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第二章 旅立ち

第三十話 幸運の壺

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第三十話 幸運の壺

 私達は早めの宿に入り、私はクレアさんに貰った壺を部屋の隅に置いた。
「麗華さん、この壺は部屋の南南西に置くと物凄い幸運が舞い込むんですよ」
「本当ですか?」
 私達は早めの宿に入り、私はクレアさんに貰った壺を部屋の隅に置いた。
「麗華さん、この壺は部屋の南南西に置くと物凄い幸運が舞い込むんですよ」
「本当ですか?」
私はクレアさんの言う通り部屋の南南西を捜して壺を置いてみた。

 そこへアイラさんが勢いよく入ってくる。
「宿のご主人からスイーツを貰ったわよ。みんなで食べましょう」
「やったー!」
私は思わずに声を上げた。甘い物って大好きなんだもん。

 全員が貰った箱を覗き込む。
「ワッフルだー! 私ワッフル大好きです!」
「よかったね。麗華ちゃん」
幸運が舞い込むって本当なんだ。でもこれって物凄い幸運なのかな?

「あっ、一つ余ったわ。麗華ちゃんが食べていいよ」
「え? 本当ですか!? ありがとうございます」
ここまで来ると物凄い幸運かも。

 その後も私のプチ幸運は続いた。
「卵割ったら双子だった!」
「麗華ちゃんの明日の運勢は最高ですよ」
「本当ですか? クレアさん」
「今夜は流れ星が見えるらしいよ」
「私流れ星って大好きです。何かロマンチックだし」
今日は本当にいい日になったなって感じ。クレアさんから貰った壺って本当に幸運の壺だったんだ。クレアさんありがとうございます。

 そして今日最大の幸運が私に舞い込む。
「お邪魔しますよ」
僧侶の衣装をまとったおじいさんがお供の者を従えて私達の部屋に入ってきた。
「今夜は星流祭。現在この村に居る全ての人を対象に選ばれし者を占いました。その結果そこに居るお嬢さんが今年の適任者と出たのです。ぜひ星誕の儀式を受けてください」
「え? 何? 何なの?」
私の頭は?マークでいっぱいだ。

「あなたは選ばれし者です。この儀式を受けていただいた暁には『ドラゴンミサイル』の魔法を得ることができましょう」
「え? 対ドラゴンの最強魔法のですか?」
勇者様が珍しく慌てている。
「凄いじゃない麗華ちゃん」
「嘘みたいです」

「受けていただけますか?」
「もちろんです!」
「では準備をしますので今暫くお待ちください」
「はい、よろしくお願いします」
私はウキウキ気分で明るく答えた。

 これで私もパーティーのみんなに迷惑を掛けないで済むんだ。何か嬉しいな。私の魔法が役立つなんて夢のよう。私は思わず近くにあった幸運の壺を優しく撫でた。
「あなたのおかげだね。幸運をありがとう。そしてこれからもお願いします」
パリン!
「え? ええーーー! つ、壺が割れた!?」
「これは見事に割れたわね」
「どうしてー!? 強力なモンスターが叩いてもびくともしなかったのに?」

「お待たせしました」
老人はたくさんの道具を持って戻ってきた。
「まずは体を清めていただきましょう」
「あ、はい」
「ここに150℃のお湯を用意しました。このお湯に10分に浸かっていただきます」
「火傷を通り越して死にます!」
「あなたは選ばれし者です。きっと大丈夫でしょう」
「何を根拠に言ってるんですか!? ていうか何で水が100℃を超えてるんですか?」
「特殊な魔法を掛けてありますのじゃ」

 ドラゴンミサイルの魔法は捨てがたいけど死んだら元も子もないわ。
「私水着も持ってないし無理です」
「いえ、これは神聖な儀式です。衣類は一切身につけてはなりませぬ」
「絶対に嫌です!」

 幸運の壺が割れた途端不幸になる私なのでした。
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