タイムトラベル同好会

小松広和

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第2章 謎の転校生

第15話 崩れゆく俺の高校生活

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 次の日から暫くは平和な日々が続いた。胡桃の怖さが少しは理解できたのか、萌が俺にちょっかいを出してこなくなったのだ。  
 ただしそれは胡桃が見ているときだけの話。部活中に胡桃がトイレにでも行こうものなら様子は一変する。

「ねえ、宮本君」
萌は俺に近付き甘えた声で話す。
「明日は土曜で学校休みじゃない。萌、宮本君とデートがしたいな」
「しねえよ」
俺は無愛想に即答した。

「萌おいしいケーキの店知ってるんだ。一緒に食べに行こう」
即答したにもかかわらず萌は誘い続けてくる。
「俺は甘い物は嫌いだ」
「じゃあ、私買いたい服あるんだ。買い物に付き合ってよ」
「女と買い物するのはもう懲り懲りだ」
言ってすぐに『まずい』と気付いたがもう遅かった。

「誰か女の人と買い物に行ったの?」
「え!? し、知らねえ」
俺は慌てて萌から顔をそらした。
「ははあ、胡桃ね」
萌はにやりとして言う。まるで人の弱みを握ったかのように頷いている。これはまずい情報を与えてしまったかもしれない。

「ああ、宮本君たら胡桃とはデートできて、萌とは嫌なんだ」
「デ、デートじゃねえ」
「ふ~ん、やっぱり胡桃なんだ。もしかして胡桃のことが好きなの?」
「違う!」
「じゃあ、胡桃とだけ出かけられるのって不思議じゃない」
「そ、それは・・・・」
「違うんだったら萌とも出かけようよ。それとも胡桃は特別な存在なのかな?」
「そんなことは断じてない! わかった買い物に行ってやろうじゃねえか」
「本当! じゃあ、明日の一時に駅前で待ち合わせね」
あれ? 何でこうなるんだ?

 そして翌日。恐怖のデートが始まる。もしこの現場を胡桃に見られたら。ああ、俺は何という大胆な行動に出ているんだ。
 でも、俺のリサーチでは今日の胡桃は美紀の家で遊んでいるはずだ。ここで出くわすことはないだろう。

「お待たせ~」
いつにもまして可愛い姿で萌がやってくる。女に興味がない俺でも可愛いと思えるレベルの出で立ちだ。
「ねえ、まずはどこに行く?」
萌は嬉しさからか声が弾んでいる。
「そ、そうだな」
何も考えてない俺は途方に暮れた。別に楽しみにしていたわけでもなし当然のことだろう。

「じゃあ、あそこにあるボク・ドナルドでお昼食べない? 萌、何も食べずに来ちゃった」
俺に決めさせたら埒が明かないと思ったのか萌はさっと提案してきた。
「そ、そうだな。そうしよう」
実を言うと俺はハンバーガーが大の好物だ。毎日食べたって飽きないレベルである。特にボク・ドナルドのハンバーガーは絶品だと思っている。

 店の中に入ると結構込んでいた。俺たちはハンバーガーを買うと窓際に席が空いているのを見つけて座った。
「ここの固茹で玉子の納豆バーガーって美味しいよね」
「お、俺もそう思うぜ」
「初めて意見があったね」
「そうか?」
「そうよ。でも、今日は嬉しいな。大好きな宮本君とたくさんお話しできそうで」
「いつも話してるじゃねえか」
「全然足りないよ。だから今日は思いっきり付き合ってよね」
もの凄い笑顔で答える。萌には可愛さというものがある。胡桃にもこの可愛さがあればと思わなくもない。

「ねえ、二人で一緒にいるところをクラスの誰かに見られたら噂になったりして」
萌は可愛くちょこっと舌を出して言う。
「そうだな」
 ん? ああ~!!! そうだ!!!!! 胡桃に直接見られなくても、学校の誰かに見られたら終わりじゃねえか! どうしてこんな単純なことに気付かなかったんだ!?

「やっぱり俺帰るわ」
「ちょっと待ってよ」
俺が席を立つと萌は慌てて俺の手を握った。
「どうしたのよ急に。胡桃に遠慮してるわけ?」
「決してそういうことはない!」
「じゃあ、萌といるのがそんなに嫌なの?」
「違うって」
「じゃあ、どうして~」
萌は俺を見上げ目に涙をためて言う。こんなの卑怯じゃねえか。泣きそうな女を見て逆らえるわけがない。
「わかった。わかった」
ええい、もうどうとでもなれ。俺はほぼ投げやり状態で席に着いた。

 その時だ。俺の席のすぐ横をウインドー越しに見慣れた人影が通り過ぎて行く。胡桃だ!
 なぜ胡桃がここにいるのだ。美紀の家にいるんじゃないのか。俺の頭はパニックになりかけている。勿論胡桃に遠慮などしていない。己自身の防衛本能が俺をパニックにさせているのだ。はっきり言ってまだ死にたくない。

 推測するに恐らく胡桃と美紀は家で話している内に『ねえ、駅前のデパートに行ってみようよ』という話になり買い物にでも来たのだろう。もしかするとウインドーショッピングとやらかもしれない。女二人だとこういう休日の過ごし方もあるのか。俺の女に対する知識のなさは底知れぬものがある。幸い胡桃は俺に気付かず通り過ぎていったようだが、今後鉢合わせる確率はかなり高くなった。

「ねえ、この後デパートで買い物しようね。萌、可愛い服が欲しいんだ」
それはまずい。まずすぎる。もし胡桃たちも服を見に来たんだとすれば大変なことになる。いや、きっとそうに違いない。
「買い物は今度にしよう」
「ええ~。買い物に行こうよ。『宮本君、買って~』何て言わないから~」

 それはそうだ。服を買いに来たのだから当然こういう反応うになるわな。しかし、女二人の買い物なら服を見に来ている可能性は高い。そんな危険な場所に行けるわけがない。
「それよりゲーセン行こうぜ」
「へえ、宮本君てそんなところに行くんだ?」
はっきり言って行かない。
「じゃあ、今日は俺の服を選んでくれ」
婦人服売り場はやばすぎる。
「ええ~。萌の服を買いに来たのに~」
萌はほっぺを膨らませた。こいつは男に『可愛い』と思わせる天才か?

「俺はファッションセンスの欠片もない。だからセンスの高そうなお前に選んで欲しいんだ。今度デートする時はその服を着てくるぜ」
「もう仕方ないなぁ。じゃあ、小物も買いたいから可愛い文具の店にも行ってね」
そっちの方がやばい気がする。文具店など絶対胡桃たちも立ち寄るに違いない。女の子ってなぜか文房具が好きだし。

「決まりね」
何でそうなるんだ? 俺は文具店に行くなんて言ってないぞ! そんな俺の手を萌は引っ張っていく。もうダメかもしれない。俺は辞世の句を考えながら萌に連れ去られていくのであった。
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