タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
14 / 45
第2章 謎の転校生

第14話 未来人へのシグナル

しおりを挟む
「離れなさいって言ってるでしょ!」
「嫌よ! どうしてあなたの言うことを聞かなくはいけないの!?」
「いい加減にしなさいったら!」
ついに胡桃が実力行使に出た。無理矢理俺たちを離そうと俺と萌の間に体をねじ込ませてきたのである。しかし、萌も負けてはいない。今まで以上に俺の腕に強くしがみつく。はっきり言って腕が痛い。俺がいくら硬派だといえ、学校で評判の可愛い女の子に抱き付かれたら悪い気はしない。だが、今回はそんな悠長なことを言っている場合ではない。とにかく、このままでは俺の腕はよくて脱臼、悪けりゃちぎれてしまうだろう。

 その時、萌がいきなり俺の腕を離した。当然、俺と胡桃は勢い余ってしりもちをついてこけてしまった。
 勝者胡桃! いや待てよ。大岡裁判的には萌の勝ちなのか?
 俺と胡桃が立ち上がると胡桃はさっと俺と萌の間に立って両手を広げた。

「どういうつもり?」
「もう真歴に触れさせないわ」
「ふふふ、大きく出たわね」
胡桃は歯を食いしばるように両手を広げ続けている。

「力ずくであなたをのけることもできるのよ」
「やれるものならやってみなさいよ」
本気で言ってるのか萌。胡桃はアフリカ象三頭と綱引きができるほどの怪力なんだぞ。嘘ですけど・・・・。

 て言うかこの状況って、まさかとは思うが二人の女性が俺を取り合っている構図なのか? 硬派の俺にとっては関係のないことだが、人によってはこれ以上ない幸せな状況なのでは? 恐らく一生こんな状況を経験しない男の方が多いと思う。それを考えると今の俺は貴重な体験をしていることになる。
「真歴! 今度この女に触れたら死を覚悟しなさい!」
これが胡桃でなかったら、俺も幸せを痛感できたのかも知れない。

「あら? 宮本君は萌に抱きつかれてる方が嬉しそうだけど」
「何ですってー!!」
 まさに一触即発の中、突然胡桃の鞄から警報のような音が流れた。
『ウィーン、ウィーン』
「何この音?」
胡桃は慌てて鞄を開けた。
「この定期券‥‥」
音の主は例の定期券だった。

「どうなってるのよ?」
定期券は赤く光り警報音を鳴らし続けている。暫く音沙汰がなかったのに、急にどうしたというのだ?

「定期券が光るなんて初めて見たわ」
萌が定期券に触れようとすると、胡桃はそれを制した。
「何よ!」
「あなたには関係ないって言ってるでしょ!」

 おいおい、そんなこと言ってる時じゃないぞ。いよいよ未来人と遭遇できるんじゃないのか? 俺は興奮してくるのを感じた。
「ちょっと貸せ」
胡桃から定期券を取り上げると、俺はそれを空にかざして見上げた。しかし、どの角度で見ても何ら変化はない。

 そして、俺は思い出したように慌てて辺りを見回した。もしかしたらこの警報音を聞いて未来人がやって来るかもしれない。持ち主だったらこの警告音が何を意味するのかわかるはずだ。しかし、周りには不審な人物は見あたらない。俺は立ち上がり遠くまで視野を広げて観察した。

 そうこうしているうちに定期券の警報は鳴り止み、赤い光も消えてしまった。
「くそ、あと少しだったのに!」
悔しさで俺の体が震える。
「いったい何が起こってるの?」
萌が見たこともない表情で聞く。胡桃は当然何も答えない。当然、俺も胡桃が怖いので何も言わなかった。

「これが未来人の持ち物なの?」
鋭い!
「ここまでくると、なんか怖いわ」
胡桃はやや震えているようだ。こんなに強い胡桃でも恐怖を感じることがあるというのだろうか。今がチャンスとばかり俺は言った。
「これは俺が持っていることにするよ」
「ダメよ」
「大丈夫。お前に黙って無茶はしないから」
「本当?」
「ああ、約束する」
「ちょっと~、萌を無視して何の話をしてるのよ」
「別に」
胡桃がそっけなく答える。

「今日はもう帰りましょう」
「いや、もう少し」
「今日は帰りましょうって言ってるのよ」
胡桃はちらっと萌を見る。俺はこの言葉に何らかの深い意味がありそうな気がして、
「ああ」
俺はしぶしぶ答えた。

「せっかくのチャンスなのに帰っちゃうの?」
萌は俺の心を読み取っているかのように言った。
「帰るわよ!!」
胡桃があまりに語気を強めて言ったので萌は黙ってしまった。そして俺は硬直してしまった。胡桃のきつい言い回しに反応してしまうのは条件反射なのかも知れない。何て空しい条件反射なんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 『月のトカゲを探す者』第一部(全三部)。 (表紙絵/山碕田鶴)  

処理中です...