タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
33 / 45
第3章 未来への旅立ち

第33話 恐怖の双六は容赦なく続く

しおりを挟む
 待てよ。ユリナが萌と同じ所に止まったってことは、俺はもう一度『好きだ』と言わなければいけないのか? もう勘弁してくれ!
 そして見たくない文字がゆっくりと現れる。
『好きな人と見つめ合って愛してるよと囁いてもらう』
「あれ? さっきと違うぞ?」
「止まる人によって微妙に変わることがあるんだ」
「てか、こっちの方がきついじゃねえか!」

 ユリナは俺を見つめ始めた。
「おい、何で俺を見つめ出すんだ?」
「愛を囁いて貰うために決まってるだろう」
「双六は好きな人って言ってたぞ。俺達出会ったばかりだよな。好きって言うのには無理があるよな」
「私は君のことが大好きだよ」
ダメだ。完全に酔ってやがる。

「ねえ、早く言ってよダーリン」
「ユリナ、頼むから正気に戻れ」
「私、男の人から告白されるの初めてだよ。きっと感動的なんだろうな」
ユリナは俺の肩を両腕でガシッと掴んだ。
「い、いきなり何するんだ?」
ユリナは意外と大きく身長が170cmくらいはありそうだ。それだけに力も胡桃以上に強かった。動けないぞ。

「もう離さないぞ。愛の言葉を囁かなかったらこのままキスするからな」
ダメだ。目が据わっている。ユリナの背後では鉄パイプを持った胡桃と金属バットを振りかぶった萌が今にもユリナの後頭部を殴ろうとしていた。何で女の一人暮らしの部屋に鉄パイプや金属バットがあるのだ?
「わかったわかったから。酔いから醒めろ!」
ユリナは何も聞こえないのか目を閉じ、唇を尖らせて顔を近づけてくる。

「愛してるよ」
『ブー』
ええーーー! これ程度では無理なのか? まさかもっと感情を込めろって言うんじゃないだろうな?

 ユリナの顔は更に近づき萌と胡桃の腕に力がこもる。
「ユリナ、俺はお前なしでは生きていけないんだ。愛してる。いつまでも一緒にいてくれ」
『ピンポーン』
俺は頭を抱えて大きく首を振った。恐らく俺史上一番の黒歴史を作ってしまった! だが逃亡中の状況で殺人事件を起こすわけにはいかねえ。俺は一生懸命自分自身に言い聞かせるのだった。

 その後もいろんなお題が出される。
『東京タワーとスカイツリーのどちらかでデートをするとしたらあなたならどちらを選びますか? その理由を五十字以内で答えなさい』
「国語のテストか!」
『好きな人を三人から一人選び手を握ってウインクせよ』
「できるかー!」
結局やらされた。因みに一番当たり障りがなさそうなユリナを選んでおいたが、
「信じていいんだよね」
と涙を流して喜ばれてしまった。酔っ払いを選んだのは失敗だったのか? しかし、胡桃と萌のどちらかを選ぶのはさすがにやばすぎる。選ばなかった方の攻撃を考えると恐らくこの選択しか残されていなかっただろう。

 そして一時間後。ようやくゴールの手前まで辿り着いた。俺は後六マスでゴールできる。
「六出ろ!」
五だった。今回ほど神頼みをしたことはないぞ。もう双六のお題に悩まされるのはこりごりだ。だがこの恐怖の双六ももう終わりだ。

 しかし世の中そう甘いものではない。盤上にとんでもない文字が浮かび上がった。
『現在最下位の人とキスをする』
ちょっと待て! いくら何でもこれはやりすぎだろう!
「ははは、私は女の子同士でしかこのゲームをやったことがないからな。まさかこんな課題が出ようとはな」
と言いながらも、ユリナは大声で笑っている。ところで、最下位って誰だ? 俺は慌てて盤上を確認する。胡桃だ!

「え? そんな。ダメよ!」
胡桃が慌てて言う。
「そうだよ。萌じゃなきゃダメだよ。萌が代わりにしてあげる」
萌が立ち上がろうとするのを胡桃が萌の腕をしっかりと掴んで止めた。

「どうしてもって言うのなら、しても。・・・・いいわよ・・・・」
「いいぞ~。やっちまえ~」
ユリナが酔っぱらいが出すような大きな声で囃し立てる。
「絶対ダメ~!」
萌が胡桃の腕にしがみつく。
 しかし、これまた困った。まさか胡桃がこんなこと言うとは想像もしていなかった。

「何、しないの?」
マジか! 胡桃は顔を真っ赤にして目を閉じたまま俺を見つめている。
どうしろって言うんだ。俺はどうしていいかわからず部屋のあちこちを見る。決して胡桃を見ることはできなかった。
 
 やがて双六が赤く光り出しカウントダウンが始まった。
「早くしないと失格になるわよ」
胡桃のやや小さめの声が俺を更に焦らせる。俺はそっと胡桃の腕を掴んだ。
「お願いだから止めて!」
大声で叫ぶ萌をユリナが押さえる。

「やっぱりダメだ。キスなんて人前でやることじゃねえ!」
俺はそう叫ぶと失格の道を選んだ。
 よく考えたら俺は寝る場所が指定されてるんだから失格になっても良かったのでは? もっと早く気付くべきだった。俺は再び頭を抱えて首を大きく振った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

処理中です...