大陸横断弾丸鉄道 ―銃と魔法の荒野。美貌の姫君と早撃ちのメイド、二挺拳銃のならず者。三人は銀の弾丸と呼ばれる列車に乗り七日間の旅に出る―

春くる与

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銀の弾丸

正義の味方とは相容れない

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「どうぞ、騎士様。お通りを」

 言うと、相手は俺の言葉の刺に気づいたようで、ぴくりと頬を引き攣らせる。
優雅な所作で身を引き、会釈した。
慇懃無礼ってやつだな。

「いや、乗客の方に護衛が道を譲っていただいては申し訳ない。どうぞ」

「……」

 なんか道の譲り方までが、めんどくせえなコイツ。
いらっとしながら相手を見るが、そこもまたお互い様のようだ。

「……譲るっつってんじゃねえか」

「譲って差し上げる、と申し上げている」

「お客様が譲るつってんだから、通れよ」

 あきらかに俺から売った喧嘩だが、向こうも買う気は満々のようだ。
どうぞどうぞと言葉は譲り合いだが、互いに一歩も引く気配がない。
睨み合っていると通りかかった他の乗客が、するりと俺たちの間をすり抜けていった。

 ……この譲り合い、意味なくね?

 そう思い出したあたりで、後ろから声をかけられる。

「ダーク」

 姫さんが一人で、こちらに歩いてくるところだった。
ドチビは一緒じゃないのか。

「なにをしていたのですか」

 不思議そうに俺と騎士を見比べながら訊いてくる。
俺は騎士を指さして

「このクソ野郎が」

「はあ!?」

 うっかり、本音で答えそうになったところ、騎士から、あまり騎士らしくないツッコミがきた。
はあ!?て、お前。
雑すぎんだろ、つっこみ方が。

「……こちらの騎士様と、道の譲り合いをしていました」

 言うと、姫さんはだいたいのところの事情を理解したようだった。
軽やかに微笑んで、俺と騎士野郎にこう言った。

「つまらないことをしていないで、貴方も仕事に戻られた方がよろしいのではありませんか」

「……」

 丁寧な物言いの筈なんだが、俺の耳には、ソコの馬鹿二人さっさと仕事に戻れ、と聞こえた。
騎士も同様だったらしく、恥入るように頭を下げると、そそくさと立ち去る。

「ドチビ……リリティアはどうしたんだ?」

 騎士野郎を見送ってから、訊くと姫さんは少し苦笑する。

「留守番をお願いいたしました。
ミスターゴールドマンのお部屋に伺います。
供を」

 さらりと命じられて、俺は頷いた。
こういう遣り取りにも、ちょっと慣れてきた気がする。

「しかし……ドチビの言い分にも一理あると思うがね。
相手は、名高い悪党だぜ。見た目は金持ちの紳士ってやつに見えたが。
関わって何かあったら、どうすんだい?」

 廊下を歩きながら訊ねる。
姫さんは、しばらく黙っていたが、ぽつりと答えた。

「わたくしは……まだ、わたくしの目で何も確かめてはおりません。
ですから、リィにも確かめもしない内から何かを決めつけるような物の見方を覚えないでほしいのです」

「そいつぁ難しいね」

 たった今、通りすがりの騎士に気に入らないって理由で喧嘩を売った俺は答えた。

「んなこと考えてる間に撃ち殺されたら、終わりだ」

「そう言われてしまうと、身も蓋もありませんね」

 姫さんは、また苦笑する。
それはなんだか、ひどく寂しそうな笑い方に見えた。
なんだよ、そんな顔させてるのは俺か?
ドチビか?
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