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歓楽街の一夜
目覚める街
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そして夕闇が荒野を紅く染めはじめた頃。
銀の車体が、黒々とした影のような建物の立ち並ぶ街へと入っていく。
駅舎は、特に他の街と変わりがあるようには見えない。
ちなみにシルバーバレットの線路は、他の列車とは離れて設置されている。
なんでも、線路自体は時間停止の魔法がかけられているので、壊れたり傷がつくことはないが、列車はそうもいかない。
だから並走する形になって、他の列車から強盗なんかに攻撃される危険を避けているのだそうだ。
速度で敵うわけもないが、先行している位置からの攻撃だと、たしかに避けられないからな。
それにしても、一大歓楽街ときいていたのに、ずいぶんと静かなもんだ。
明かりも少ないし、そのせいか人の姿も疎らだった。
俺たちは列車を降り、ゴールドマンと合流すると、駅の出口に向かう。
そして、それは俺たちがちょうど駅から外へと出た瞬間に起こった。
パアッ、と周囲に明かりが灯る。
それは見る間に通りを照らしていく明かりの列となった。
それに呼応するように、建物にも煌々と明かりがともされる。
「……!!」
すげえ。
まるで何かの舞台劇の演出のようだ。
姫さんとドチビが、並んであんぐり口を開けてた。
このあたり、こいつらって本当に田舎者だよなあと可笑しくなる。
妙に面白可愛いわ。
街はそれまで眠っていたものが目覚めたように活気を取り戻していく。
いったいどこに隠れていたのか、通りに人が溢れだし賑やかに宵を彩る。
赤や黄色、緑に青と極彩色の紙筒に包まれた灯火があちこちに上げられ、通りを照らす。
やたらと派手な衣装に身を包んだ女たちが、客引きの声を上げる。
俺は、道のど真ん中に呆然と立ち尽くしている姫さんとドチビの襟首をつかんで、道端へひょいと運んだ。
「んなとこで立ち止まってたら、危ねえぞ」
言うと、やっと我に返ったらしい田舎者の主従は、キョロキョロと辺りを見回した。
「す……すごいですね。こんなに賑やかなものとは……」
姫さんは、まだどこかぼうっとした様子でそんな事を呟いた。
ドチビも、こればかりは素直にコクコクと姫さんの言うことに頷いている。
「驚いたかね?この街では昼と夜が逆転していてね。
日が落ちると同時に、こうして賑やかになるんだよ」
ゴールドマンは、笑ってそう説明する。
まさに夜の街ってことか。
それにしても、移り変わりの見事さには、街育ちの俺でも度肝を抜かれたぜ。
俺たちは、すっかり賑やかになった街を歩く。
「連絡の手紙が届いているはずなので、郵便局に立ち寄りたいのですが。
かまいませんか」
姫さんがそう言うと、ゴールドマンは頷いて案内しようと言って先に立つ。
方向音痴に任せると、どうなるかわからないんで、爺さんの道案内なら安心だ。
駅から、ほど近い建物につくと、そこには手紙の形の看板が掲げられていた。
俺たちは一緒に中に入り、姫さんが手紙を受けとってくるのを待つ。
戻ってきた姫さんが手にしているのは、一枚の紙きれだった。
だが、見覚えがある。
ありゃ念話用の通信記録紙じゃねえか。
ボスのところで、見たことがある。
たしか、べらぼうに料金が高い。
念話のために使う魔法触媒が、とんでもなく高価なんだそうだ。
ボスのとこじゃ、よほどの大事でなきゃ使われなかった代物だ。
念話ってのは魔法を使った超速で届く手紙だってことくらいしか、俺にはわかんねえ。
どんな離れた距離でも、かかる時間は一日以内だと聞いている。
ボスは滅多なことじゃなきゃ使わなかったが、大した違いだぜ。
手紙ひとつにも金が、かかってやがる。
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