タイムトラベル同好会

小松広和

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第2章 謎の転校生

第11話 歴史が動く日

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 その夜、俺は布団に潜り、ない知恵を振り絞っていた。
 萌の言葉はどう考えても腑に落ちない。俺に一目惚れするなど正気の沙汰ではないからだ。何か目的がありそうだが何も思い当たることがない。俺の家が大金持ちだったら別な話だが、超一般庶民である。そして俺が将来有望なエリートというわけでもない。でも、何かなければ萌はあのような態度は取らないだろう。

 これは俺の頭脳ではどうすることもできない範囲の問題だ。とはいえ胡桃に相談するのも怖い。部室の工具を全部隠した上で言葉に気を付けてから話さなければならない。なにせ萌の話をすると異常に怒り出すからな。

 次の日、部室では歴史的に記念すべき出来事が起ころうとしていた。
 そう、遂にその時は来たのだ。今までの苦労を振り返ると目に熱い物が込み上げてくる。タイムマシンの完成だ! 自分で言うのも何だが、今回の7号機は完璧なできである。遂に歴史は動いたのだ。

「何上向いて泣いてるのよ」
胡桃は人ごとのように言う。まあ、人ごとなんだろうけど。
「遂に完成したんだ!」
俺の声は大きく弾んでいる。
「何が完成したのよ?」
「タイムマシンだ。タイムマシンが完成したんだ。お前は歴史を変える瞬間に立ち会うことができたんだ。感謝しろよ」

 胡桃は深くため息をつき、
「これで何回同じ会話をするのかしら? ショックを受ける前に教えてあげるけど、そのタイムマシンも失敗に終わるわよ」
と、落ち着いた声で言いやがった。
「ふん、何とでも言え。今回は真剣に完璧だ。今から試運転をするからよく見ておけ」
「勝手になさい」
胡桃は俺から視線を離すと手に持っていた書物を開いた。

「おい、見ろよ! まずは試運転だ!」
俺はタイムマシン七号機の中に入り釦の確認をした。
「ちょっと何してるのよ。まさか自分で試そうって言うんじゃないでしょうね」
「大丈夫だ。外からでも操作できるように設定しているところだ」
俺はタイムマシンから顔を出して言った。

「あの生意気な一年生が来ないかな」
「いきなり人体実験をするつもり?」
「冗談だ」
「びっくりしたわ」
冗談だとは言ったものの、あわよくば人体実験をしようと思っていたのだが。

「よし、まずはぬいぐるみで試してみるか」
これは勿論計画的なものではない。たまたま熊のぬいぐるみが目に入ったからだ。俺はぬいぐるみを椅子に座らせシートベルトをしっかりと締めた。
「これで準備完了だ」
「もう、止めなさいよ。爆発しても困るし」
「するわけねえだろ!」
「真歴の作ったものだから分からないわ」
「俺が作った物で爆発した物があったか?」
とは言ったものの、考えてみれば二度ほど煙を出して慌てて水を掛けた物があったような気もする。あまり深くは考えないでおこう。

「さてどの時代に飛ばすかが問題だ。このようなぬいぐるみなど日本にはなかったはずだ。下手な時代に飛ばして大騒ぎになっても困る。ここは一つ恐竜時代にでも飛ばすか」
「あのね。ぬいぐるみどころかタイムマシンを見た時点で大騒ぎでしょ」
俺は胡桃の言葉など無視して釦をいくつか押した。
「さあ、行くぞ」
「本当に大丈夫なの?」
胡桃はいつの間にか入り口付近に避難している。

 そんなことは気にせず俺は勢いよく起動釦を押した。
  タイムマシン七号機は大きな音を立てて動き出す。凄い振動だ。そして一分の後マシンは静かに止まった。
「あれ? このマシン消えないのね」
胡桃は嫌味っぽく言う。

 だが、その言葉は想定済みだ。
「ああ、これは中の人物だけが過去に行けるマシンなんだ」
「へえ、でもそれって過去に行ったら二度と戻ってこれないってことじゃない?」
「な・に?」
俺の目が点になる。
 おお!!! 何という盲点。これは気付かなかった。折角過去に行けても戻ってこれなかったら意味がないではないか!

「バカだとは思っていたけど、ここまでだとは思わなかったわ」
「うるさい!」
しかし、実験結果が気になる。俺はそっとタイムマシン七号機を覗き込んだ。
 ない! ぬいぐるみがなくなっている。実験成功だ!!
「おい、ぬいぐるみがなくなっているぞ。過去へ行ったんだ」

「違うわよ」
胡桃は床に落ちたぬいぐるみの顔を拾って言った。
「どういうことだ?」
「タイムマシンの壁を見てみなさい」
俺は言われた通りマシン内部の壁を見た。あちらこちらに綿や布切れが貼り付いている。
「分かった? 椅子を高速回転で回したからぬいぐるみが破れただけよ」
「そ、そんな・・・・」
俺はかなり落ち込んだ。また失敗なのか。

「この前も言ったけど、いくら高速で回転させても過去へは行けないの。分かる?」
「そうか。このマシンは南極点で使わないと意味がねえんだ」
「違うわよ! そういう問題じゃないから!」
「じゃあ、どういう問題だ?」
「もういい。真歴に話すの疲れたわ」
失礼な奴だ。毎回そうだが胡桃は俺の作るタイムマシンをけなすだけだ。確かに失敗作ばかりだが、もう少し前向きに評価していいんじゃないだろうか。胡桃は絶対教師にはなれないタイプの人間だと思う。

 俺はがっかりとしながらタイムマシン七号機を部屋の隅に移動させた。これでまた部室が狭くなる。生意気な一年生が粗大ゴミに出すなどと言い出さなければいいのだが。
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