大陸横断弾丸鉄道 ―銃と魔法の荒野。美貌の姫君と早撃ちのメイド、二挺拳銃のならず者。三人は銀の弾丸と呼ばれる列車に乗り七日間の旅に出る―

春くる与

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銀の弾丸

騎士だって羽目を外す

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「よう、騎士様。ずいぶんと、お暇そうだが、お仕事はどうしたんだよ?」

『てめえ、なにさぼってんだ、さっさと出ていけ』という意味合いのことを、俺はかろうじて丁寧と言えなくもない口調で言った。
俺を見上げた騎士野郎は、途端に不機嫌そうなツラになる。
気に入らないのは、お互い様だってことか。

「今夜は非番でして。
お客人こそ……カードのルールは御存知か?
ここはゲームを楽しむための部屋なのだが」

『うるせえよ、お前、カードの文字読めるのかよ、ああ?』という意味のことを、奴はわりと丁寧な言葉に言い換えた。
いい度胸だ。
俺に博打で喧嘩を売ろうなんざ、百万年はええ。
昼間は姫さんっていう邪魔が入ったが、今は邪魔する奴はいねえ。
ここで決着をつけようじゃねえか。

「どうやら、一人で退屈していらっしゃるようですが、騎士様。
よろしければ、お手合わせ願えますかね」

 ガタガタうっせえんだよ、相手してやんよ。
言うと俺を見上げる騎士の目が、ぎらりと光る。

「負けて泣きつかれても、困るんですが。よろしいのか?」

 上等だ。
お上品な騎士なんぞに負けるわけがねえ、庶民の心意気ってもんを見せてやらあ。
俺は、どっかと相手の正面の椅子に腰を下ろした。

「ただのゲームじゃつまんねえだろ。飲み比べといこうぜ」

もう口調を取り繕うのも飽きた。
素に戻って、ざっくりと喧嘩を売ってやるが、クソ騎士は酒ときいて眉を寄せる。

「……それは、困る。騎士は非番の間も、乗車中は酒を口にすることは禁じられている」

「へえ、それじゃ仕方ねえな。
なら、酒の代わりにその茶でも飲みあうってことでいいか」

 そんな風に、しらっと飲み比べルールを改正したが。
うるせえ、知るか。
こちとら酔いつぶして部屋から叩き出してやんのが目的だよ。
騎士野郎がカードを繰って横に気を取られている間に、奴のグラスにドッバドバ酒をついでおいてやった。

「ゲームは何にする」

「さくさく行こうぜ。ハイアンドローで」

「承知した」

 まずは一戦。
きわどい数字が出て、安全策を取ろうとした騎士は、出たカードの目に頬を引き攣らせる。

「……まずは、俺の勝ちだな」

 言って、グラスを差し出してやる。

「おら、グッと行きな。グーッとよ」

 煽ってやれば、単純そうな騎士野郎はぐいとグラスをあおった。
そして、盛大に噎せる。
ざまあ。

「ちょ……ッ、おま……、なんばしよっとか……!!」

「……」

 なんだ、えらい訛ったな。
田舎者か、こいつ。
グレネデン育ちの俺は、言葉は荒いが訛りはねえ。
どうやら酒が入ったり油断したりすると訛りが出るみたいだな、この騎士。

「悪い悪い。うっかり酒が入った方を渡しちまったみてえだ。
……大目に見ろよ」

 にやにやしながら言ってやると、騎士野郎が睨みつけてくる。
目に込められた殺意が、気持ちいいぜ。
賭場は、こうでなくちゃな。

「わざと、やっちょっとやろ……」

 決まってんだろ。わざとだよ。
腹の中でそう笑ってやるが、俺はいやいやと首を振った。

「間違えたって言ってんじゃん。
……まさか、この程度で怖じ気づいたとか言わねえよなあ?」

 挑発してやると、酒の勢いもあってか奴は、どん、とグラスを置いた。
ちょろいわ。
このまま酔い潰して、騎士団からクビにでもなればいいんだよ。
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