猫の神様はアルバイトの巫女さんを募集中──田舎暮らしをして生贄になるだけのカンタンなお仕事です──

春くる与

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夢の神事へのお誘い

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「里ちゃんも、もしかしてさ。幽霊と妖怪の区別がわかんない人?」

 松里さんに訊ねられて、私は少し驚いてしまう。
え、同じようなものなんじゃないの?
そう考えていたら、膝の上に黒猫の前足がぺたんと置かれた。
花びらと遊ぶのに疲れて、汐が戻ってきたのだ。

 先日の祭事で一度、関わってから汐は前ほど私を無視しなくなった。
むしろ、やや懐いてくれているみたいで嬉しい。

「……どうした」

 猫とは思えない低音で、しかも人語で訊ねられてどきりとする。
ギャップが半端ない。

「あ、うん……。幽霊と妖怪はちがうっていう話をしてて」

「それは違うだろう」

「……どう違うのかが、よくわからないんだけど」

 私がそう言うと、汐と松里さんは顔を見合わせた。
そして、ふいに汐の輪郭がぼやけたかと思うと、白衣の神主姿になった汐が現れる。

「……ッ!!」

 ぎょっとして身を引く。
変化するときは、できれば予告してほしい。
急に変わられると心の準備ができていなくて、びっくりする。

「……幽霊は死んだ者だが。妖怪は生きている。俺も、そこの尾なしもな」

 尾なしって呼び方は、ちょっとどうかと思います。
たとえ神様だとしても。
そんな非難を少し目に込めてみたのだけど、汐は空気は読んでくれないようだった。
松里さんは気にした様子もなく笑っていたけど。

「妖怪ってレアな高次生物の総称みたいなもんだから。わりとそれぞれに違うのよねえ」

「もともと、こいつはこの土地の神ではない。稀人神だな。今は俺から生気を受け取ってはいるが、本来はまつろわぬ神でもある」

「自由大好きー」

「……」

 私が微妙な顔をしていると、松里さんが気づいて苦笑した。

「あ、もう話が分かんなくなってるでしょ」

「……難しくて」

 正直に言って頭を下げる。
松里さんと汐は、ちょっと呆れたみたいにしていた。
だって分からないものは分からないんだ。
仕方ないでしょ……。

「……里は、別に。わからないままでいていい」

 すると汐が助け舟みたいに言ってくれて、私は少し驚く。
つん、てされるかと思っていたのに。

「そおね。こうやって、アタシたちの事、あっさり受け入れてくれてることの方が、重要」

「そういうものですか……」

 でも、この間の神事の夜みたいに、ああいうものを目の前で見てしまったら、信じて受け入れるしかないと思うな。
汐は神様だった。松里さんもそうだ。
それをこの土地全てから、すごく感じた。

「そうそう。今夜はね、山の神の春の祭なのよ。里ちゃんも招待するわ」

「ヤマ〇゛キの?」

「パン祭じゃねえよ。白いお皿もくばらねえよ」

「……」

 ……松里さんて、ツッコミ入れるときは男口調に戻るよね。
だって春の祭っていえば、それだと思うじゃない。

「どこでするんですか、そのお祭り」

 訊くと、松里さんと汐は顔を見合わせてしばらく悩んでいた。
場所に悩むのだろうか。

「……夢の中、かな」

 答えに私はきょとんとする。
夢の中……。現実じゃないってこと?
訊いてみたけれど、二人とも笑って答えてくれなかった。

 楽しみにしてて、と言われて私はその夜はどきどきしながら布団に入る。
眠れるだろうかと思うくらいだったのに、布団に入って瞬きを二度したら、もう私は眠りに落ちていた。
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