タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
16 / 45
第2章 謎の転校生

第16話 絶体絶命

しおりを挟む
 萌に連行されながらも俺は一分一秒でも長生きができるようにあがいてみた。
「その店ってなんて名前だ?」
「セロリハウスよ」
「もしかして女の子しか行かない店か?」
「そうだけど」
「そんなの恥ずかしくて行けるわけねえだろ」
「そっかぁ。残念だな~」
萌は口をとがらせて言う。

 もしかして助かったのか? おお神よ! 感謝致します。
「この先にあるお店よ」
萌の俺を引っ張る手に力がこもる。
「何が?」
「セロリハウスよ。さっき言ったじゃない」
結局行くんか~い! さっき『残念だな~』って言ったよな!?

「わかった。その文具店にも行くから俺の服を先に買いに行こう」
「え~」
不服そうな顔をする萌。
「俺はお前しか頼る女の子がいないんだ。母親はセンスがないし、胡桃は俺のために動いてくれることはあり得ない。わかるだろう?」
「そっか~。うん、わかった。じゃあ宮本君の服から買いに行こっか」
満面の笑みで萌が言う。これで何とか文具店と婦人服売り場を回避することができた。後は俺の服を選ぶのに時間を掛けて胡桃達が帰るのを待つことにしよう。

 男物の服売り場に着くと萌は手際よく服を選び出す。
「これなんか似合うんじゃないかな? いやこっちの方が」
はっきり言って、俺は服などいらぬのだ。今持っているので十分なのである。服など着られたらいいに決まっている。しかし、これもトラブルを避けるためだ。

「ねえねえ、これなんかいいと思うよ? ちょっと着てみてよ」
萌は俺を試着室に連れて行く。この行程を五回は繰り返した。何気に面倒くさい。乗り気じゃない素振りだったくせに、いざ服を選び始めるとかなり本気モードになっている。本当に女ってわからん。

 その時、俺の顔色は一瞬にして青ざめていった。目の前を胡桃が美紀と楽しそうに話ながら歩いて行ったのである。俺はとっさに服の陰に隠れた。何でこんなところに来るんだ? 辺りを見回すと近くに文具店らしきものがある。あれがセロリハウスか? なるほど、あそこに行く途中と言うわけだな。おお、セロリハウスに行かなくて大正解だ。

「ねえ、これなんてどう? 何してるの?」
「何でもないんだ」
「だって突然こんな所にしゃがむなんて変じゃない?」
「これは一種の訓練だ。いつどんな災難に見舞われるかわからんからな」
胡桃が通り過ぎたのを確認してから俺は立ち上がった。

「知ってる人でもいたの?」
鋭い!
「そ、そんなこと、あるわけないじゃないか?」
「そう? それよりこれ」
萌が持ってきた服は全てセンスが高かった。こういうのは得意そうだとは思っていたが、ここまでセンスがいいとは思わなかった。

「確かにいいな」
「でしょ?」
まあ、最終的にはこれを買うことになるんだろうな。ふと値段が気になる。俺はそっと値札を見た。7800円! 俺は服には金をかけないタイプの人間だ。そんな人間に7800円は高すぎる。
「これにしようよ」
無邪気な声で萌が言う。
「いや、その」
「気に入らなかった?」
萌が寂しそうな目で俺を見る。もう、そういう目で見つめるのはやめろって!

「やっぱり今日は夏に備えてTシャツを買おうかな」
「わかったTシャツね」
萌はTシャツのコーナーを見つけ、そちらに向かっていった。まさかTシャツなら7800円もするまい。

 萌が向かって行った方向を見て俺は唖然とした。Tシャツ売り場はセロリハウスに近すぎる。もし、胡桃達が戻ってきたらどうする!
「あ! あそこにあるのがセロリハウスよ。後で行こうね」
「行きません」
「なんでいきなり敬語なの?」
「あ、いやなんでもない。気にするな」
「それよりこれなんかいいんじゃない? こっちも捨てがたいけど」
ん? 5500円!? Tシャツで5500円はなかろう!

「あ、こっちにもいいのがあるわよ」
やれやれこの辺で妥協しなくてはいけないということか。どうせ大金を出すなら思いっきり気に入った物を買うことにしよう。
 俺は真剣に選んだ。
「真歴。あんたがデパートにいるなんて珍しいわね」
「ひええええ!!!!!!!!!」
俺は5mほど後ろに飛び退いた。この声は胡桃? 生まれた時から知っている胡桃の声を俺が聞き間違うわけがない。俺の顔から血の気が引いていくのがわかった。俺は恐る恐る後ろを見る。そこには予想通りセロリハウスから帰ってきた胡桃と美紀がいた。

「一人で来たの?」
「そうなんだ。Tシャツなんか買おうかなって」
「自分で服を買うなんて珍しいわね。あなたの持っている服は殆どあなたのお母さんが選んだ物だと思ってたわ」
「お、俺だってもう高校生だし自分で選んでみようかなって思っちゃって」
「ふ~ん」
胡桃の声は半信半疑であることを示している。

「わかったわ。行こうか美紀」
「胡桃が選んであげればいいのに」
美紀はニヤリとしながら言う。
「何で私が?」
「そうだ。なんで胡桃に選んで貰わないといけないんだ?」
照れ隠しで俺が言うと、美紀はそれを見てくすくす笑う。
「だって宮本君てお母さんが服を買ってくるんでしょ? だったら将来は胡桃がやる仕事じゃない?」
「ちょっとどういう意味よ!」
胡桃が顔を赤くして怒鳴る。本当にどういう意味だ? こいつらの会話はよくわからん。

 胡桃はため息を一つつくとやれやれと言わんばかりに美紀の背中を押してこの場を立ち去ろうとした。本当にやれやれだな。
「ねえ、これなんかどう?」
この声に立ち去りかけた胡桃の足が止まる。そして、もの凄い形相で振り返った。
「これって、どういうこと?」  
「こ、これはさっき偶然会って・・・・」
「萌たちデート中なの」
萌はそういうと俺の腕にしがみついた。何すんだよ、いきなり!!!!!

「へえ、そうなんだ。あなた達そういう仲だったんだ?」
落ち着いた口調に聞こえるが、胡桃の手は固く握られ震えている。
「違うんだ。これにはわけが・・・・」
俺は慌てて萌の手を解こうとするが、萌はいっそう俺の腕にしがみついてくる。
「そうなの。萌たちこういう仲なの」
ここぞとばかり萌が追い打ちを掛ける。
「いいから離れなさい!!」
遂に胡桃の口調が命令形になった。顔はさっきとは違う赤になっている。頬を赤らめる赤ではなく、赤鬼の赤である。けが人が出ること必至のこの状況下、俺はどのタイミングで走り出そうか考えるのだった
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 『月のトカゲを探す者』第一部(全三部)。 (表紙絵/山碕田鶴)  

処理中です...