タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
36 / 45
第3章 未来への旅立ち

第36話 ユリナの爆弾発言

しおりを挟む
 ユリナのアパートに来て二週間の時が流れた。
 俺たちはすっかりここの生活に慣れようとしている。そんなある日のこと萌はユリナに尋ねた。
「ねえ、美容室で髪切りたいな。ちょっと気分転換に」
「美容院だね。でもどのくらい切るつもり?」
「そうね。十センチくらい」
「ええ、そんなに切っちゃうの? 今の髪型似合ってるのに」
「もし髪を切って似合わなかったら、薬で髪のばせばいいし」
「よく知ってるわね。カルカロのこと」
「未来なんだから、髪を伸ばす薬くらいあるだろうって思ったのよ」
萌の髪は肩に当たるくらいの長さだ。因みに胡桃の髪は胸あたりまである。

 パソコンのことと言い今回の薬と言い萌はどうしてこんなに想像力が豊かなんだ?
「萌の想像力って凄いな。でも、どうして急に髪を切ろうって思ったんだ」
「だって、宮本君と進展ないし、ここらでイメチェンしようかなって」
「いっそのこと坊主にしたら」
突然、胡桃が会話に入ってくる。当然、萌はむっとした顔で胡桃を睨む。

 また喧嘩を始めるのかと思ったらそうでもなかった。
「私も美容院行きたいかも。髪先整えたいし」
「じゃあ、一緒に行こう」
「二人で行ってきたら。美容院ならここから百メートルくらいのところにあるから」
「行こう、行こう。美容院てどうせ顔認識ないから」
「萌って本当に凄いな。その通りだ」
「だって、レストランと同じじゃない」
「なるほどね」
こうして二人はユリナに書いてもらった地図を持って出かけていった。萌は想像以上に頭が切れるのかも知れないぞ。

「でも出かけて大丈夫なのか?」
俺は素朴な気持ちで聞いた。
「このところ、警察が捜してる様子もないし、大丈夫じゃないかな?」
「ならいいけど」

「ねえ、それよりお願いがあるんだ」
「ああ、何でも言ってくれ」
「クローゼットの上にある棚から自動たこ焼き機を取ってほしいんだ。踏み台を使って取ろうとしたんだけど、うまく取れなくて」
「何だそんなことか。任せてとけ」

 俺は踏み台を借りると自動たこ焼き機とやらを取って渡した。
「やっぱり男の人って背が高いんだね」
ユリナの身長は170cmくらいだと思う。俺は172cm。だとしたら2cm高いことになる。やはり少しでも高い方が・・・・ん? たった2cmじゃねえか。

「ユリナでも余裕で取れるんじゃねえか?」
「こういうの男の人に頼んでみたかったんだ」
ユリナもよくわからない人種かも知れないぞ。

「未来にもたこ焼きってあるのか?」
「あるよ。今、たこ焼きに様々な具を入れて焼くのが流行ってるんだ。烏賊や肉や魚。お菓子だって入れちゃうかな?」
美味しそうな気もするが、はずれもありそうだな。
「今から作って食べちゃおうか」
「いいよ、あいつらが帰ってからで」
「でも、暫く帰ってこないよ。美容院に髪のリフレッシュコースがあって、たぶんそれを頼むことになるだろうから」

 ここで俺はとんでもないことに気付いた。
「そういや、あいつらここの言葉を話せないじゃないか」
「心で念じてもオーケーなんだ。どうせかみ切るのもロボットだし。何も言わなかったらリフレッシュコースが付いてくることになっているのさ」
なるほど奥が深いな。でも、萌も胡桃もこのことを知らずに行ったんだろ? 大丈夫なのか?

「だったら先に作るか。腹も減ってきたし。どうやって作るんだ?」
「簡単だよ。材料を入れてスイッチを押すだけ。ランダムに具も入れてくれて、自動で作ってくれるんだ。具は冷蔵庫に入ってる物を適当に入れちゃお」
待つこと数分、たこ焼きがころころ転がってきた。

「いい臭いだな」
「でしょう? このたこ焼き器で作るたこ焼きは天下一品名なんだ。さあ、食べよ」
ユリナは何か嬉しそうだ。いいことでもあったのか?

 俺はたこ焼きを一つフォークで刺してほおばった。本当は爪楊枝で食べたいところだが、この世界にもあるのだろうか? まあ、贅沢は言わないでおこう。で、肝心のたこ焼きの中身はするめだった。意外と美味しい。
「美味しいだろ」
「今のところな」
俺はこの先の不安を考慮に入れて言った。

「ねえ、私たちが一緒に生活するようになって二週間が経つけど、ここでの生活はどうだ?」
「ああ。いいと思うぜ」
「それはよかった」
「本当に迷惑かけてるよな」
「そんなことないよ。とても楽しいし。初めは男の人と生活するのって緊張したけど、今は大丈夫」
「ごめん」
俺は思わず謝った。完全にユリナに迷惑を掛けている。

「そんな気にしないで。実は私男性が苦手だったんだ。だから恋人どころか男友達もいない」
「じゃ、かなり嫌だったんじゃないのか?」
「そんなことないよ。でも、一緒に生活してみて良かったと思ってる。もしかして真歴君だからかもしてないけど」
「俺だから?」
「うん。なんか真歴君て話しやすいよね」
「そ、そうか?」
ユリナの意外な言葉に俺は少し照れてしまった。

 暫くの間があった後、ユリナがもじもじしながら俺を見た。
「どうしようかなぁ?」
「どうしたんだ?」
「初めての二人きりだし」
「何だ?」
「こんな機会滅多にないもんね?」
「だからどうしたんだ? ユリナらしくないな」
「そうだよね。言っちゃおっと。私、真歴のこと好きになっちゃったみたい」
突然の爆弾発言である。
「な、何言い出すんだ!」
俺は雷に打たれたように体がはじけた。話がややこしくなるだろうが! こんなの胡桃と萌に聞かれたらただでは済まないぞ。一人だけでも恐怖なのに、今回は二人の攻撃を受けることになる。

「私のこと嫌い?」
「もちろん嫌いじゃない。だがしかし・・・・」
「分かってるよ。真歴君には胡桃や萌がいることくらい」
ユリナは俺を見つめ続けた。

「そ、そんなこと急に言われても」
俺は動揺を隠せないでいる。当たり前だ。こんな展開誰が想像できるというのだ。ただでさえ女性に免疫がない俺だぞ。こんな時なんて言ったらいいのかさっぱりわからん。

「でも、この気持ち伝えたかったんだ。伝えないと気が済まない性格だから」
ユリナはフォークでたこ焼きをつつきながら言う。俺は何を言っていいかわからず黙り込んでいた。
「もちろん伝えただけ。付き合ってなんて言わないよ。強力なライバルが多いし」
「言っとくが俺は胡桃も萌も付き合ってるわけじゃないからな」
「真歴君て優しいね」
いや本当のことを言っただけなのだが。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...