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第3章
73.卒業式です
朝。ルネと一緒に寝たおかげか、とてもよく眠れた。
そして朝になったということは、遂に卒業式の日だ。
レティシアにとってのメインは卒業パーティーであり、卒業式はただ参加するだけに等しいのだが。
今日で最後となる制服に袖を通す。そう考えると感慨深い。
(色々あったわね……)
特に前世の記憶が戻ってから、本当に色々あった。
良いことももちろんあったけれど、いかんせん悪いことのインパクトが強すぎる。
(穏やかな日々を過ごしてみたいものだわ。……そういえば、公爵達は今日卒業式来るのかしら? 外聞的に来ないとどんな噂が立つか分からないけれど、会いたくないわ)
レティシアにはもう、外聞なんて関係ない。
気持ちを落ち着けるように、深呼吸する。
学園に向かおうと部屋の外に出ると、ジョゼフの家族やルネが揃っていた。
「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます」
ジョゼフの挨拶に、レティシアも笑顔で返す。
「ルネのおかげでよく眠れたわ」
「良かったです。ルネもよく眠れたようですよ」
「ジョゼフさん!」
ルネが恥ずかしそうな声を上げる。
少し頬が赤くなっていて、とても可愛らしかった。
「ふふっ」
「レティシア様、一応今日で私達とはお別れですね?」
「……はい。本当にありがとうございました。皆様のおかげで、こうして生きていますわ」
クラリスの言葉に、最大限の感謝を示す。
「本当に良かったです。ジョゼフをよろしくお願いしますね」
「いえ、こちらこそですわ。ジョゼフにはずっとお世話になりっぱなしですから」
「ふふ。……またお会いしましょう」
「はい。必ず」
クラリスと握手を交わす。
そして、マルクが馬車に乗り込むように促す。
「それではお嬢様、また後ほど」
「ええ。行ってきます」
皆と別れの言葉を交わす。
卒業パーティー後、合流して亡命する予定だ。
第一王子の婚約者として、王宮所属の侍女にドレスアップの手伝いをしてもらうことになっている。
せっかくだからルネと一緒に準備をしたかったけれど、仕方ない。
名残り惜しさを感じつつ、馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
学園に3年も通うと、色々な思い出が出来る。良い思い出も、悪い思い出も。
クラスメイトも同じようで、教室内はしんみりした空気が流れていた。
レティシアも雰囲気に呑まれているのか、感傷的な気分になる。
そんな空気を払拭するように、教師が明るい声を上げた。
「皆さん、卒業おめでとうございます。これからあなた方は、成人とみなされ数々の困難があることでしょう。けれど、この学園で学んだことは何一つ無駄ではありません。胸を張って卒業しましょう」
その言葉に、クラスの雰囲気が柔らかくなる。
そんな様子を見ながら、ふとコレットが目に入る。
コレットは既に少し涙を浮かべている。さすがに早いと思うけれど、彼女も相当な苦労をしてきた。当然と言えば当然である。
(コレット様……。そう言えば、就職先はどうなったのでしょうか。最終テストも殿下とわたくしに続き、好成績を収めていますわ。それならば、引く手数多でしょう。どうか幸せになって欲しいですわ。……恋愛もどうなったのか気になりますわね。3人の中で結ばれるようなことはあったのでしょうか?)
気になりはするけれど、声を掛けるような間柄ではない。そしてコレットも聞かれたら戸惑うだろう。
逆の立場だったら、レティシアは間違いなく不審に思う。
療養していた期間が長かったので、何かしらの噂もレティシアには流れて来ない。
「さあ。卒業式です。皆さん、行きましょう」
教師の言葉に、皆動き始める。
レティシアもその動きの流れに沿う。
厳かに、卒業式が開会された。
内容は去年とほとんど変わらない。違うのは、卒業する側に立っているということ。
現実味があまり無く、レティシアはバレないように周囲を窺う。
卒業生家族の立ち位置は、レティシア達の後ろ。さすがに誰がいるのか確認は出来ない。
卒業生代表としてジルベールが答辞を読むために、壇上に上がる。
その姿を見て、レティシアは自分の気持ちを確認しようとする。
(殿下、王族として堂々たる態度ですわ。比べるのも失礼ですが、公子と比べても言葉に力がありますし、この方について行きたいと思えますわ)
そう思えるのだけれど。
(けれどわたくしが隣に並ぶ想像が上手く出来ませんわね。まあそれも今までのことが影響していると思うのですが)
自分達の関係が、上手くいっていない時間の方が長かったせいだろう。
結局ジルベールが何を考えているか、分からない。
(けれど不思議ね。公爵達と違って、興味ないとは思わないわ)
それどころか、知りたいという気持ちがあるのに気がついた。
(殿下の気持ちを知ったら、わたくしの奥底の気持ちも分かるのかしら)
自分自身の答えの出ない気持ちを探るように、ジルベールを見つめる。
ジルベールの答辞が終わると、割れんばかりの拍手が轟き渡る。
レティシアも拍手をしていると、ジルベールがこちらを見た。
周囲を見渡しているとかではない。バチっと音がしたと錯覚するほど、強い眼差しでレティシアを見たのだ。
その表情が王族の凛々しいものから、光が飛んでいるとまた錯覚するほどきらきらしい笑顔になる。
令嬢が小さく悲鳴を上げるほどに、魅力的な笑顔であった。
(え? もしかして、わたくしと目が合ったと思ったけれど違ったかしら? わたくし以外の誰か? けれどそれにしては視線が……)
混乱している間に、卒業式は閉会したのだった。
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