に寝泊まりしていたわ。それに何度か夫に手紙を送っていた……。だから気が抜けて手紙に触れてしまった?
あの頃は忙しいドミニク様に寄り添おうと、流行の便箋など買っていたわ。呪いにかかる要因が私にも少なからずあった……。そういえばしばらくは手紙を控えてほしいと、ロータスが気まずそうに言っていたわね。
当時は煩わしいと思われて……凹んだわ。
本来なら些細なこと。でも私たちは会話を持つ機会を作っても、私が一方的に話すだけで、会話になってなかった。自分では歩み寄っていたとは思う。でもあの時から呪いを? そうだったとしても最初の一年はそこまで忙しくなかったわ。……あれ、でも確か視察の帰りに体調を崩して、領地で静養をしながら仕事をしていた……ような?
「呪いは……手違いで……受けてしまったのだ」
「もしかして……私が呪ったと疑ったのですか? だから距離を置いていた?」
「違う……」
「他に隠していることはありません? それとも呪いのことがあって、私と距離を置いたのですか?」
「それは……」
グッと下唇を噛みしめ、言葉を濁す。そのままじゃ口の端を切ってしまいそうな勢いだわ。んー、心の声は阿鼻叫喚の叫び声で要領を得ないし……。もはや心の声を聞いても推理小説並の洞察力と観察眼が必要になるなんて!
【アレがバレたら……妻に嫌われる。でもこのままじゃ本当に離縁されてしまう。そんなの嫌だ。でもアレを見て治癒士、修道女はみな悲鳴を上げて卒倒した。もし、……妻も同じように、蔑むような目で、怯えて、拒絶するようなら、隠したままのほうが! 離縁はしない。したら死ぬ自信がある。……だがそれを打ち明けなければ、魔女の呪いも解けない……。魔女の呪いを解くには妻の協力が必要不可欠。だが……あー、ううう】
アレとは?
それが一番の謎なのよね。呪いのことも黙っていたわけじゃなくて、話そうとは考えてくれていた。でも何らかの理由で私が嫌う可能性があったから、相談できなかった?
うーん。うん、私に探偵の真似事は無理!
「ドミニク様。何を隠しているのですか? あと十秒以内に言わなかったら、話し合いの見込みなしと思って退席しますからね」
「っ!?」
眼光が更に鋭くなったけれど、そんなの怖くないわ。心の中で叫んでいるのがダダ漏れですもの。それに一瞬だけ泣きそうな顔を……うっ、しょぼんとした顔がちょっと可愛いなんて……思ってないわ。三年間も黙っていたのですから! 私は激オコなのです!
「十、九、八……」
「あ──」
「七、六、ごー、よん、さん、にー」
「──っ、急に数えるのが早くなってないか!?」
「いち、ぜ──」
「私は──結婚当日に、神獣の竜の始祖返りしたんだ!」
「え」
ボフン、と唐突な破裂音と共に旦那様の容姿に変化が訪れた。捻じ曲がった白い二本の角、白い肌が更に白く、頬には銀の鱗があり、白目部分が黒く染まって、瞳はエメラルドグリーン、太ももほどの蜥蜴のような尻尾がうねる。
どう見ても竜人族の特徴を色濃く受け継いでいた。
「まあ」
「──っ」
旦那様の顔がサーっと青ざめた。どうやら本人の意思とは関係なく本来の姿に戻ったようだった。
【や、やってしまった……! あれだけ感情を凍らせて、動揺や感情が揺れ動かないように特訓をしたというのに、妻の前ではまるでダメだ……。それでも三年は隠し通してきたのに……】
あら。尻尾がへにゃりと垂れ下がっているわ。なんだか犬の尻尾みたいで可愛いかも。
神獣の血は隔世遺伝することがままあり、この国の半分以上は神獣の血が巡っているらしい。昨今は神獣の血が薄れたとかで覚醒することはほとんどない。何より白銀の神獣が始祖返りする者は稀で、体の一部が獣に酷似する、または一時的に獣になれるなどの権能はあるけれど、外見は人と変わらないのだとか。
【……ああ、もう離縁しかない……。この姿はさぞかし気持ち悪いだろう】
あ。そうか。
ドミニク様は幼い頃から始祖返りしていたわけでもなんでもない。三年前、初夜の日に突然覚醒した。見慣れない異形の姿に自分ですら受け入れるのに時間がかかったのだもの、私に話すかだって悩むわ。覚醒してから落ち着くまで、そして私への対処に悩んでいる間に呪われてしまって……言い出すキッカケがずっともてないまま、ここまで来てしまったのね。
思えば結婚式は表情が乏しかったし、口数は少なかったけれど優しかったのだ。それにオーケシュトレーム公爵家の使用人たちは、みないい人たちばかりだったわ。私たちは見事に空回りしていたのね。
「ドミニク様。その……頬に……触れてもいいですか?」
「この肌を醜いと思ってもしょうが──え、え!?」
「触れてもいいですか?」
ここぞとばかりの距離を詰めた。その勢いに負けて、ドミニク様は珍しくポカーンとしている。まだ情報処理が追いついてないのだわ。ここは畳み掛けるのが一番!
「ド・ミ・ニ・ク・様?」
「え、あ、うん? うんん??」
もう了承を得たということにして、ピタッと頬に触れた。少しひんやりするが感触は思ったよりも柔らかい。尻尾にもちょっと触れてみたら犬のように尻尾がブンブンと揺れて可愛い。そして尻尾も思ったよりも柔らかい。すでにドミニク様は顔を赤くして固まっている。
心の声は悲鳴しか聞こえないので、放置。
うん。手で触れてわかったことは、ビジュアルだけでも私のドストライクなのに、モチモチな感触が最高すぎる。今なら妻という肩書を全面に悪用──いや合法的にハグしてもいいのでは?
前世では非モテだったし、今世でも異性にギュッとされたことがなかったもの!
ドミニク様的には触れられて、嫌には──。
【つ、つ、つ、妻が、私に、この姿で触れ、触れている!? こ、怖がられていない??? え、は? 都合が良すぎる……! ああ、もうずっとこのまま触れていて欲しい】
うん、大丈夫そうだわ!
この時の私はドミニク様に拒絶されなかったのが嬉しくて、ついつい気が大きくなっていた。普段なら自分から抱きつくなんてしなかっただろう。
「えい」
「!?」
思いのほか勢いよく抱きついたため、ドミニク様を押し倒してしまった。文系とはいえ肩はがっしりしているし、騎士のように胸板も厚い。
ハグしたら思いのほかいい匂いがする。ミントのような清涼感のある香りだわ。
【*あ%なっ、&%@*€8%◆あ◇⌘⇒~~~!?】
うん、言語化すらしなくったわ。これで少しは表情が変わったかと思ったけれども、鉄面皮は健在! もはや仮面でも瞬間接着剤でくっ付けているかのようだわ。
あら、でも心臓の鼓動が速いわ。…………なんだか私もドキドキしてきた! えっとこの押し倒している状況もアレよね!? こんな姿を使用人の誰かに見られでもしたら──。
「お茶のお代わりを──おや」
「「!?」」
紅茶のおかわりを、と気を利かせたロータスが佇んでいた。私とドミニク様を交互に見て、テーブルにティーポットを置いたのち無言で去っていった。
いや小走りだった気がする。速っ!?
「──って、ロータス!」
「今夜はご馳走ですね! 心得ております!」
「ちがーう!」
手を伸ばして追いかけようとしたが、ドミニク様によって阻まれた。
心の中では有給を取得するとか言っていたのに! 今も絶賛、どん引きするような心の声が聞こえてくる。その中にはちょいちょい気になるワードが出てきた。
「そ、早期解決であれば、離縁のほうが手っ取り早いのでは?」
「……先ほども言ったが、離縁は認めない。白い結婚を盾に離縁をするのなら、その条件をクリアできなくするまで」
「──っ、それは……」
つまり無理やり抱くということよね?
思わず身構えた瞬間。
【ああああああああああああああーーーーー。何言っているんだぁあああ。それじゃあ、離縁したくないから抱くみたいじゃないか! 抱きたいのはやまやまだし、なんなら初夜だってやり直したいいいいいい! いややり直そうにも、そもそも呪われているから無理なんだけれども!!】
呪い?
そういえばアレの発症って、さっきも言っていたような?
この世界において魔法や呪いは身近にある。そして割と簡単に呪われてしまったりする。気まぐれな魔女様は退屈凌ぎに、恋愛関係の呪いを無差別に振りまくとか。もしかしなくても、ドミニク様が?
でも魔女に呪いがかかっているなら普通は協力を仰ぐし、相談するような?
「ドミニク様。私に隠し事をしているようなら、今すぐに話してください。後妻様のことも」
【後妻なんていないのに……。俺は妻一筋……信じてもらえないのは……今までの行いのせいか……】
「何も話さないのなら、言い方を変えます。……繁華街に出入りしているのは、お気に入りの娼婦と会うためではないのですか?」
「!」
私の言葉にドミニク様はキッと眉を吊り上げて睨んできた。
威圧が半端ない。もし心の声が聞こえない状態だったら、身が竦んで目を合わせ続けるのは難しかったかもしれない。だって背景にズゴゴゴゴ! とかラスボスの放つようなオーラが出ているんだもの!
「あれは魔女を追っていたからだ」
「(やっぱり魔女!)……もしかして何か薬を探していたのですか? それとも魔女関係で困りごとが?」
「………………呪いを解除する方法を、探していた」
「まあ! 呪いに……。旦那様はどうして呪われてしまったのですか? 政敵からの攻撃ですか?」
魔女様を捜し回るなら、城下町よりも繫華街のほうが情報は回ってくる。ということは、旦那様に女の影はない?
ちょっとだけホッとしたような気持ちになったので、その程度で離縁を反故にはしないと姿勢を保つ。さあ、どんな言い訳が頭の中で繰り広げられているのかしら。
【い、言えない! 王太子の馬鹿に届いた手紙が私の机にあったので、不用心にも封筒に触れた──なんて!! 『もしかしたら妻かな?』なんてうっかり喜んでいた私の馬鹿!! 仕方ないじゃないか。決算繁忙期で忙しかった上に横領が次々に出てきて、それらの対応が重なって……三徹だったんだから……】
なっ……なによ、それ。
思ったよりも可愛い理由で呪われたの!? わ、私の手紙を浮かれていたなんて……。べ、別に嬉しくなんかないわ。今さらよ。……そう言えば二年前から財務で不祥事があったからと、王城に寝泊まりしていたわ。それに何度か夫に手紙を送っていた……。だから気が抜けて手紙に触れてしまった?
あの頃は忙しいドミニク様に寄り添おうと、流行の便箋など買っていたわ。呪いにかかる要因が私にも少なからずあった……。そういえばしばらくは手紙を控えてほしいと、ロータスが気まずそうに言っていたわね。
当時は煩わしいと思われて……凹んだわ。
本来なら些細なこと。でも私たちは会話を持つ機会を作っても、私が一方的に話すだけで、会話になってなかった。自分では歩み寄っていたとは思う。でもあの時から呪いを? そうだったとしても最初の一年はそこまで忙しくなかったわ。……あれ、でも確か視察の帰りに体調を崩して、領地で静養をしながら仕事をしていた……ような?
「呪いは……手違いで……受けてしまったのだ」
「もしかして……私が呪ったと疑ったのですか? だから距離を置いていた?」
「違う……」
「他に隠していることはありません? それとも呪いのことがあって、私と距離を置いたのですか?」
「それは……」
グッと下唇を噛みしめ、言葉を濁す。そのままじゃ口の端を切ってしまいそうな勢いだわ。んー、心の声は阿鼻叫喚の叫び声で要領を得ないし……。もはや心の声を聞いても推理小説並の洞察力と観察眼が必要になるなんて!
【アレがバレたら……妻に嫌われる。でもこのままじゃ本当に離縁されてしまう。そんなの嫌だ。でもアレを見て治癒士、修道女はみな悲鳴を上げて卒倒した。もし、……妻も同じように、蔑むような目で、怯えて、拒絶するようなら、隠したままのほうが! 離縁はしない。したら死ぬ自信がある。……だがそれを打ち明けなければ、魔女の呪いも解けない……。魔女の呪いを解くには妻の協力が必要不可欠。だが……あー、ううう】
アレとは?
それが一番の謎なのよね。呪いのことも黙っていたわけじゃなくて、話そうとは考えてくれていた。でも何らかの理由で私が嫌う可能性があったから、相談できなかった?
うーん。うん、私に探偵の真似事は無理!
「ドミニク様。何を隠しているのですか? あと十秒以内に言わなかったら、話し合いの見込みなしと思って退席しますからね」
「っ!?」
眼光が更に鋭くなったけれど、そんなの怖くないわ。心の中で叫んでいるのがダダ漏れですもの。それに一瞬だけ泣きそうな顔を……うっ、しょぼんとした顔がちょっと可愛いなんて……思ってないわ。三年間も黙っていたのですから! 私は激オコなのです!
「十、九、八……」
「あ──」
「七、六、ごー、よん、さん、にー」
「──っ、急に数えるのが早くなってないか!?」
「いち、ぜ──」
「私は──結婚当日に、神獣の竜の始祖返りしたんだ!」
「え」
ボフン、と唐突な破裂音と共に旦那様の容姿に変化が訪れた。捻じ曲がった白い二本の角、白い肌が更に白く、頬には銀の鱗があり、白目部分が黒く染まって、瞳はエメラルドグリーン、太ももほどの蜥蜴のような尻尾がうねる。
どう見ても竜人族の特徴を色濃く受け継いでいた。
「まあ」
「──っ」
旦那様の顔がサーっと青ざめた。どうやら本人の意思とは関係なく本来の姿に戻ったようだった。
【や、やってしまった……! あれだけ感情を凍らせて、動揺や感情が揺れ動かないように特訓をしたというのに、妻の前ではまるでダメだ……。それでも三年は隠し通してきたのに……】
あら。尻尾がへにゃりと垂れ下がっているわ。なんだか犬の尻尾みたいで可愛いかも。
神獣の血は隔世遺伝することがままあり、この国の半分以上は神獣の血が巡っているらしい。昨今は神獣の血が薄れたとかで覚醒することはほとんどない。何より白銀の神獣が始祖返りする者は稀で、体の一部が獣に酷似する、または一時的に獣になれるなどの権能はあるけれど、外見は人と変わらないのだとか。
【……ああ、もう離縁しかない……。この姿はさぞかし気持ち悪いだろう】
あ。そうか。
ドミニク様は幼い頃から始祖返りしていたわけでもなんでもない。三年前、初夜の日に突然覚醒した。見慣れない異形の姿に自分ですら受け入れるのに時間がかかったのだもの、私に話すかだって悩むわ。覚醒してから落ち着くまで、そして私への対処に悩んでいる間に呪われてしまって……言い出すキッカケがずっともてないまま、ここまで来てしまったのね。
思えば結婚式は表情が乏しかったし、口数は少なかったけれど優しかったのだ。それにオーケシュトレーム公爵家の使用人たちは、みないい人たちばかりだったわ。私たちは見事に空回りしていたのね。
「ドミニク様。その……頬に……触れてもいいですか?」
「この肌を醜いと思ってもしょうが──え、え!?」
「触れてもいいですか?」
ここぞとばかりの距離を詰めた。その勢いに負けて、ドミニク様は珍しくポカーンとしている。まだ情報処理が追いついてないのだわ。ここは畳み掛けるのが一番!
「ド・ミ・ニ・ク・様?」
「え、あ、うん? うんん??」
もう了承を得たということにして、ピタッと頬に触れた。少しひんやりするが感触は思ったよりも柔らかい。尻尾にもちょっと触れてみたら犬のように尻尾がブンブンと揺れて可愛い。そして尻尾も思ったよりも柔らかい。すでにドミニク様は顔を赤くして固まっている。
心の声は悲鳴しか聞こえないので、放置。
うん。手で触れてわかったことは、ビジュアルだけでも私のドストライクなのに、モチモチな感触が最高すぎる。今なら妻という肩書を全面に悪用──いや合法的にハグしてもいいのでは?
前世では非モテだったし、今世でも異性にギュッとされたことがなかったもの!
ドミニク様的には触れられて、嫌には──。
【つ、つ、つ、妻が、私に、この姿で触れ、触れている!? こ、怖がられていない??? え、は? 都合が良すぎる……! ああ、もうずっとこのまま触れていて欲しい】
うん、大丈夫そうだわ!
この時の私はドミニク様に拒絶されなかったのが嬉しくて、ついつい気が大きくなっていた。普段なら自分から抱きつくなんてしなかっただろう。
「えい」
「!?」
思いのほか勢いよく抱きついたため、ドミニク様を押し倒してしまった。文系とはいえ肩はがっしりしているし、騎士のように胸板も厚い。
ハグしたら思いのほかいい匂いがする。ミントのような清涼感のある香りだわ。
【*あ%なっ、&%@*€8%◆あ◇⌘⇒~~~!?】
うん、言語化すらしなくったわ。これで少しは表情が変わったかと思ったけれども、鉄面皮は健在! もはや仮面でも瞬間接着剤でくっ付けているかのようだわ。
あら、でも心臓の鼓動が速いわ。…………なんだか私もドキドキしてきた! えっとこの押し倒している状況もアレよね!? こんな姿を使用人の誰かに見られでもしたら──。
「お茶のお代わりを──おや」
「「!?」」
紅茶のおかわりを、と気を利かせたロータスが佇んでいた。私とドミニク様を交互に見て、テーブルにティーポットを置いたのち無言で去っていった。
いや小走りだった気がする。速っ!?
「──って、ロータス!」
「今夜はご馳走ですね! 心得ております!」
「ちがーう!」
手を伸ばして追いかけようとしたが、ドミニク様によって阻まれた。
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