「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち

文字の大きさ
83 / 85
第13章 敵の名はチャイニーズ・アクシス。

第5話 日本国宙軍 清水明子少尉。

しおりを挟む
 千歳シーラス・ワン、ウーラノスCDC。
 
 メリッサが、日本国軍宙軍と自衛隊航空宙空科の2人の女性事務武官の間に立って打ち合わせをしている。
 
 メリッサは少し汗ばみ、赤ら顔になり、珍しく冷静さを失っていた。
 
 うかつだった。
 
 衛星軌道上のボーチャンでは東少佐の感応波通信を受け、八雲組合長と海保本部の東とのやり取りを最初から傍受していたが、受信していた新任のアメリカ宙軍の2人のコマンダーとオペレーターは日本語が全く話せず翻訳をしていた。
 
 彼女達は正確な判断をしなければならいので、途中経過ではなくしっかり理解してから報告するつもりだったのだ。
 
 新任の2人は全て聞いてから、清水とソスノフスカに正しい報告するつもりだったのだ。
 
 しかし、その内に事象がどんどん進行して、結局八雲組合長の義理の息子と山本検査官が銃撃されてしまった。
 
 フェリーターミナルでの遺体発見の通信を、最悪でも発見した事態で報告すべきだったかもしれない。もしくは日本語が話せるソスノフスカや清水を呼ぶべきだったのだ。
 
 彼女達が学んだ教育やシュミレーション、情報武官としての情報分析および解析ドクトリン上では正しいのだ。彼女等の行動には全く間違いはない。
 
 しかしだ。リアルタイムの戦場では通用しないのだ。いや、実際の戦場では教育やシュミレーションが全く通用しない事の方が多いのだ。
 
 しかもこれは実戦・戦闘開始の現場なのだ。

 HARMORシュミレーターでは無敵の小林未央やバルトッシュ、ジェシカでさえ、実戦・実機訓練ではめちゃめちゃ強い椎葉きよしには、全く敵わないのと同じ理屈、差なのだ。
 
 通信を傍受していたアメリカ宙軍の2人のコマンダーとオペレーター。
 
 なんとなく様子がおかしいアメリカ宙軍のコンソール・コクピット。 
 
 その気配に清水少尉が気が付き、2人のコクピットに近寄り、即座に通信回帰データを見てソフノフスカへ瞬時に報告した。
 
 それから千歳シーラスワンに連絡と同時に情報接続をしたのだった。
 
 そして、そのタイミングが悪かった。シーラスワン全体が、金門県防衛戦、全勝中の台湾防衛作戦に気を少し取られていたタイミングだった。
 
 なにか歯車が狂ったのか、結果として初動が遅れてしまったのだ。
 
 その初動の遅れが、苫小牧フェリーターミナルの避難準備で勤務していた警備員を始め、役場職員、港湾組合の職員の犠牲者を出してしまったのだった。
 
 今回のAXIS防衛戦。
 
 ただでもシーラス予想から外され、手薄になった苫小牧市なのだ。
 
 その手薄の防衛準備の中、更に、手薄な対応となった苫小牧港湾だった。
 
 全てのインフラに日本国陸軍、自衛隊対モービル対空部隊を配置してもっとも重要な港湾が結局、最も手薄になったのだ。
 
 警備を厳重にしていれば悲劇が起こらなかったかもしれないし、威力偵察の少女も確保できたかも知れなかった。
 
 これも実は親中派もしくは買収されたシーラス内部の幹部によって汚染された、AIシーラスマザーの仕業のひとつだったのだが……。
 
 今回の北海道防衛戦で初めて出した日本人、一般市民の犠牲者だった。
 
 万全を期したはずのシーラスの幹部全員に物凄い衝撃が走った。
 
 シーラスマザーやシーラス・NATO共同参謀本部の予想通り、敵アクシスは、海上もしくは海中で対処するのが防衛戦術の柱だった。
 
 そのため北海道の主要港湾に防衛兵力を分散準備をしたのが、大きなおごりだったのだ。
 
 対馬で初動が遅れた日本政府を非難していた自分達が同じ様な過ちを犯してしまったのだ。
 
----しかし、AXISとの戦端は既に開かれた。
 
 過去に反省を試みる時間や、猶予は既にないのだ。
 
 厳しくとも、現状を打破するのみだった。
 特にシーラスのトップに立つ御舩などオリジナル・ペンタゴンの首脳人の落胆は並々ならぬ程だった。
 
 ところが、そんな感情を1ミリも顔や態度に出さないのが歴戦錬磨の彼等だったのだ。
 
 その御舩も、ベランダ壇上で正面モニターを見ながらインカムで指令を出している。恐らくボーチャンとだろう。その御舩が、右下に居るメリッサを呼んだ。
 
「メリッサ!どうだ!」
 
 振り向いて御舩に腕を上げるメリッサ。
 
「はい!敵HARMOR。貨物船に積載確認。威力偵察の先遣隊の裏が取れました。いま、ボーチャンが確認中。よろしい、ミュレー少尉。」
 
 一段下のオペレーションエリア。
 階段側、手前に座るフランス宙軍、男性事務武官のミュレー少尉がメリッサに目を合わせてうなずいた。その2人のやり取りを目で追う御舩。
 
「よし。」
 
 両腕をベランダに置いてから、額を掻く御舩。そして、口元を引き締めた。
 
「ソフノフスカ司令。すまん。貴殿の先ほどの警告を即応するべきだった。遅かった。先程の海保のヘリ「くまたか」の危機と、それに続く威力偵察の可能性をもっと重要視するべきだった。全ての責任は私にある。そのまま続けてくれ。」
 
 全く表情を変えない御舩だったが、その握る手は、真っ赤に成る位、握られていた。
 
 ボーチャンの球形指令室で、御舩の話を聞きながら鈴木と木村の間で目を閉じて腕組をして浮かぶソスノフスカ。

 そして、彼女も微妙な笑顔で、腕組を解いて鈴木と木村の肩を持ち、御舩を諭すように話し始めた。
 
「了解。先程、海保との市民の傍受をもっと早くこちらが気が付いて、閣下に直接、私が告げていれば。」
 
 無表情、無言の御舩。
 
「……。」
 
 正面を見たままのソフノフスカ。
 
 彼女も全く表情は変わっていなかったが、木村や鈴木の肩を持つ手に力が入った。
 
 それに気づく2人は目を合わせた。
 
 ソフノフスカの手の上に優しく手を乗せてから続きのオペレーションをする木村。
 ソスノフスカが優しく御舩に助言をする。
 
「……閣下、少し早いですが。いかが。」
 
 うなずく御舩。

 喉のインカムマイクを押さえて、右下の自衛隊、日本国宙軍コンソールを見下ろして司令を始めた。
 

「了解、ありがとう、ソスノフスカ司令。桐生君、待機中オービター確認。メリッサ!作戦コード発信。」
 
「ハイ閣下。7、8、9番機は作戦コード、デルタ(低空突入とHARMORの降下)。10番機シレーヌはリーマー(着陸とHARMORの出撃)を発信します。」
 
「よし。」
 
 即座にオペレーションをして、御舩に答える日本国宙軍事務武官の桐生上級曹長。
 
「戦略オービターより返信。7、8、9、10番機確認。作戦コード受領確認。苫小牧上空へ既に進路変更済み。10番機は北部側よりランディング進入開始。7、8、9番機はダイブ高度に向け降下中。苫小牧市西側へ進入開始。全て、オービター内ペイロードベイ(モービル格納庫)、全モービル出動準備終了確認。閣下!いつでも行けます。」
 
 力強くうなずく御舩。即座に指示を出す。
 
「10番機シレーヌのガルシア大佐に直接連絡。桐生上級曹長より7、8、9番機各機に通達、直ちに苫小牧港湾突入開始。ダイブポイント変更。7番機は苫小牧市役所、8番機は苫小牧中央公園、9番機は苫小牧東中学校上空でパージ。10番機シレーヌっ!ガルシア大佐、ローザンヌ!聞こえるか!シレーヌは、……。」
 
 司令を受けて通話をしながらオペレーションを再び始める女性事務武官たち。
 
 そして、日本の高高度上空まで移動した巨大な衛星基地司令部のシーラス2ボーチャン。
 
 ふたつの球体が地球の照り返しをうけて真っ白く光っている。
 
 その球体のひとつ、情報統合司令室。
 
 心配そうに斜め天井から、ソフノフスカを見るアメリカ宙軍の2人の新任情報武官。
 
 ソフノフスカは2人の目線を感じてはいるが、敢えて目を合わせず厳しい顔でモニターを注視している。
 
 彼女達は泣きそうになり球形司令部内部を見渡すと、全スタッフが冷静にオペレーションをしている。
 
 やりきれなく目を合わせる新任コマンダーと新任オペレーターの2人。
 
 そんな彼女達の背後から浮遊して近づく清水少尉。
 
 清水少尉は、彼女たちの肩を持って何やら話始めた。
 
 そんな清水の姿を見る、ソスノフスカ。
 
 清水は片言、何かを言った後、落ち込んでいた2人は目を輝かせて仕事に戻った。

 2人の肩をポンポンと叩いてからこちらに向かって来る清水少尉。
 
 そんな清水を見ながら笑顔に戻るソスノフスカだった。
 ソスノフスカは心の中で、やはり近い将来、自分を継ぐのは清水しかいないと思った。そう思うとなんだか楽しくなるソスノフスカだった。
 
 近づいて来た清水に、独り言のような清水に言うような微妙な距離でボソボソと言った。
 
「武道の神髄は……我が心、人の心にありか。ふっ。」
 
「はい?長官。」
 
「さぁ女サムライ!仕事、仕事っ!うふふっ。」
 
 わざわざ、清水の目をみてから楽しそうに鈴木達のモニターを見るソスノフスカ。
 
 こんな非常時に笑顔とは?不思議に思い、首をかしげてから日本側天井のフランス宙軍コクピット・コンソールに向かう清水だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

処理中です...