16 / 48
第16話:ウォルトン家のメイド8
ウォルトン家のメイドたちに死の未来が待っていることを告げると、怒りを表すように食いついてきた。
「どうして私たちが旦那様に殺されなければならないのよ!」
「いい加減なことばかり言わないで。親身に働いているのに、そんなの絶対にあり得ないわ!」
必死に反発するが、彼女たちは間違いなく殺される。敵であるローズレイ家の屋敷も知らされていないなど、ウォルトン家から捨て駒扱いされていると考えるべきだ。
「随分と夢を見ているのね。ローズレイ家に捕まったと知られれば、情報が漏れたと考えるのが普通よ。口封じのために殺すのが一般的でしょう。今まで急に退職した人、見たことないの?」
血の気がサーッと引くように顔色が変わる彼女たちを見れば、ウォルトン家の黒い噂が本物だと確信する。
この子たちが大した情報を持っていなかったとしても、有益な情報に繋がる可能性は高い。そのため、どんな捨て駒でも口封じが必要なのだ。
徹底的に情報漏洩を押さえ込んだが故に、今までローズレイ家でも尻尾がつかめなかった。よって、この子たちは重要参考人ともいえる。
「もしあなたたちが大事にされていたのなら、王城で過酷な環境に追い込まれていないわ。ウォルトン家の屋敷の中で高みの見物をしていたでしょうね。こんな夜まで働かされるなんて、あり得ないと思うの」
おそらく、ウォルトン家も焦っているはず。いま最も勢いのあるローズレイ家を短期間で追い込もうとすれば、無理な手が多くなる。だから、捕まっても影響の少ない庶民のメイドに噂を流させた。
国民の支持を得にくいウォルトン家にとっては、リスクを冒してでもローズレイ家の株を下げたかったのだろう。
しかし、他者を陥れる目的のために噂を流し続けるなど、普通の人は罪悪感が生まれる。ウォルトン家のメイドたちも心のどこかで疑問に思っていたのか、少しずつ私の話を受け入れ始めていた。
「ずっと……旦那様に仕えてきたのよ」
「私だって、グレース様のためにずっと仕えてきた。でも、未だに名前すら覚えてもらってない……」
だんだん声が小さくなっていく彼女たちは、まだ良心的な心が残っていると思う。
自業自得な部分があるとはいえ、犯罪に手を染めた自覚があるから、少しずつ違和感に気づくのだ。
だからこそ、この子たちはまだやり直せる。
「答えを聞かせてもらうわ。罪を償い、ローズレイ家に忠義を誓うのか。それとも、ウォルトン家に殺される未来を選ぶのか」
二人ともほとんど心の中で答えは出ていると思うが、主君を裏切る行為になるため、互いに顔色をうかがい合っている。
しかし、呑気に考える暇はない。二人が罪を償う気があるのなら、協力してもらいたいことがあった。
「落ち着いて聞いて。二十分後に、ウォルトン家の監視の目が緩むの。そのタイミングで帰れば、ここに来たと気づかれることはない。また明日から何気ない日常生活に戻れるわ」
「嘘よ。旦那様は気づかれることはないって……ハッ!」
監視する者の存在を肯定してしまったメイドは、息を呑んだ。しかし、誤魔化すような様子もなく、ゆっくりと息を吐く。
ローズレイ家を陥れる噂を流すだけでなく、監視行為まで行うのは、明らかに貴族のマナー違反だ。それがわかっているから、本当にウォルトン家で働いていいのか、彼女たちもわからなくなっているのだろう。
「あまりローズレイ家を舐めないことね。いつどこで誰が監視しているのか、すでに調べはついているの。あなたたちがここに来たのも、ちょうど監視の目が緩む時間に調整しているわ」
正確にいえば、予めルイスに監視の目が緩む時間を伝え、屋敷に案内させただけ。ローズレイ家の私兵にもフォローをお願いしておいたので、間違いなく気づかれてはいない。
「ほ、本当にまだ知られていないの?」
「ええ、約束する。私が口を割らない限り、知られることはないわ」
「罪を償えば……私たちの身は保証してくれるのよね?」
「当然よ。ローズレイ家は罪を裁くけれど、決して人の命を奪いはしない。あとは、あなたたち次第ね」
崖っぷちに追い込まれた二人のメイドからは、もう反抗する様子が見られなかった。
このまま守秘義務違反で犯罪者になるくらいなら、悔い改めようと反省しているように見える。
「罪を償います」
「私も償います」
ローズレイ家の仕事で色々な人を見てきたけれど、彼女たちみたいなタイプは大丈夫だろう。ウォルトン家との繋がりを断ち切り、しっかり罪を清算してほしい。
ただし、ローズレイ家に忠義を尽くすことが条件であり、罪を重ねるのであれば、許すつもりはない。
「じゃあ、本当にローズレイ家に忠義を尽くすのか、試させてもらうわね。絶対に裏切らないことをお勧めするわ」
「どうして私たちが旦那様に殺されなければならないのよ!」
「いい加減なことばかり言わないで。親身に働いているのに、そんなの絶対にあり得ないわ!」
必死に反発するが、彼女たちは間違いなく殺される。敵であるローズレイ家の屋敷も知らされていないなど、ウォルトン家から捨て駒扱いされていると考えるべきだ。
「随分と夢を見ているのね。ローズレイ家に捕まったと知られれば、情報が漏れたと考えるのが普通よ。口封じのために殺すのが一般的でしょう。今まで急に退職した人、見たことないの?」
血の気がサーッと引くように顔色が変わる彼女たちを見れば、ウォルトン家の黒い噂が本物だと確信する。
この子たちが大した情報を持っていなかったとしても、有益な情報に繋がる可能性は高い。そのため、どんな捨て駒でも口封じが必要なのだ。
徹底的に情報漏洩を押さえ込んだが故に、今までローズレイ家でも尻尾がつかめなかった。よって、この子たちは重要参考人ともいえる。
「もしあなたたちが大事にされていたのなら、王城で過酷な環境に追い込まれていないわ。ウォルトン家の屋敷の中で高みの見物をしていたでしょうね。こんな夜まで働かされるなんて、あり得ないと思うの」
おそらく、ウォルトン家も焦っているはず。いま最も勢いのあるローズレイ家を短期間で追い込もうとすれば、無理な手が多くなる。だから、捕まっても影響の少ない庶民のメイドに噂を流させた。
国民の支持を得にくいウォルトン家にとっては、リスクを冒してでもローズレイ家の株を下げたかったのだろう。
しかし、他者を陥れる目的のために噂を流し続けるなど、普通の人は罪悪感が生まれる。ウォルトン家のメイドたちも心のどこかで疑問に思っていたのか、少しずつ私の話を受け入れ始めていた。
「ずっと……旦那様に仕えてきたのよ」
「私だって、グレース様のためにずっと仕えてきた。でも、未だに名前すら覚えてもらってない……」
だんだん声が小さくなっていく彼女たちは、まだ良心的な心が残っていると思う。
自業自得な部分があるとはいえ、犯罪に手を染めた自覚があるから、少しずつ違和感に気づくのだ。
だからこそ、この子たちはまだやり直せる。
「答えを聞かせてもらうわ。罪を償い、ローズレイ家に忠義を誓うのか。それとも、ウォルトン家に殺される未来を選ぶのか」
二人ともほとんど心の中で答えは出ていると思うが、主君を裏切る行為になるため、互いに顔色をうかがい合っている。
しかし、呑気に考える暇はない。二人が罪を償う気があるのなら、協力してもらいたいことがあった。
「落ち着いて聞いて。二十分後に、ウォルトン家の監視の目が緩むの。そのタイミングで帰れば、ここに来たと気づかれることはない。また明日から何気ない日常生活に戻れるわ」
「嘘よ。旦那様は気づかれることはないって……ハッ!」
監視する者の存在を肯定してしまったメイドは、息を呑んだ。しかし、誤魔化すような様子もなく、ゆっくりと息を吐く。
ローズレイ家を陥れる噂を流すだけでなく、監視行為まで行うのは、明らかに貴族のマナー違反だ。それがわかっているから、本当にウォルトン家で働いていいのか、彼女たちもわからなくなっているのだろう。
「あまりローズレイ家を舐めないことね。いつどこで誰が監視しているのか、すでに調べはついているの。あなたたちがここに来たのも、ちょうど監視の目が緩む時間に調整しているわ」
正確にいえば、予めルイスに監視の目が緩む時間を伝え、屋敷に案内させただけ。ローズレイ家の私兵にもフォローをお願いしておいたので、間違いなく気づかれてはいない。
「ほ、本当にまだ知られていないの?」
「ええ、約束する。私が口を割らない限り、知られることはないわ」
「罪を償えば……私たちの身は保証してくれるのよね?」
「当然よ。ローズレイ家は罪を裁くけれど、決して人の命を奪いはしない。あとは、あなたたち次第ね」
崖っぷちに追い込まれた二人のメイドからは、もう反抗する様子が見られなかった。
このまま守秘義務違反で犯罪者になるくらいなら、悔い改めようと反省しているように見える。
「罪を償います」
「私も償います」
ローズレイ家の仕事で色々な人を見てきたけれど、彼女たちみたいなタイプは大丈夫だろう。ウォルトン家との繋がりを断ち切り、しっかり罪を清算してほしい。
ただし、ローズレイ家に忠義を尽くすことが条件であり、罪を重ねるのであれば、許すつもりはない。
「じゃあ、本当にローズレイ家に忠義を尽くすのか、試させてもらうわね。絶対に裏切らないことをお勧めするわ」
あなたにおすすめの小説
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
兄の婚約解消による支払うべき代償【本編完結】
美麗
恋愛
アスターテ皇国
皇帝 ヨハン=シュトラウス=アスターテ
アスターテ皇国は周辺国との関係も良く、落ち着いた治世が続いていた。貴族も平民も良く働き、平和で豊かな暮らしをおくっている。
皇帝ヨハンには
皇妃に男の子が一人
妾妃に女の子が一人
二人の子どもがある。
皇妃の産んだ男の子が皇太子となり
妾妃の産んだ女の子は降嫁することが決まっている。
その皇女様の降嫁先だった侯爵家の
とばっちりを受けた妹のお話。
始まります。
よろしくお願いします。
【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。
As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。
愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
番外編追記しました。
スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします!
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。
*元作品は都合により削除致しました。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
聖女であるルルメアは、王国に辟易としていた。
国王も王子達も、部下を道具としか思っておらず、自国を発展させるために苛烈な業務を強いてくる王国に、彼女は疲れ果てていたのだ。
ある時、ルルメアは自身の直接の上司である第三王子に抗議することにした。
しかし、王子から返って来たのは、「嫌ならやめてもらっていい。君の代わりはいくらでもいる」という返答だけだ。
その言葉を聞いた時、ルルメアの中で何かの糸が切れた。
「それなら、やめさせてもらいます」それだけいって、彼女は王城を後にしたのだ。
その後、ルルメアは王国を出て行くことにした。これ以上、この悪辣な国にいても無駄だと思ったからだ。
こうして、ルルメアは隣国に移るのだった。
ルルメアが隣国に移ってからしばらくして、彼女の元にある知らせが届いた。
それは、彼の王国が自分がいなくなったことで、大変なことになっているという知らせである。
しかし、そんな知らせを受けても、彼女の心は動かなかった。自分には、関係がない。ルルメアは、そう結論付けるのだった。