魔法トリコロール~1.ショコラ・マジック

夢のもつれ

文字の大きさ
2 / 4

3.友人

しおりを挟む
 美原風香さんの『〈リレー小説!〉魔法トリコロール~1.ショコラ・マジック』の「2.学園」からの続きです。
 https://www.alphapolis.co.jp/novel/452889842/330461523

    **************


 昼休み。無料の食堂でヴァロはトレーを片手に空いている席を探していた。

「こっち空いてるぞ」

 少し大柄でむすっとした顔の同級生が声をかけてくれたのでいそいそと隣に行く。

「ありがとう。お邪魔します」
「おう」

 お互い黙って食べ始める。ヴァロは沈黙が辛いと思いながらも話題を見つけられず黙って食べていた。食べ終わってもまだお互い無言で、そろそろ教室に戻ろうと思ったその時だった。

「お前はなんでこの学園に来たんだ?」

 唐突な問いに言葉が詰まる。理由? ヴァロには人に言えるだけの理由がなかった。普段であれば見栄を張って一流の魔法使いになるためとか言えたのだろうが、この少年の前ではそんな気持ちも失せてしまって正直に答えることにした。

「教会の神父様に勧められたんだ」
「そうか」

 相手はそれっきり黙ってしまった。何か怒らせてしまったのかと思い慌てたが、そうでないことはすぐにわかった。

「俺も似たような感じだ。家庭教師に勧められてな。家を継ぐわけでもないんだから気にすることはないと思ったんだがな」
「そうなんだ。似たもの同士だね」
「友人にならないか?」

 その言葉に驚くと同時に喜びが湧き上がる。

「もちろん!」
「俺の名前はトゥーリだ。同じクラスだ。よろしくな!」
「こちらこそよろしく!」

 握手を交わす。ヴァロに心強い友ができた瞬間だった。
 二人で肩を並べて教室に戻ると午前中の嫌な雰囲気から一転、彼らには純粋な好奇心の目が向けられた。

「なんか居心地悪いね」
「まあ、悪意の視線よりはいいんじゃないか? 興味を持ってくれた方が話しやすいだろ」

 彼はぶっきらぼうに言った。少年は肩をすくめて自分の席についた。
 
 午後の授業は『魔法実技』だった。その授業の最中、彼は度々魔法を見せるよう言われた。教師が彼の魔法をいたく気に入ってしまったようだ。彼が魔法を使う度に女子は悲鳴をあげ、男子はおもしろくない雰囲気が出てきた。

 本人に自覚はないが少年は真っ黒な髪に真っ黒な目で、この世界ではなかなかいない見た目をしていたし、目が大きく鼻が高い、整った顔立ちをしていた。しかも魔法も抜群なのだから女子が気になるのは当然だった。

「ねえねえ、君すごいんだね! 良かったらあたしたちに魔法教えてよ」

 ヴァロを好奇心満々の女子が取り囲む。

「僕、教えるのは苦手なんだ」
「じゃあさ、一緒にお茶しない?」
「ごめん、マナーとかわかんないや」

 女子とそんな会話を延々と繰り返すハメになったヴァロは、授業が終わる頃にはぐったりしていた。

「大丈夫か?」
「うん、ちょっと疲れただけ……」

 机に伏せているヴァロにトゥーリが心配そうに声をかけた。

「僕、女の子苦手だってわかったよ」
「意外だな。てっきりちやほやされて嬉しいのかと思った」
「僕をなんだと思ってるんだい? 全然嬉しくなんかないよ」
「すまない」

 友人らしい会話に少し心が浮き立ちながらも、精神的に疲れているのかなかなか元気が出ない。

「なんでだろうね。女の子にあんなにアピールされても嫌という気持ちの方が強いんだよね」

 少年は不思議だった。記憶を失う前に女子と嫌な出来事でもあったのだろうか?

「まああんなに群がってきたらな。お疲れ様」
「ありがと」

 少年はできる限り女子とは関わらないと決めたのだった。しかしながら、世の中はなかなか思いどおりにはいかないものだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...