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流行りものにのっかる方向
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「揉めるなら揉めるで、もっとドロッドロした感じにできないの?小学生のお付き合いじゃあるまいし。見ててつまんなーい」
「不倫ドラマを楽しみにする主婦ですか」
そんな方向性のものを求められても、困る。
別に揉めてないし。
松里さんは本当につまらなさそうに言い放ったのだが、すぐに表情を改めた。
その隣で夢中になってプリン食べている汐。
シュールだなあ。
「そんなことより、会議よ」
そんなことを言い出した当人が、言うんだ……。
思ったが、突っ込むとまた脱線しそうだったので黙っておいた。
松里さんは、どん、とちゃぶ台を叩いて私たちに視線を一巡りさせる。
「過疎をとめる村おこしについて、何か案のある者はいないか」
「……」
しん、となってしまった私たち。
松里さんがそれを見て、眉を吊り上げる。
「円卓会議というのは、それぞれが完全に平等な立場で発言するためのものであって」
「……はい」
手をあげると、松里さんは嬉しそうに私を指さした。
「はい、里ちゃん」
「松里さん自身は何か意見はないんですか」
「議長は平等な立場で判断するためのものなので意見はありません」
しらっと自分を圏外に置く姿勢に、他の三人は口を噤んだ。
ずるいやん。
けど私は最大限に頭をひねって、案を絞り出してみる。
「はい」
「里ちゃん」
再び手をあげると、今度は胡散臭そうに指さされた。
どうやらさっきの質問で、議長の信頼を失ってしまったようだ。
ちょっと訊いてみただけなのに。
「……汐が人型になって神社でバイトをしてみるというのはどうでしょうか」
「……」
「イケメン神主がいると評判になって参拝者が増えるかも」
「発想が水商売じゃないの!」
「会いに行けるアイドル系のつもりだったんですけど……」
「神様に会いに行けて、どうする」
アイドルとは違うのよ的に言い切られて、私はしょんぼりと肩を落とす。
悪くないアイディアだと思ったんだけどな。
「……働きたくないでござる」
「……」
どこでそんな言葉を覚えたの、汐。
無感動な顔つきでさらりと言われ、私は幼稚園で悪い言葉を覚えてくる子供を持つ母親くらい動揺する。
神様は、そんな言葉使っちゃいけません。
とはいえ猫が本性なのだから実際に勤勉なタイプではないよね。
汐がバイトにきたら、蓮川さんが気を使って自分で掃除とか始めてしまいそうだ。
「ダメか……」
「駄目よね……」
私と松里さんは溜息をついた。
汐の隣では氏康さんが、ちまきを食べながらこっそり、ばいとってなんだ、と汐に訊いていた。
そこからか。そこからだったか……。
神様たちは、どうにもアテにならなさそうだった。
「あとさあ。参拝者も増えればいいなとは思うけど。一番増やしたいのは、村に住もうと思ってくれる人たちなのよね。……そういう案はないかな」
む、難しい……。
通勤とか、そういうことがネックになって来るものね。
「村そのものを観光目的で来てもらえるようにできれば、その仕事の関係で住んでくれる人も増えそうだけど……」
「観光か……。それっぽいもの、特にないしね」
松里さんは憂鬱そうに呟いて、それぞれにちまきとプリンを食べている神様ズを見た。
「……あんたたち、何か特技とかないの?」
汐と氏康さんが顔を見合わせる。
そして首をひねった。
「──猫になれる」
「──犬になれる……」
「ごめん、訊いたアタシが馬鹿だったわ」
松里さん、だんだんと言葉に遠慮がなくなっていくなあ。
私は苦笑いしながら、テレビの方を見た。
さっきまで汐がゲームをしていたため、今はネット回線に繋がっていて、何かの動画が映っている。
「ユーチューバーになるとか、ないかなあ……」
困った挙句の私の呟きに、松里さんがきょとんと瞳を瞬きさせる。
「ユーチューバ―……」
おうむ返しに呟かれた言葉に、汐が首を傾げた。
「ユーチューバーとは、なんだ」
「湯の通るホースのことだろう」
氏康さんが真面目な顔をして答えてたけれど、どこからつっこめばいいものか。
……チューブって言いたいのかな……。
だが私たちの与太話を一切スルーして、松里さんが言った。
「……それ、いいかも。ユーチューバ―」
「え……」
「ユーチューブで、村の紹介をするのよ。それなら、この二人でもできるでしょ」
え、この、湯の通るホースとか言ってる神様たちに、そんな真似をさせられると思ってるの?
……無理でしょ。
私と汐と氏康さんは、困惑して松里さんを見つめた。
「不倫ドラマを楽しみにする主婦ですか」
そんな方向性のものを求められても、困る。
別に揉めてないし。
松里さんは本当につまらなさそうに言い放ったのだが、すぐに表情を改めた。
その隣で夢中になってプリン食べている汐。
シュールだなあ。
「そんなことより、会議よ」
そんなことを言い出した当人が、言うんだ……。
思ったが、突っ込むとまた脱線しそうだったので黙っておいた。
松里さんは、どん、とちゃぶ台を叩いて私たちに視線を一巡りさせる。
「過疎をとめる村おこしについて、何か案のある者はいないか」
「……」
しん、となってしまった私たち。
松里さんがそれを見て、眉を吊り上げる。
「円卓会議というのは、それぞれが完全に平等な立場で発言するためのものであって」
「……はい」
手をあげると、松里さんは嬉しそうに私を指さした。
「はい、里ちゃん」
「松里さん自身は何か意見はないんですか」
「議長は平等な立場で判断するためのものなので意見はありません」
しらっと自分を圏外に置く姿勢に、他の三人は口を噤んだ。
ずるいやん。
けど私は最大限に頭をひねって、案を絞り出してみる。
「はい」
「里ちゃん」
再び手をあげると、今度は胡散臭そうに指さされた。
どうやらさっきの質問で、議長の信頼を失ってしまったようだ。
ちょっと訊いてみただけなのに。
「……汐が人型になって神社でバイトをしてみるというのはどうでしょうか」
「……」
「イケメン神主がいると評判になって参拝者が増えるかも」
「発想が水商売じゃないの!」
「会いに行けるアイドル系のつもりだったんですけど……」
「神様に会いに行けて、どうする」
アイドルとは違うのよ的に言い切られて、私はしょんぼりと肩を落とす。
悪くないアイディアだと思ったんだけどな。
「……働きたくないでござる」
「……」
どこでそんな言葉を覚えたの、汐。
無感動な顔つきでさらりと言われ、私は幼稚園で悪い言葉を覚えてくる子供を持つ母親くらい動揺する。
神様は、そんな言葉使っちゃいけません。
とはいえ猫が本性なのだから実際に勤勉なタイプではないよね。
汐がバイトにきたら、蓮川さんが気を使って自分で掃除とか始めてしまいそうだ。
「ダメか……」
「駄目よね……」
私と松里さんは溜息をついた。
汐の隣では氏康さんが、ちまきを食べながらこっそり、ばいとってなんだ、と汐に訊いていた。
そこからか。そこからだったか……。
神様たちは、どうにもアテにならなさそうだった。
「あとさあ。参拝者も増えればいいなとは思うけど。一番増やしたいのは、村に住もうと思ってくれる人たちなのよね。……そういう案はないかな」
む、難しい……。
通勤とか、そういうことがネックになって来るものね。
「村そのものを観光目的で来てもらえるようにできれば、その仕事の関係で住んでくれる人も増えそうだけど……」
「観光か……。それっぽいもの、特にないしね」
松里さんは憂鬱そうに呟いて、それぞれにちまきとプリンを食べている神様ズを見た。
「……あんたたち、何か特技とかないの?」
汐と氏康さんが顔を見合わせる。
そして首をひねった。
「──猫になれる」
「──犬になれる……」
「ごめん、訊いたアタシが馬鹿だったわ」
松里さん、だんだんと言葉に遠慮がなくなっていくなあ。
私は苦笑いしながら、テレビの方を見た。
さっきまで汐がゲームをしていたため、今はネット回線に繋がっていて、何かの動画が映っている。
「ユーチューバーになるとか、ないかなあ……」
困った挙句の私の呟きに、松里さんがきょとんと瞳を瞬きさせる。
「ユーチューバ―……」
おうむ返しに呟かれた言葉に、汐が首を傾げた。
「ユーチューバーとは、なんだ」
「湯の通るホースのことだろう」
氏康さんが真面目な顔をして答えてたけれど、どこからつっこめばいいものか。
……チューブって言いたいのかな……。
だが私たちの与太話を一切スルーして、松里さんが言った。
「……それ、いいかも。ユーチューバ―」
「え……」
「ユーチューブで、村の紹介をするのよ。それなら、この二人でもできるでしょ」
え、この、湯の通るホースとか言ってる神様たちに、そんな真似をさせられると思ってるの?
……無理でしょ。
私と汐と氏康さんは、困惑して松里さんを見つめた。
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