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第一章 私は絶滅危惧種

第十四話 転職

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   私は胸を弾ませて隣町に向かった。距離は15キロと少し遠いが魔法の絨毯があれば余裕ね。で、なぜ隣町に行くのかっていうと教会があるからなのよね。そこで魔法使いに転職してもらうの。現在の『小市民』とはお別れよ。

「もうすぐ着くよ」
「本当!」
目の前に大きな町が見えてきた。私の住んでいる町よりも大きいみたい。

「あれが教会だよ」
私の目の前には少し大きな建物が見える。レンガ造りで屋根には十字架があって、入り口の手前に赤い鳥居があって・・・・。あれ? 何かおかしくない?

「中にいるお坊さんに『魔法使いになりたい』って告げるんだ」
「どうして赤い鳥居があるの?」
「そういうものだよ」
「どうして中にいるのがお坊さんなの?」
「おかしいかい?」
「思いっきりおかしいわよ。普通、教会にいるのは神父さんでしょ!」

 ポチはやれやれといった感じで、
「この異世界は無神論なんだ。神という存在は信じられていないからね。どうでもいいんだよ」
何ていい加減なの? だったら教会を作る意味なんてないのに。まさか変な人が出てこないよね?

 私は恐る恐る教会に入った。中は結婚式場でよく見かける景色が広がっていたが、正面には大きな仏像が飾られている。そして、その目には袈裟姿のお坊さんがいた。

「あのう、私魔法使いになりたいんですが」
なぜか小さめの声で聞く。
「転職だね」
「はい」
「今の職業は?」
「小市民です」
「レベルは?」
「10です」

 お坊さんは俯いて何かを考えている。
「本当に転職していいかね?」
「え? なぜですか?」
私は不安を抱きながら聞いた。何を言われるんだろう。

「覚悟はできているね?」
「覚悟?」
「言っておくが、転職をするとレベル1からやり直しになる。それでもいいかな?」
「はい、いいです」
「小市民のままレベル20になると少しのことで幸せを感じることができる『小市民の喜び』を取得できるがいいかね?」
「少しの幸せって何ですか?」
「例えば卵を割ったら双子だったとか、何気なく時計を見たらぞろ目だったとか」
「今すぐ転職をお願いします!」

 お坊さんは巾着袋を取り出した。更に商店街のくじ引きで見かけるようなガラガラ抽選器を取り出して置いた。どういうこと?
「この袋の中には50色の玉が入っている。そして魔法使いの玉は赤色だ。赤が出れば魔法使いになれる」
「確率悪すぎでしょ!」

 しかし、お坊さんは私のツッコミなど無視して玉をガラガラ抽選器に入れている。
「さあ。回しなさい」
こんなの当たるわけないよ! 言えば魔法使いになれるんじゃなかったの?
「さあ、早く」
うう~。私は半ばやけくそでガラガラ抽選器を回した。

 ポン、コロコロ。
「え? 赤?」
抽選器から出てきたのは赤い玉だ。やったー! 魔法使いになれるよー!

「ふむ、これはピンクじゃのう」
「ええー!」
「今日からお主の職業はバニーガールじゃ」
「ええーーー!!!」
「良かったね麗華。早速バニーガールの衣装を買いに行こう!」
「ちょっとー! 絶対嫌だからね!」
こうして私に新たな不幸が押し寄せるのであった。私の人生って一体・・・・。
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