タイムトラベル同好会

小松広和

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第3章 未来への旅立ち

第35話 歴史王者決定戦

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 ユリナのパソコンを覗くと教授らしき人物が映っている。ただし何を言っているのかは全く分からない。
「ねえ、萌たちの言葉にしてよ」
萌は突然無理難題を言い出す。未来人が受ける授業だぞ。何で21世紀人の言葉に翻訳する必要があるというのだ? そんなことできるわけなかろう。

「よく二十一世紀の翻訳があるって分かったね?」
できるんかーい! 何という無駄な機能を備えたパソコンなんだ。ユリナがキーを押すと二十一世紀頃の日本語になった。画面上は教授が話したり問題が出題されたりしている。

「流石に大学だな。歴史に詳しい俺でも難しいぜ」
「萌、この問題の答え分かるよ。オランダ風説書でしょ」
萌が簡単に答える。俺が難しいって言ったばかりだぞ。これでは俺のレベルが低いって言ってるようなもんじゃねえか!
「私だって分かったわよ」
胡桃は対抗するように言った。

「萌って凄いな。原文を見ただけで分かったのか?」
ユリナは萌に感心したのか、コンピュータを一時停止にして自ら問題を出し始めた。
「日本をはじめて紹介した中国の歴史書は何だか知ってる?」
「後漢書東夷伝よ」
胡桃が自信たっぷりに答える。
「違うわ。漢書地理志よ」
これまた萌が自信たっぷりに答えた。
「どちらが正解なんだ?」
俺も興味津々に聞いた。学年一位の胡桃が勝つのか。それとも転校生に負けて学年一位の座を奪われるのか。因みに俺はわからない。

「漢書地理志だね。萌の勝ち」
胡桃が勉強で負けるところを始めて見たぞ。
「簡単すぎてうっかりしただけよ」
「確かに簡単な問題よね。中学生レベルの問題だもんね」
萌の嫌味が炸裂する。萌ってこの手のあおりが得意そうだ。

 胡桃はかなり悔しそうにしている。それに対し萌はかなり満足げな顔で笑みを浮かべる。
「理科や数学なら負けないわよ」
「さあ、それはどうかしら?」
はっきり言って意外だ。どう考えても胡桃が萌に負けるはずがない。今までの行動を見て判断するに、萌はどちらかとい言えばおバカキャラだ。その萌が学年首位の胡桃を勉強で負かせてしまったのである。そんなこと誰が信じられるわけがない。

 その後もかなり難しい問題を萌はすぐに答えていった。胡桃も正解はするのだが、即答できない問題も多く、レベルの差は明らかになってしまった。
「凄いね萌。胡桃もす凄いけど」
ユリナが感心して言うと、萌に負けたことが相当傷付いたらしく、胡桃は何も答えず歯を食いしばっている。

「歴史王者選手権に出たらきっと優勝だよ」
「何だそれ?」
「テレビ番組だよ。歴史に自信のある人たちが歴史クイズに挑戦するんだ」
「萌、出たいな」
やはり萌は何にでも興味を示す。

「優勝すると九泊十日の歴史旅行に行けるんだ」
「それって私たちがここへ来るきっかけとなった旅行じゃない?」
胡桃は身を乗り出してユリナに聞いた。
「ああ、そうだね。たぶん」
「優勝すれば二十一世紀に帰れるんだね」
やはり胡桃は二十一世紀に帰りたいようだ。
「出よう、出よう」
萌はおもしろがっているようにしか見えないが。

「この番組は三人一組で出場するんだよね。胡桃、萌、真歴、ちょうど三人だ」
「真歴じゃなしにユリナが出てよ」
萌! 何てことを言うんだ! でも、情けない話だが俺もそう思う。
「残念ながら出場メンバーでないと旅行に行けないことになってるんだ」
「ええ~」
真剣にがっかりするな!

「でも、私たちここの言葉を知らないわよ」
胡桃がポツリと核心を突く。
「そうか。じゃあ、こちらの言葉を勉強する?」
「そうね」
「でもさ、テレビに出ちゃったら警察に見つかるんじゃない?」
萌の一言で俺たちは黙ってしまった。企画してわずか十分、早くも夢が砕け散った。
 まあ、俺はもう暫く未来の世界にいたかったので、少しホッとしたのだが。胡桃と萌はきっと元の世界に帰りたいのだろう。

 この雰囲気を変えようとユリナが切り出す。
「今日は二人のおかげで勉強がはかどったよ。真歴は何も答えてくれなかったけどね」
あんな難しい問題答えられるわけがない。俺がバカなんじゃなくて、こいつらがおかしいんだ。俺は恨めしそうにユリナを見た。

「冗談だよ、冗談。真歴はもっと他の魅力があるもんね」
どんな魅力だ? 言ってみろ! と思ったが口には出さなかった。とんでもないことを言われそうで何気に怖い。

「勉強できなくても大丈夫だよ。萌がパートナーとして頑張るから」
と言って、萌は俺の腕に抱きつく。
「どうしてあんたはいちいち真歴の腕にしがみつくわけ?」
胡桃はいつもの如く俺と萌を離しにかかる。

「羨ましいな。私も恋人が欲しくなっちゃった。真歴。この二人のどちらかにするのが難しかったら、いっそのこと私と付き合っちゃえ」
そう言うとこれまたいつもの如く大笑いをした。ユリナは24時間365日酔っ払ってるのか?

「ダメ~!」
萌が力を入れてしがみつくと、
「ちょっといい加減に離れなさいよ」
胡桃もこれまた力を入れて離しにかかる。
「私もしがみついてみよっと」
今度は反対側の腕にユリナがしがみついてきた。
  何ですと? ユリナってこんなことするキャラだったのか? ただ、萌と違ってしがみつき方がぎこちない。やはり流れ上、無理をしてしがみついているみたいだ。無理するなって。

「ちょっと離れてよ。離さないと真歴の腕を引きちぎることになるわよ」
なんて恐ろしいことを平然と言えるんだ!
 萌はしぶしぶ俺の手を離した。胡桃は萌が離れると何もしてこない。ユリナが冗談でやってることを知っているからだろう。やはり胡桃の方が頭がいいのか?

「私、お父さん以外の男の人に触れたの初めてかも?」
それは忘れられない一日になるな。そんな貴重な相手がこんな俺でごめん。
「男の人の腕ってこんなに太いんだ」
「変な発見してないで離れてよ」
「冗談だよ。ほら萌に返すから」
「何で萌に返すなのよ!!」
胡桃は百軒先まで聞こえそうな大きな声で叫んだ。

 ユリナが手を離すと萌と胡桃は安心したらしく元の位置に戻っていった。
「さあ、続きを見よう。これが終わらないと欠席になっちゃうからね」
ユリナが言うと二人もパソコンの画面を見つめた。お前達は欠席にならないんだから、そんな真剣に画面を見つめなくてもいいんじゃねえか? 素朴な疑問を持ちながらも俺もまたパソコンの画面を見つめるのだった。
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