どうして、ただの女子高生が魔王と戦うことになるわけ!?

小松広和

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第一章 私は絶滅危惧種

第一話 余計な選択

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 私はいつも通りの道を家に向かって歩いていた。
「たまには違う道を通って帰ろうかなぁ」
今日の私は上機嫌。なぜかって? それは今日で定期テストが終わったからなのです。もう暫く勉強しなくていいんだ♪

「う~ん、爽やか風だよね」
私は誰に話すでもなく大きく伸びをしながら言った。今は十月。暑い夏も終わって過ごしやすくなってきた頃。何か全てが嬉しいな。

 今日は少し遠回りをして帰ろうかな。何かすぐには帰りたくない気分だし。私は普段なら思いもしない選択肢を選んでしまった。

 へえ、こんな所にこんなお店があったんだ。あれ? この道通ったことないよ。何か不思議な感じ。私はプチ冒険の旅をエンジョイしながら町を見て歩いた。でも、この妙なハイテンションが良くなかったのかもしれない。

 私が初めて発見したような路地裏を歩いていた時、事件は起こった。一匹の白猫が私の行く道を塞いだのだ。別に猫なんだから避けて通れそうなもんだけど、この子は少し違った。私が右を通ろうとすると猫もそちらの方向に移動し、左に行けば同じ方向に移動する。

「困ったわね」
「ニャー」
「猫さん、通してください」
猫が言葉を理解できるとは思えないが、私はにっこりと微笑んで頼んでみた。
「それは無理な相談だ」
「え!?」
私は慌てて周りを見回す。誰もいない。

「まさかと思うけど、猫さん話したりしてないよね?」
「話したよ。君に大切な用があるからね」
きゃー!
「う、嘘でしょ! 猫が話してる!」

 私は慌てて逃げようと回れ右をしたが、なぜか体が動かない。
「えーー! どういうこと?」
「どうして逃げるんだ?」
「この状況で逃げない人なんていないわよ!」

「猫が喋ったらそんなに不思議かい?」
「思いっきり不思議よ!」

「僕は君にお願いがあって来たんだ」
「嫌よ!」
「どうして聞く前から断るんだ?」
「こんな展開、陸な話じゃないに決まってるわ」
「そんなことはないよ。僕の世界に来て魔王を倒して欲しいだけさ」
「やっぱり陸な話じゃなかったわ!」       

「君には特別な力を感じるんだ。魔王を倒せるのは君しかいない」
「どうしてそうなるのよ! 何もできない普通の女子高生が魔王を倒せるわけないでしょ!」

「君なら大丈夫だ。僕と契約し・・」
ムギュ。
「どうして、いきなり押し潰すんだい?」
「ご、ごめんなさい。とてもややこしくなりそうなことを言い始めたから、つい」
「それにしても凄い能力だ。僕の金縛りの魔法を一瞬で解いてしまうんなんて」
「これは能力なんかじゃないよ。せっかく始まった小説を一話で終わらせたくないという一心で思わずしたことなんだから」
「理由なんてどうでもいいさ。君が魔王を倒してくれれば全ての人が助かるからね」

 私は周りを見回して大声を上げた。
「誰か助けて!」
しかし、誰も返事をしてくれない。こんなに大きな声を出したのに誰も気付かないの? 
「大きな声を出しても無駄だよ。ここはもう閉鎖空間にしてある。君の声は誰にも聞こえないからね」
「何でこんなことになるのよ」
それにしても、どうしてこんな細い路地裏を通ろうと思ったんだろ? 考えてみれば女の子が人目に付かない道を通るのって危険だよね。

 私は座り込んで泣き始めた。
「どうして泣いてるんだ?」
「当たり前じゃない。いきなり喋る猫に異世界で魔王と戦えって言われたら誰でも泣くわよ」
「ああ、紹介が遅れたね。僕の名前はポチ。異世界からの使者さ」
「猫・・・・だよね?」
「猫がポチだったら変かい?」
「普通ポチは犬の名前だから・・・・」
「固定観念にとらわれたら間違った道を選択して失敗することになるよ」

 後になってから考えると、この言葉って凄く合ってるような気がする。
「君の名前は雨宮麗華だね」
「ど、どうして私の名前を知ってるの?」
「君のことは何だって知ってる。好きな食べ物はイカの塩辛、嫌いな食べ物はイチゴのショートケーキ、趣味は筋トレとゴキブリ収集だろう?」
「全然違うわよ!」

 やがてポチは空を見上げると、
「時間だ」
とぼそりと言った。
「僕はこの世界には長くいられないんだ。じゃあ、そろそろ異世界に行くよ。準備はいいかい?」
「じゅ、準備って何? わ、私絶対に行かないわよ!」
ポチの後ろの景色が歪み始めた。
「ちょっと待ってよ!」
ポチが目を閉じ呪文のようなものを唱え始めると、歪みがどんどん大きくなっていく。
「助けてー! お父さーん!」

 景色が元に戻ると見たこともない世界が目の前に広がった。
「う、嘘でしょ?」
「ここが異世界だよ。ゲームの世界とほぼ一緒さ」
「私ゲームなんかやったことないからわからないよ」
「ゲームをやったことないのかい? もしかして君は絶滅危惧種なのかもしれないね?」
「私を保護動物みたいに言わないで!」

 見たこともない町に見たこともない人達。みんな変な服を着て武器を持っている。そしてほぼ全員がなぜか私を見てくる。何なのこの世界は。
「どうしてみんな私を見てるの?」
「それは君が見たこともない珍しい服を着ているからだよ」
そうか。私、制服のままだった。

「とりあえず、この世界が気に入ったみたいだね」
「何を根拠にそんな言葉が出てくるわけ!? 早く元の世界に帰してよ!」
「残念だけどそれはできない相談だ」
「どうしてよ」
「君が元の世界に帰るってことは契約違反・・」
ムギュ。

「君は『契約』って言葉を聞くといきなり強くなるんだね」
「ほっといてよ!」

 それにしても変な町。猫と大声で会話してても誰も反応しない。そう言えばみんな何らかの生き物を連れているような。
「気が付いたんだね? 僕たち話す生き物はガイダーと言って冒険の案内役をするんだ。僕の言う通りにしていれば冒険は成功するというわけさ。わかるかい?」
別に成功したいわけじゃないから、どうでもいいけど。

「じゃあ、早速魔王を倒しに魔界城に行こうか」
「いきなり倒せるわけないでしょ! あなたの案内って本当にあってるの?」
こうして私の冒険は始まった。いや、無理矢理始めさせられた。
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