タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
17 / 45
第2章 謎の転校生

第17話 秘密

しおりを挟む
 胡桃の今までに聞いたこともないドスのきいた声に俺は言い訳するタイミングを逸していた。萌は怖くないのか?
「嫌よ。あなたが宮本君のこと諦めてよ」
「離れなさいって言ってるの! 聞こえないの?」
そう言うと胡桃はゆっくりと俺たちの方に近付いてくる。はっきり言って胡桃の背後にオーラが見える。薄い青色のオーラが。

 頼むから暴力事件なんて起こさないでくれ。俺は必死で萌を押し続けた。このハラハラドキドキな状況下で美紀だけが嬉しそうな顔で見つめている。
「胡桃、落ち着けって」
胡桃が俺と萌の腕を力強く握りしめたとき異変が起こった。

 突然、俺の財布から警報音が鳴りだしたのである。俺が慌ててズボンのポケットから財布を取り出すと例の定期券から音がしている。
「何もこんなところで鳴らなくても」
音はデパート中に響き渡るほど大きくはなかったが一応デパートの中である。この場所で警報はやばすぎるだろう。もしデパートの客が避難を始めたらどうするというのだ。

 俺たちは慌ててこの場を離れることにした。
 一番人気のない場所を探すと、俺は慌てて定期券を財布から取り出した。すると定期券は、
「%$#*※%&、帰宅の時間が近付いています」
と三回繰り返し警報は鳴き止んだ。

 やっぱり未来人はいたんだ。これは未来人が現代に旅行するためのパスポートなんだ。絶対間違いない!
「ねえ、何なのこれ?」
美紀はきょとんとした顔で定期券を見つめている。
「私も分からないの」
胡桃がやや怯えた声で答える。

「分からないって、定期券がしゃべってるんだよ」
「何でこうなるのか、分からないのよ」
胡桃じゃなくても、この状況を美紀に説明するのは難しそうだ。

「今日のところはいったん帰ろうか」
突然萌が提案してきた。
「なぜだ。これからって言うときに」
俺は今の素直な気持ちを言ってみた。
「このことがどんどん広まっていってもいいの?」
萌は美紀を横目で見ながら俺の耳元でそっと呟く。

「そ、そうだな」
俺は萌の言わんとすることを理解すると、美紀の存在を気にしながら答えた。美紀は噂を広める天才だ。こんな美味しい情報を広めないわけがない。

 あれ? 俺はふと重大な事実に気付く。もしかしてこの定期券のおかげで胡桃の怒りが収まったのか? 胡桃は今まで怒りに我を忘れていたのが嘘のように普段の表情になっている。もしかすると俺は強運の持ち主かも知れない。下手をすれば今日が命日になってもおかしくない状況だったのだ。それが助かったばかりか未来人の存在も確認できたようなものだ。これは凄すぎる!

 その日の夜、俺の部屋に美紀がいる。
「だから何でお前がここにいるんだ!」
「ちょっと聞きたいことがあったから」
もしかして定期券のことか? それはまずいぞ。俺の語彙力ではうまく誤魔化せないだろう。

「いくら聞きたいことがあっても夜に男の家に来るか普通」
「どうして?」
「いいか、今日は俺の両親がいないんだぞ。つまり俺たち二人だけだ。何とも思わんのか?」
「だって、両親がいないなんて知らないわよ」
美紀は平然としたか顔で言ってのけた。

「だからこういう状況も想定して行動しろって言ってるんだ」
「でも、宮本君硬派なんでしょう」
「それはそうだが、この時間に聞きたいことがあったら普通は電話するだろう。俺以外の男に同じことをするなよ」
「心配してくれてるんだ。優しいんだね」
「そ、そんなことはねえ」
俺は照れながらようやくグラスにジュースを入れて美紀に出した。

「胡桃が好きになるわけだ」
「何言ってるんだ?」
胡桃が俺のこと好きなわけないだろう。そういや部室で『好きよ』とか言ってたっけ。あれは萌に言わされたようなものだし、関係ねえだろう。

「ところで聞きたいことって何だ?」
「胡桃のこと、どう思ってるの?」
さすが美紀、いきなりストレートな疑問を投げかけてくるんじゃねえ。まあ、定期券のことを聞かれるよりはいいのだが。
「どうって言われても返答に困るのだが」
「好きなの? それとも何とも思ってないの?」
これまた直球ど真ん中の質問だ。

「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「最近胡桃の様子が変なのよ」
「様子が変?」
「あの転校生が来た辺りからかな?」
「そうか。それは気付かなかったな。それでどう変なんだ?」
「一緒にいてもどことなく暗いし、考え事してて私の声も聞こえてないって感じ」
それは確かに変だ。あれだけ好き放題にズバズバ言う胡桃に悩みなどあるはずがない。

「ねえ、もし胡桃のことが好きなら、あの転校生といちゃつくのは止めなさいよ」
「いちゃついてなんかいねえって」
「でも、いつも一緒にいるじゃない」
「あれはあっちからやって来るんだ!」
「本当?」
「ああ、本当だ」
少しは納得したのか美紀の質問攻撃は終わった。

 暫く考え込んだ美紀は突然顔を上げると俺に向かって笑顔で言った。
「良かった。安心したし私帰るね」
「おお、そうか」
俺は美紀が帰ると聞いてホッとした。美紀とは言え悩んでいる女性を見るのは忍びない。俺は美紀の表情を見てやや安心感に包まれた。やはり悩みなどない平和な日々が一番だ。

 俺は美紀を玄関まで送ろうと立ち上がった。もう夜の11時を越えている。さすがに高校生としては遅い時間と言えるだろう。そんな時間に俺の部屋に女がいるのだ。考えただけでも硬派に傷がつくというものだ。時々胡桃が突然来る時もあるがあれは例外だ。第一美紀と胡桃を比較すると、どう見ても美紀の方が可愛い。こんなことは死んでも口外できないのだが。

 次の瞬間、俺の脳裏に聞いては鳴らぬ音が飛び込んできた。そう、この世の終わりを告げる世にも恐ろしい声が。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 『月のトカゲを探す者』第一部(全三部)。 (表紙絵/山碕田鶴)  

処理中です...