犬とスローライフを送ってたら黒い噂のある公爵に突然求婚された令嬢

烏守正來

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25 プレゼント

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マリーがここに来るようになって数日、にやけてばかりもいられない。マリーが私を好きになるように策を練っていかないと、三ヶ月なんてあっという間に過ぎてしまう。

女性とお付き合いなどしたことないが、一般論で言うと好感度を上げるのにプレゼントは効果が高いだろう。幸い金なら腐るほどあるし、大規模に商会経営しているからあらゆる贅沢品や珍品を手に入れることが可能だ。

マリーの好みはまだわからないが、女性が喜びそうな物か。
手堅い所で言うとドレスや宝石だろうが、いきなりそこまでの物を用意されても気が重いかもしれないな。
初回のプレゼントとしては、軽い装飾品か、美的な実用品か、部屋に飾るちょっとした物とかが良いだろう。
仕入れ品の目録を見て、質の良さそうな物をけっこうな数選び、近日中に持ってくるように頼んだ。かなり良い物を厳選したし、何か一つくらいは気に入るだろう。

ニ日後に頼んでいた商品が全て揃ったと連絡があり、行商の者が邸に品物を持ってきた。

「マリー、今日うちに行商が来ているんですけど、面白い物も置いてありますので良かったら見ていきませんか?」

「えっ? は、はい」

……思ったより反応が鈍いな。いや、でも実際に見れば欲しいものくらいあるだろう。
待たせていた商会の行商人を部屋に呼ぶ。

「わぁ! すごく素敵ですね」

良かった、高評価な気がする。文字盤が薄いルビーでできている懐中時計。純銀の櫛、名高い彫刻家の作った小品、クリスタルでできたバラ、小粒のエメラルドを並べた髪飾り、他にも色々用意したが、並んだ商品をマリーが驚いたように見ている。
マリーが小さな箱を手に取った。よし、最低でもひとつは気に入ったんじゃないか?

「お嬢様、お目が高いですね。そちらは南海の特殊な貝殻で作られた螺鈿らでんで材料も最高品質ですが、なんと世界最高とされる工芸職人キャメロン自ら作った一点物ですよ」

「……え?」

マリーが一瞬固まったと思ったら震える手で小箱を元あった所に戻す。

「す、すみません私軽々しく触っちゃって。指紋とか大丈夫でしたか?」

全て君にあげるために用意したんだから大丈夫に決まっているだろう。

「あの、サイラス様。こんなこと言うのは恥ずかしいんですが」

「うちは伯爵家にしてはちょっとは栄えてる方でも、ここまでの贅沢品を気軽に買える身ではないというか、私自身が生産性の低い生き方をしているので散財して親の迷惑にもなれないというか」

なんか勘違いされているが、全然違う。
私がしたいのは押し売りでも、マルチ商法でもなく、君への贈り物だ。

「せっかくお友達になれたのでお近づきの記念に何かプレゼントしたかっただけで、まさかマリーにお金を払わせようとは思ってませんよ」

「いやいやいや! こんな高級品いただけませんよ!」

高品質が裏目に出るとは! たしかにそこらのドレスや宝石より余程価値があるが。
しかしこうなると贈り物は失敗か。

「あ、でもこのリボン」

マリーが何本か飾ってある落ち着いた色のリボンに目を向けた。一見普通のリボンだが、六本角の獰猛どうもうな山羊からしかとれない毛織物で角度によって変わるオーロラのような光沢が永遠に続くとか言われてるやつか。

「あの、これって何か特殊なリボンだったりします?」

「それは六 ヒィッ!」

黙れ! この流れで正直に言う奴があるか!

そう思って行商人を見たが、思いが伝わったようで安心した。マリーから顔が見えない位置にいて良かった。

「あ、あー。それはこちらのお邸に持ってくるような商品ではなくて、間違えて持ってきてしまったんですが、近所の職人が作った何の変哲もないリボンです。梱包にでも使おうかと思いましてそちらに置いておきました」

「これっておいくらくらいします?」

「えーと、ぎ、いや、銅貨五枚くらいですかね?」

こっちをチラチラ見ながら話しているので頷いておく。
聞いたことないくらい低い金額だがよくやった。

「良かった! これ二本いただけますか?」

良かった! マリーが自分でお金を払ってしまったから当初の目的とは微妙にずれたが。
行商人は安堵したような疲れたような顔をして帰っていった。

マリーが買ったのは琥珀色のリボンだった。他の色も何種類かあったのに同じ色を二つ買ったのはこれが気に入ったんだろうか。ツインテールにするつもりなら是非見てみたいが。

マリーは先ほど買ったリボンを早速自分の髪に結んだ。かわいい。

「はい、どうぞ。サイラス様」

? もう一本のリボンを私に手渡してきた。どうしたんだろう。

「学校に行ってた時にお友達とちょっとした物をお揃いにしたりしてわいわいしてたんです。サイラス様が使うには安物かもしれませんけどお友達記念にプレゼントしますね」

「え」

呆然としていると昼の鐘がなった。

「ありがとう、マリー」

それだけ言うのがやっとだった。ポールに案内されてマリーが帰ってしまう。
あの弟から他所様の迷惑にならないように昼食前には帰って来いと言われているらしい。
子どもじゃあるまいし。

手の中にあるツヤツヤとした琥珀色のリボンを見つめる。いつもの青いリボンをほどいて、マリーに渡されたリボンで髪を結び直した。

顔が熱い。
……なんだろう、この自分で掘った穴に自分で落ちた感じ。
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