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目覚まし時計だけじゃ間に合わない
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翌朝はとてもいい天気だと思われた。
雨戸の隙間から差し込む朝日は、きらきらとしていて小さくとも頭をすっきりとさせてくれる。
目覚めは、爽やかだった。
よく眠った後の、爽快感で意識ははっきりとしている。
枕元では、目覚ましが鳴っていた。
止めなければ。
そう思うのだけど、私は布団の中で動けずにいる。
目覚ましは鳴り続けている。
止めなければ。
でも私は布団の中で一ミリも動けずにいる。
「……うそでしょ」
地獄のような筋肉痛で、目覚ましを止めるどころか起き上がることもできなかった。
生気をわけた、ということだったから倦怠感のようなものを感じるのかと思っていたのに。
予想外なところに出た支障に、私は混乱していた。
なぜ、筋肉痛。
たしかに、普段からさほど鍛えているとはいいがたいけども。
呆然としていると、ふと目覚ましの音が止まった。
視線を巡らせると、黒猫が私の顔を覗き込んでいる。
「……汐」
「やはり、体調を崩したか。どこが、どうなった」
「……筋肉痛」
苦労しながら答えると、突然、あらぬ場所から笑い声が聞こえた。
「あはははははははは、筋肉痛……!!そんなことになった贄、聞いたことない……!筋肉痛……!!」
視線だけ動かして見ると、松里さんが笑い転げていた。
……ひどい。
そんなに笑うことないじゃない。
「もう少し心配してくれてもいいと思う……」
私がむくれて言うと、松里さんはごめんごめんと言いながら涙を拭いていた。
泣くほど面白いですか……。
「心配できてみたのよ、一応。でも、これじゃ今日はバイトに出るのは無理みたいね。蓮川さんに連絡しといてあげる」
それは助かります。けど、松里さんはどうしてここにいるのだろう。
私は昨夜、ちゃんと戸締りをして寝たはずなんだけど。
気になったので訊いてみると、松里さんは背後を指さしてにこりと笑った。
「雨戸外して、押し入ったの」
「……」
戸締りとは。防犯とは、いったい……。
田舎の家って、オープンなんだな。
呆れるのを通り越して私が感心していると、松里さんは雨戸をあけ始める。
「お天気いいし、雨戸開けちゃうわね。食べられそうなら、朝ごはん、何か作るわ」
かさねがさね、ありがたいなあ。
そう思っていたら、開いた雨戸の向こうに三重子さんがひょっこり顔をのぞかせた。
「……おはようさん。里ちゃん、具合が悪いのんじゃ?」
三重子さあああん!
私は病気になった時の、意味もなく不安になる心地がしていたものだから、つい起き上がろうとしてしまった。
びきびき、と全身から電流のような痛みが走って私はのけ反った。
「おおう……ッ!」
おおよそ女子らしからぬ呻き声をあげてしまう。
……恥ずかしい。
「はいはい、安静にね」
松里さんが布団をかけなおしてくれる。
ありがたい……。
「慣れない仕事して、筋肉痛で動けないらしいわ。三重子さん、朝ごはん一緒に作っちゃいましょ」
松里さんにそう声をかけられて、三重子さんは台所に向かう。
汐は私の枕元にちょんと座って、それを見送っていた。
なんだか、一気ににぎやかになったなあ。
それにしても、これが東京での一人暮らしだったらどうなっていたことだろうと思う。
ここだと、暮らしているのは一人なのに、こうして助けに来てくれる人たちがいる。
布団に横になったまま、台所から聞こえる食器の音や話し声に耳を傾けていると、とても安らぐ気がした。
ああ、いいな。こういうの。
また少しうとうとしながら、私はすごく幸せでふわふわした気分になっていた。
雨戸の隙間から差し込む朝日は、きらきらとしていて小さくとも頭をすっきりとさせてくれる。
目覚めは、爽やかだった。
よく眠った後の、爽快感で意識ははっきりとしている。
枕元では、目覚ましが鳴っていた。
止めなければ。
そう思うのだけど、私は布団の中で動けずにいる。
目覚ましは鳴り続けている。
止めなければ。
でも私は布団の中で一ミリも動けずにいる。
「……うそでしょ」
地獄のような筋肉痛で、目覚ましを止めるどころか起き上がることもできなかった。
生気をわけた、ということだったから倦怠感のようなものを感じるのかと思っていたのに。
予想外なところに出た支障に、私は混乱していた。
なぜ、筋肉痛。
たしかに、普段からさほど鍛えているとはいいがたいけども。
呆然としていると、ふと目覚ましの音が止まった。
視線を巡らせると、黒猫が私の顔を覗き込んでいる。
「……汐」
「やはり、体調を崩したか。どこが、どうなった」
「……筋肉痛」
苦労しながら答えると、突然、あらぬ場所から笑い声が聞こえた。
「あはははははははは、筋肉痛……!!そんなことになった贄、聞いたことない……!筋肉痛……!!」
視線だけ動かして見ると、松里さんが笑い転げていた。
……ひどい。
そんなに笑うことないじゃない。
「もう少し心配してくれてもいいと思う……」
私がむくれて言うと、松里さんはごめんごめんと言いながら涙を拭いていた。
泣くほど面白いですか……。
「心配できてみたのよ、一応。でも、これじゃ今日はバイトに出るのは無理みたいね。蓮川さんに連絡しといてあげる」
それは助かります。けど、松里さんはどうしてここにいるのだろう。
私は昨夜、ちゃんと戸締りをして寝たはずなんだけど。
気になったので訊いてみると、松里さんは背後を指さしてにこりと笑った。
「雨戸外して、押し入ったの」
「……」
戸締りとは。防犯とは、いったい……。
田舎の家って、オープンなんだな。
呆れるのを通り越して私が感心していると、松里さんは雨戸をあけ始める。
「お天気いいし、雨戸開けちゃうわね。食べられそうなら、朝ごはん、何か作るわ」
かさねがさね、ありがたいなあ。
そう思っていたら、開いた雨戸の向こうに三重子さんがひょっこり顔をのぞかせた。
「……おはようさん。里ちゃん、具合が悪いのんじゃ?」
三重子さあああん!
私は病気になった時の、意味もなく不安になる心地がしていたものだから、つい起き上がろうとしてしまった。
びきびき、と全身から電流のような痛みが走って私はのけ反った。
「おおう……ッ!」
おおよそ女子らしからぬ呻き声をあげてしまう。
……恥ずかしい。
「はいはい、安静にね」
松里さんが布団をかけなおしてくれる。
ありがたい……。
「慣れない仕事して、筋肉痛で動けないらしいわ。三重子さん、朝ごはん一緒に作っちゃいましょ」
松里さんにそう声をかけられて、三重子さんは台所に向かう。
汐は私の枕元にちょんと座って、それを見送っていた。
なんだか、一気ににぎやかになったなあ。
それにしても、これが東京での一人暮らしだったらどうなっていたことだろうと思う。
ここだと、暮らしているのは一人なのに、こうして助けに来てくれる人たちがいる。
布団に横になったまま、台所から聞こえる食器の音や話し声に耳を傾けていると、とても安らぐ気がした。
ああ、いいな。こういうの。
また少しうとうとしながら、私はすごく幸せでふわふわした気分になっていた。
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