タイムトラベル同好会

小松広和

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第4章 熱き逃亡の果てに

第43話 選択

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 男は容赦なく話を続けた。
「ダメだ。反逆者を罰することはこの世界ではとても重要なことだ。第二第三の反逆者を出さぬためにも刑を執行せねばならん」
予想通りの言葉が俺たちを襲う。何とか萌を助けたいが今の俺にはどうすることもできない。萌と一緒に行動した光景が脳裏に浮かんでは消えていった。

「私は牢屋を選ぶわ」
突然の萌の言葉に俺は驚きを隠せなかった。
「何言い出すんだ萌!」
「私は本気で宮本君のことが好きなの。私の初恋よ。そんな人のことを忘れられるわけないじゃない」
俺は言葉に詰まった。俺のことをそこまで思ってくれるのか。でも、俺みたいな男に自分の人生を犠牲にするな。俺は本当に最低なくずだぞ。何とか説得せねばなるまいと俺は焦った。

「普通の生活をしていれば、また新しい恋愛もできるだろう?」
俺は必死だ。
「ダメよ。宮本君でなきゃダメなの」
萌の目からは一粒の涙が流れた。
「俺ははっきり言ってレベルの低い男だ。俺なんかはお前に似合わねえ。新しい人生を選択してくれ。頼む!」
「嫌! 絶対に嫌!!」

 俺はきつく目を閉じ手を握りしめて考えた。萌を説得するにはどうすればいいんだ?
「ねえ。一つ聞かせて」
その時突然胡桃が萌に話しかけた。
「そんなに真歴が好きなのに、どうして今は宮本君て呼ぶの? 真歴君と呼ばないの? 逃亡中には真歴君て呼んでたわよね?」
萌は暫く考えると俯いたまま小さな声で答えた。
「それはあなたに遠慮してるのかな? 自分でもよく分からないわ」
「一度決心してまた遠慮してるってこと?」
「私はもう終わりよ。宮本君を幸せにできない。だから胡桃にその役を任すしかないの・・・・。お願い真歴君を幸せにしてあげて」
胡桃は何も言わずに俺を見た。萌の言葉を聞いた俺の反応が気になるのだろう。

「世間話はそれくらいにしてもらおう。このまま時間をあげたいのだが、こちらも何かと忙しくてね」
沈黙を保っていた男は萌を見て話し始めた。
「真歴君。これから一生会えないかも知れないけど、私はあなたを一生忘れない」
「バカだよ。俺なんか本当にどこにでもいるバカなんだぞ。お前はエリートなんだろ? 今からでも遅くない。俺のことは忘れて新たな幸せを掴むんだ!」
「もう無理だよ。私の心の奥底に真歴がいるもの。それを排除して新しい人生を送る気は微塵もないの」

「もう気が済んだかね?」
しびれを切らしたように男が話し始める。
「さて、君たちの方だが。二十一世紀の日本に帰って貰う」
「本当!」
胡桃は大きな声を上げると、その驚きと共に満面の笑みを見せた。
「ただし、IM21と同じように全ての記憶をなくして貰うがな」
少し苫どっとような顔になる胡桃。

 暫く考えた後、胡桃は顔を上げた。
「そんなの元の生活に戻ればすぐに思い出すわ」
「残念ながらそれは不可能だ。記憶そのものを全て取り除いてしまうため、完全な記憶喪失者として生きて貰わねばならない。家族や友達のことも、そしてお前達二人が偶然会ったとしても全く誰か分からないだろう」

「ふざけるな!」
俺は怒りを爆発させて叫んだ。
「安心しろ。生きていくのに必要な最低限度の記憶は残しておいてやろう。せめてもの情けだ。感謝しろ」
「何言ってやがる。そんなことで感謝できるか!」
「全ての記憶をなくしてしまったら、箸を持つこともできなくなるんだぞ? それを考えたら物凄い温情だろう」

 男の恩着せがましい言葉に俺の感情が言葉として漏れる。
「ちきしょう!」
俺は悔しさのあまり拳で自分の足を叩いた。
「もちろん記憶をなくしたくなければ、一生こちらの世界で暮らして貰うことになる。歴史博物館の見せ物としてだが」
俺たちは思わず絶句した。

「すぐに返事をしろというのも酷な話だ。一時間だけ猶予を与えるよう。しっかりと考えてくれたまえ」
そう言うと男はこちらを振り向くこともせずゆっくりと退室していった。
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