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弾丸より速く駆けろ
悪党は最後には力ずく
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だが姫さんは振り返りもしなかった。
「父が今、一番恐れていることは何かを考えてみれば分かることです。
……わたくしたちから暗殺されることを最も恐れているはずの父が、わざわざここで私に会いたいと思うはずなどないではありませんか」
言われてみれば、なるほどその通りだ。
親父さんが、こいつらと手を組むとしたら、一番の目的は敵対することになる姫さん側から守ってもらうことの筈だ。
ここで姫さんと会わせるなんてことになったら本末転倒だろう。
「だ……だがっ、僕たちが匿っている可能性は……」
「だとしたら、なおのこと。裏切ると決めた覚悟のある相手に、わたくしが会って説得できるはずもありません。
それは、ただの時間の無駄です」
はい、クソ美少年の負け。
つうか憎々しげに歪んだ表情は、もう美少年って感じでもないが。
人間ってな、性根が顔に出るんだな。
「そちらが一枚岩ではないということは、了解いたしました。
あなたは今回の裁判には、おいでにならないようですけれど」
姫さんはドアの前で、くるりとクソ野郎へ向き直った。
「ごきげんよう」
姫さんの言葉が終わるや否や、クソ野郎は銃を構えた。
「待て……!!止まれ!!」
途端に、神父や教会関係者から悲鳴が上がる。
「ウェストブルック卿、なんということを!!」
制止の声より、奴が引き金を引く方が早い。
咄嗟に姫さんの前に飛び出した俺は、脇腹を掠めた感触に、ぞっとする。
馬鹿な。弾道は塞いだはずだ。
なのに俺を掠めたってこたあ、姫さんに当たったかもしれないということだ。
だが、掠めたそれに衝撃がなかった。
「……な、ッ!!」
弾丸から、はじき出されたのは、青い燐光の環。
ぐるりと難解な絵文字と幾つもの環が重なり合ったそれは、中心から白く光を放つ。
あれは、ただの弾丸じゃない。
解呪の魔法を込めた、特殊な弾丸だ。
人の手が届きにくい場所に施された、古い呪いなんかに対して使うことがある。
やっぱりとんでもない金額の魔法触媒を使うんで、滅多にお目にかかれるようなものじゃない。
なにより解呪を目的とした、それは攻撃じゃない。
攻撃じゃないから、教会の絶対中立の協定に反していない。
それは狙いすましたように、姫さんの左手を貫いた。
細い手が、吹っ飛ばされた。
そう見えた。
「クソガキ……ッ!!」
俺が吠えるのと同時に、ドチビが撃ち返す。
一瞬遅れて、俺の抜いた二つの銃口が奴を撃つ。
だがそれらの弾は全て、障壁に阻まれた。
攻撃だからだ。
全ての戦闘行動を無にする、教会の絶対中立の壁。
「姫様……!!」
「エフィ……ッ!!」
伏せながら、倒れた姫さんのところへ駆け寄る。
環が、収束しながら姫さんの手を宙に縫いとどめる。
それは、なぞる様に手首までを上り。
届いた、その掌に紅く血の色をしたものを浮かび上がらせる。
俺の拳ほどもありそうな、赤い宝石。
まるで抜き取るように、赤い環は宝玉を固定して引き剝がしていく。
解呪の魔法陣は、そもそも人体を相手にすることを考慮していない。
手が届く場所にあるものなら、普通に解呪など簡単にできるからだ。
高価な触媒を使う必要もない。
魔法陣は、もともとの目的が違う。
埋め込まれている肉の方へは、なんの配慮もなく。
魔石と肉とを引き剥がそうとする。
姫さんが、くぐもった悲鳴を上げて、痛みを訴えても何の容赦もない。
「父が今、一番恐れていることは何かを考えてみれば分かることです。
……わたくしたちから暗殺されることを最も恐れているはずの父が、わざわざここで私に会いたいと思うはずなどないではありませんか」
言われてみれば、なるほどその通りだ。
親父さんが、こいつらと手を組むとしたら、一番の目的は敵対することになる姫さん側から守ってもらうことの筈だ。
ここで姫さんと会わせるなんてことになったら本末転倒だろう。
「だ……だがっ、僕たちが匿っている可能性は……」
「だとしたら、なおのこと。裏切ると決めた覚悟のある相手に、わたくしが会って説得できるはずもありません。
それは、ただの時間の無駄です」
はい、クソ美少年の負け。
つうか憎々しげに歪んだ表情は、もう美少年って感じでもないが。
人間ってな、性根が顔に出るんだな。
「そちらが一枚岩ではないということは、了解いたしました。
あなたは今回の裁判には、おいでにならないようですけれど」
姫さんはドアの前で、くるりとクソ野郎へ向き直った。
「ごきげんよう」
姫さんの言葉が終わるや否や、クソ野郎は銃を構えた。
「待て……!!止まれ!!」
途端に、神父や教会関係者から悲鳴が上がる。
「ウェストブルック卿、なんということを!!」
制止の声より、奴が引き金を引く方が早い。
咄嗟に姫さんの前に飛び出した俺は、脇腹を掠めた感触に、ぞっとする。
馬鹿な。弾道は塞いだはずだ。
なのに俺を掠めたってこたあ、姫さんに当たったかもしれないということだ。
だが、掠めたそれに衝撃がなかった。
「……な、ッ!!」
弾丸から、はじき出されたのは、青い燐光の環。
ぐるりと難解な絵文字と幾つもの環が重なり合ったそれは、中心から白く光を放つ。
あれは、ただの弾丸じゃない。
解呪の魔法を込めた、特殊な弾丸だ。
人の手が届きにくい場所に施された、古い呪いなんかに対して使うことがある。
やっぱりとんでもない金額の魔法触媒を使うんで、滅多にお目にかかれるようなものじゃない。
なにより解呪を目的とした、それは攻撃じゃない。
攻撃じゃないから、教会の絶対中立の協定に反していない。
それは狙いすましたように、姫さんの左手を貫いた。
細い手が、吹っ飛ばされた。
そう見えた。
「クソガキ……ッ!!」
俺が吠えるのと同時に、ドチビが撃ち返す。
一瞬遅れて、俺の抜いた二つの銃口が奴を撃つ。
だがそれらの弾は全て、障壁に阻まれた。
攻撃だからだ。
全ての戦闘行動を無にする、教会の絶対中立の壁。
「姫様……!!」
「エフィ……ッ!!」
伏せながら、倒れた姫さんのところへ駆け寄る。
環が、収束しながら姫さんの手を宙に縫いとどめる。
それは、なぞる様に手首までを上り。
届いた、その掌に紅く血の色をしたものを浮かび上がらせる。
俺の拳ほどもありそうな、赤い宝石。
まるで抜き取るように、赤い環は宝玉を固定して引き剝がしていく。
解呪の魔法陣は、そもそも人体を相手にすることを考慮していない。
手が届く場所にあるものなら、普通に解呪など簡単にできるからだ。
高価な触媒を使う必要もない。
魔法陣は、もともとの目的が違う。
埋め込まれている肉の方へは、なんの配慮もなく。
魔石と肉とを引き剥がそうとする。
姫さんが、くぐもった悲鳴を上げて、痛みを訴えても何の容赦もない。
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