大陸横断弾丸鉄道 ―銃と魔法の荒野。美貌の姫君と早撃ちのメイド、二挺拳銃のならず者。三人は銀の弾丸と呼ばれる列車に乗り七日間の旅に出る―

春くる与

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悪党との交渉

メイドとの駆け引き

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「そいつぁ確かに……。
ずいぶんと値が張りそうだが。それでもあんた等、貴族にすれば端金じゃねえのか?」

「無駄遣いをする気はございません。
 すべては領民の血税なのですから」

「……」

 え、そこがこだわりなのかよ。
意外な理由に、俺はちょっとばかし驚いた。
税金ね。

「だったら、こんな宿に泊まるのも無駄遣いなんじゃねえの?」

 言うと、姫さんは不思議そうに首を傾げてから、かるく笑った。

「このホテルは、我がウェストブルック家の投資物件ですので。
宿泊にお金はほとんどかかっておりません。
空いている部屋を使わせてもらっております」

 さらっと、とんでもないこと言い出された。
こんなホテルが、自宅の持ち物ですの、か。
だがまあ、それならこの姫さんのこんな待遇も納得だ。

「交渉できると思うなら、バーンズ商会ってところに掛け合ってみるといい」

「バーンズ商会?」

「列車の切符の転売に関しちゃ、そこが一手に仕切ってる」

言って、俺は肉を酒で流し込む。
料理も旨えが、酒も旨いな。

「ありがとうございます。
……すぐに手配を」

 後ろに控えていたメイドに命じると、姫さんは俺に頭を下げた。
こういうところ、この姫さんは変に偉ぶらないな。

「しかし、なんだってあんな列車に乗りたいんだ?
 物見遊山にゃ向かないだろ」

 通称、銀の弾丸――。
王都とグレネデンの間を結び、大陸を東西に、弾丸の軌跡のように、まっすぐ貫く鉄道。
最速にして最強を謳われる。
線路には無限に時間を停止する魔法がかけられ、破壊不能。
列車強盗の爆破など寄せつけない。
警備には王立騎士団の精鋭がつき、いまだ一度たりとも襲撃を許したことも、到着時刻を遅らせたこともないという。

 それゆえに、停車駅は極端に少ない。
王都にのんびり向かうなんて行程ならば、無用のものだ。

「わたくしは期日までに王都に赴かなければなりません」

「期日?いったい何の?」

 訊くと、エフィメラは静かに微笑んだ。

「裁判の証人として、召喚されておりますので」





 さんざん飲み食いをしたあげく、俺は土産と称して高そうな酒瓶ひとつを抱えて部屋を出た。
出てすぐに警備の騎士に撃ち殺されたんじゃたまらないってんで、姫さんはドチビのメイドを見送りにつけてくれた。
ごきげんよう、と上品に会釈した姫さんとは、そこでお別れだ。
まあ、もう逢うこともねえんだろうな。

 エレベーターに向かう廊下を歩きながら、おい、とメイドに呼びかける。

「おい、ドチビ」

「……」

 メイドは下から俺をねめつけた。
ああ、ドチビって自覚はあんだな。
二十歳そこそこくらいに見える他のメイドたちと違って、こいつだけ子供だもんな。
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