「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第2章 思いは湯煙となり。

第2話 忍者パンダ。

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 布村は積極的に、きよしへ唇を当てた。

 そして、2人は深く抱擁した。
 
 ところが我に返り、急に真っ赤になるお子ちゃまきよし。

 布村の両肩を持って、からだを離した。
 
 目を閉じて唇を突き出し、抱擁ムードのままの布村。

 その肩を両手で持って、肩を揺さぶるきよし。
 
「布村さん!もう、行くよ。」
 
「あ!あ~もぅ。なんでー!ムード台無しっ!1分で良かったのにぃ!パンダの馬鹿ッ!馬鹿パンダっ!」
 
 膨れて腕を組んで、プイッと横を向く布村。
 
「ごめん、ごめん。愛子様。ホント、ごめん。」
 
 横で、両手を合わせて必死に、謝るシャイなきよしだった。
 
 「もう!」
 
 チラッと横目できよしを見てから、再び、プイッっと横を向く布村。
 
 きよしは、両方のバックミラーで後方確認、周囲をジッと見渡してから急に真顔になった。
 布村の肩に、手を置くきよし。

「もう、イヤッ。プイッ。」
 
 また、プイッとする布村に構わず話し掛ける。
 
「布村さん、愛ちゃんいい?このヘッドギアをかぶってスミス中佐!スミス中佐!と通信がつながるまで繰り返し、連呼してほしい。アナログのモールス信号通信だから絶対つながる。」
 
 眉を上げて、きよしを見る布村。
 
「えっ!隊長?モールス信号ってツー・ツー・トントンとかじゃないの?」
 
「発信形態はその通りだけど、通常会話で出来るんだ。機械が物凄い速さで自動的にツー・トンする。」
 
「成る程っ。って、よく解んないけど、つながった後は?」
 
「僕が敵のHARMORを、このトラックまで引き付けるから、そのコードを送ってほしい。」
 
「えっ!意味わかんない。」
 
「エイモスが、僕が連れてきた敵のHARMORを遠隔で分析する。その型番を布村さんがスミス中佐へ報告してほしい。その後は、千歳か、奈良のスパコンのマザーが型式から搭乗者パスコードを割り出すハズ。それを僕にエイモスが光通信で僕に伝える。それで敵のHARMORに乗り込んで、操って敵を殲滅する。絶対殲滅する。絶対!女の子や赤ちゃん、おじいちゃんおばあちゃんのかたきを討つ!」
 
「そんな事できるの?」
 
「やるしかない。だから、その時、君もロボットに搭乗してもらうしかない。エイモスを連れて。」
 
( 私が敵HARMORに搭乗することによって、スムーズに鹵獲ろかく、その後の戦闘行動もスムーズに移行出来ます。2機目の鹵獲ろかくが更に楽に出来ます。 )
 
「あ、あ、そうなの。解った。えっ?えっ?でもなんで?ワザワザ、ここに連れて来る必要ないじゃん。私もパンダ隊長と一緒に行く!時間がないでしょう隊長。2人とも一緒に敵地へ乗り込んでロボット盗んだ方が早い。絶対そう。ハイ、もう、ハイ!議論も終了~。決まり!」
 
( 布村さんの言う事が論理的というより、合理的です。椎葉少尉。私も一緒に連れて行って下さい。 )
 
 きよしとしては、わざわざ敵地に乗り込まず、ここの安全地帯に居てもらいたかった。
 布村やエイモスを危険にさらしたくなかったのだ。しかし、その気持ちを十分解った上で布村は判断したのだった。
 
「ね?パンダ隊長さん。」
 
「ん~。」
 
 腕を組んで厳しい顔をするきよし。そのきよしにまた顔を近づける布村愛子。
 その気配に気が付き、ニッコリしたまま、手の平で優しく布村の顔をゆっくり避けるきよし。
 
「あんっ。もぅ。」
 
「ははっ。わかったから。さぁ!敵地に侵入するよ、布村さん!」
 
 一瞬、見つめる布村の瞳に目をあわせてから、またマジ顔になりエイモスへ、指示を下した。
 
「エイモス?国道は行かない。安全と思われる山の中のショートカットを提案せよ。シーラス衛星の「モリガン1」と「すみれ」に、地形と障害物の解析依頼。」
 
( 了解。只今、エイモス超音波探査中。両シーラス衛星より地上地形の探査波データ受信完了。山林の走行可能予想値のデータを統合中、ただちにデータを整備致します。 )
 
 ニッコリして布村を見るきよし。
 真剣にきよしを見つめる布村。
 すこし照れるきよし。
 
( 少尉、データ整備・統合を完了しました。いつでも発進できます。ショートカットをナビゲートします。敵キャンプ、52メートル手前の丘に、目標設定致しました。当地点より750メートルの距離です。それで椎葉少尉、どなたが、私をかぶりますか? )
 
 再び、目を合わせるきよしと布村。
 ニッコリして手を上げる布村だった。
 
「はい、パンダ隊長。布村愛子が、かぶらさせていただきます。は~い、ポン。」
 
 布村が被ると同時に、布村が既に来ていたグレーのアーマー・アンダー・スーツの色が真っ黒になった。そして、関節以外少し膨らんでツルツルになった。
 
 黒い西洋の甲冑のようなデザインだった。
 黒のツルツルのアーマー硬化部と対象的に可動する関節部は、柔らかい布のままだった。
 きよしと布村に聞こえるようにエイモスが回答する。
 
( 道なき山岳地帯を走るため、布村アンダー・アーマー・スーツはエイモスの任意判断で、性能、強度、デザインを決定いたしました。関節部、背中の可動部以外は最強硬化形態とさせて頂きました。 )
 
「へ~ぇ。エイモスそんな事できるの。このスーツ。ふ~ん。」
 
 横目で布村を見るきよし。
 
 ツルツルのアーマー部の表面をこぶしで叩く布村。

( コンコンッ。コンコンッ。 )
 
「コンコンって、すっご硬つ。すっご。パンダさん叩いてみて。」
 
 きよしに腕を差し出す愛子。
 その腕をゲンコツで思いっきり叩くきよし。


( シュッ、ゴッ! )


「痛っー!がぁー、マジ痛っ!お~手の骨に響いた。すんげー硬っー。えぇー?おーイテテテ……。」
 
「はははっ。パンダ隊長に勝った!勝った!わーい。私の愛情こもったチュウを嫌がるから罰が当たったのだった。うふふっ、フフフッ……。」
 
 こぶしを痛がるきよしを笑って優しく見る布村。

 一瞬、見つめ合う2人。

 何となくイライラするAIのエイモスが提案を始める。
 
( ……ん。ゴホンゴホン!えー最後に、ちょっとおふたり共!おふたり共っ?よろし~い?よろしいですか? )

 見つめ合っていたのを、我に返り赤くなる2人。
 
「あ、あ。エイモス……。」

「え、あ。エイモスさんごめんなさい。なんでようしょうかぁ。」

( ゴホン、では提案です。今回は最終決戦との戦略予測演算結果が出ましたので、このヘッドギア、布村サイズ、布村愛子さん専用とさせて頂きます。その後の大きなカスケード形態変形は出来なくなります、よ。いいですね少尉? )

「あ、あ、成る程ぉ……。」

( いいですねぇ?少尉っ!いいですねっ! )
 
「あっはいー!提案。承諾しました!」

( ラジャー。カスケード変形始めます。布村さん動かないで下さい。 )

「え、え?なに、なに。」

( だから、愛子っ動くな! )

「あっ。」
 
 なぜか、まだ怒っているAIのエイモス。
 動きを止めようと、布村愛子の腕を持つきよし。
 
「愛ちゃん、ちょっとだけ動かないで。服の精度が下がる。」
 
「あ、あ。あっはい、はい。ジッとしてます。」
 
( プシュー! )

 軽く蒸気の煙が上がり、ヘッドギアが変形する。
 テープで巻きついた電池がヘッドギアに取り込まれ、留めていたガムテープが剥がれ落ちた。
 
 後頭部の表面が細い首に巻き、ベルトが背骨に沿って骨盤まで伸びはじめた。

 左右の出っ張りが、逆にアゴ下へひっくり返った。
 顔と頭が小さい布村に合わせたヘッドギアが出来上がったのだ。

 目を大きく見開いてびっくりするきよしと布村。

( はぁい。完了しましたわ。 )
 
「ひえぇぇ~。エイモス、オメー凄いわ。ホント。何かのSF映画かアニメみたい。凄いカッケー。凄い!凄い~!カッケー、バトルスーツみたい。あははっ!」
 
( あははって、あの~椎葉少尉。これはぁ……炭素繊維のカスケード反応理論を応用した最強のバトル形態なの。バトルスーツみたいではなく、バ・ト・ル・スーツです。 )
 
「……。」

 トゲのある言い方の人工知能のエイモスに、少し引っかかるきよしだった。
 
 対してその愛子。
 ニコニコして喜び始めた。
 室内のバックミラーで確認する布村だった。
 
「え?え?これ、着た感じがしない。凄い軽い。凄い凄い~エイモスさん。うれしい!」

 新しい服でも買ってもらったような喜び方だった。
 椅子に深く座り、右ひじをドア縁に掛けたが、軽くコンッ。と窓ガラスにアーマーのひじカドが当たった。

( バシャーン! )

 と、トラックの助手席のガラス全面が割れた。
 
「あ。」
 
 ワンテンポずれて、びっくりする布村。
 
「あー!ご、ごめんなさい~。ガラス全部割っちゃった!」
 
 右ひじや腕を見る愛子。
 横ではパイロットスーツの襟元からアーマースーツの布を引っ張り出して、忍者きよしになった。
 片目パンダの忍者きよし。
 
「あははっ!スゲー、ヒューッ!愛ちゃん、ちっから持ちー!さぁ行くよ布村さん。ナビお願いします!」

「了解、忍者パンダ!」

「それでは突入!」
 
 ヘッドライトを消し、国道の道を外れて、山林に突っ込んでいくトラックだった。
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