タイムトラベル同好会

小松広和

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第3章 未来への旅立ち

第20話 未来人との遭遇

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 その夜、俺はようやく胡桃に開放されるとベッドに寝ころんで定期券を見つめた。このところ立て続けに起こる怪現象。俺の想像を遙かに超える出来事が続けて起こっている。
 この定期券は俺に何を伝えようとしているのだろうか? 定期券の落とし主は今頃どうしているのだろうか? 帰宅というのは未来の世界へ帰ることなのだろうか? 考えれば考えるほど分からなくなってくる。

 俺が妄想にふけっていると突然警報が鳴り始めた。もう聞き慣れた音だ。いや、今回は違っていた。警報だけでなく立体映像の矢印が現れたのである。俺は思わず起きあがり定期券を両手で握りしめた。
「どういうことだ!」
矢印が微妙に揺れている。
「この方向に進めってことか?」
俺は慌てて立ち上がり部屋を出ようとして立ち止まった。
「胡桃に言わないと」
自然と声が出ていた。俺はスマホを取り出すと胡桃に電話し、ことの詳細を告げた。

「絶対一人で矢印の方向に行っちゃダメよ! わかった!?」
胡桃の声からは焦りのようなものが感じられる。それに対し俺は、
「分かった」
と答えたが、電話を切ると自然と矢印の方向に進んでいた。

 家の玄関を出るとなぜか萌が立っている。
「どこへ行くの?」
「お前こそ何でこんなところにいるんだ?」
「宮本君が気になって来たの」
「どうして、いきなり気になるんだ?」
「ほら、今日変なことがあったじゃない」
「そうか」
と返事をしてみたが、もし俺が家の外に出なかったらどうするつもりだったのだろうか? まるで俺が出てくるのがわかっていたみたいだ。もちろん、わかるわけがないのだが。

「それで、宮本君こそこんな時間にどこへ行くの?」
俺は定期券のことを思い出して、それを萌に見せて言った。
「ほら、定期券から矢印が出てきたんだ」
「まあ! じゃあ、この矢印通りに進めば未来人に会えるってこと?」
「そ、そうだな」
俺は興奮した。萌の言う通りだ。この矢印通りに進めば・・・・

 俺は萌と一緒に矢印の方向に進んだ。胡桃との約束を忘れたわけではない。でも、殆ど無意識的に足が動くのである。
「ここは胡桃がこの定期券を拾った場所だ!」
俺は未来人に会えることを確信したように言った。
「そうなの? 益々信憑性が増したわね」
やがて矢印は俺たちを路地裏へと導く。今まで来たこともないようなビルとビルに挟まれた狭い路地裏である。

 その時、俺は信じられない光景を目の当たりにした。建物の壁から人が透けて出てきたのである。
「あ、あ、あれ」
萌はやや震えながら俺に軽くしがみついてきた。
「一体、どうなってるんだ?」
「あの壁から出てきた人って、未来人よね・・・・きっと」
「そ、そうだよな。未来人だよな」
俺は興奮を抑えきれず、未来人が出てきた壁へと向かい駆け出した。

「待ちなさいよ!」
胡桃の声だ。思わず振り返ると胡桃がこちらに駆け寄ってくる。
「はあ、はあ」
苦しそうに息をする胡桃。
「私に黙ってどこにも行かないって約束だったでしょう!?」
「分かってる」
「じゃあ、どうして私が来るまで家にいないのよ!」
「それは・・・・」
「出かけるなら行き先くらい告げてもいいんじゃない? スマホ持ってるでしょう?」
「それはそうなのだが」
俺は下を向き小さな声で返答した。

「それに一番分からないのは、どうしてここにこいつがいるわけ?」
「こいつとは随分な言い方ね」
「私だけじゃなくてこいつにも連絡してたわけ?」
「そ、それは違う」
「じゃあ、どうしているのよ!」
「あなたと違って萌は本気で宮本君のことを心配をしてるの。だから家の前まで行って様子を見てたのよ」
胡桃がやや悔しそうな表情になる。

 その時また壁から男女二人が出てきたので、俺たちは慌てて物陰に隠れた。
「何よ、これ?」
「どうやら未来人らしい」
「何言ってるの?」
胡桃は信じられないという表情で目の前を通り過ぎる二人を見つめている。
「まさか。そんなことって」
「どうやら俺たちは未来人に遭遇してしまったらしい」
胡桃はほぼ放心状態になっているようだ。一方、萌は驚きの表情を見せているものの、そこまでには至っていない。

「行ってみようぜ」
「どこへよ」
胡桃が心配そうな声で聞く。
「未来人が出てきたあの壁の向こうにだよ」
「そんなのダメよ! 危険すぎるわ」
胡桃の口調がきつくなっていく。

「おもしろそうじゃない。未来に行けるかもしれないのよ」
突然、萌が会話に入ってきた。
「そうだ。未来に行けるチャンスだ」
「チャンスかもしれないけど、帰ってこれなかったらどうするの?」
胡桃の口調は真剣そのものに変わっている。
「最初で最後のチャンスかもしれない。これは俺の夢なんだ。分かってくれ」
俺は手を合わせて頼んだ。

「ダメだったらダメ!!」
「俺は夢を叶えるためなら、どんなに危険な目に合ったってかまわない」
「素敵ねえ。萌は大賛成だよ。宮本君一緒に未来へ行こう」
萌は俺の腕にしがみついて言った。
「ちょっと、余計なことを言わないで!」
「あなたも宮本君のことが好きなら、ちょっとは理解してあげたら?」

 二人が睨み合うさなか、定期券が再び鳴り出す。
「乗船時刻が近付いています。急いでください」
赤いサイレンが現れ、ぐるぐると周りを照らしている。
「俺は行くぜ!」
胡桃が俺の腕をガシッと掴む。かなりの力だ。俺はそれを力ずくで振りほどいた。これを火事場の馬鹿力と言うのだろうか。未来に行きたい一心で思わぬ力が出たようだ。

 壁へと走り出した俺に胡桃が叫んだ。
「分かったわ。私も行く!」
え?
「も、萌も行くよ」
「それはダメだ。危険な目に遭うのは俺一人でいい」
胡桃は俺を無視して未来人が出入りしている壁へと向かっていった。
「おい、俺の話聞いてるのか?」
「もたもたしてたら置いてくわよ」
俺は慌てて胡桃のところに駆け寄った。
「ちょっと待ってよ。萌も行くって言ってるのに~」
俺たち三人は壁の前に立ち、そっと手を差し出すと、吸い込まれるように壁の中へと入って行った。
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