落ちこぼれ魔女のリーサとラスボスのミーニャ

小松広和

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第3章 仲良し3人組

第52話 大事件じゃないか

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 リーサ達が来てから退屈は紛れたが、ラスボスとしての公務の時間は相変わらず退屈だ。「ラスボス様、申し上げます。ブルーキングがドジを踏み勇者レベル100相手に5ターンまで行ってしまいました」
「それで負けたのか!?」
「いえ快勝です」
「だったら普通ではないか!」
「いつもは3ターン以内で勝ちますので」
「いちいちそんな下らん報告をするな!」

 全くふざけた奴らだ。余計に退屈になってくる。
「大変です。レッドキングが」
「快勝したのか?」
「はい」
「だったらなぜ大変なのだ?」
「はい、戦闘中にレッドキングの悪魔の炎を浴びてしまった部下のモンスターが軽い火傷をしてしまいました」
「何度も言うが、そんな報告はしなくていい」

「ミーニャ様、申し上げます。イエローキングがわずか1ターンで勇者レベル99を倒し・・・・」
「今ミーニャと言ったか?」
「申し上げありませんでしたラスボス様」
「これは死刑だな」
「どうかお許しください。二度と言い間違えません」
「そうか。だったら反省文を明日の朝までに書いてこい」
「反省文ですか?」
「そうだ100000字な」
「ひえええ!」
これくらいせぬと退屈は紛れん。さあ書いてこれるかな?

 それにしても本当に変わらぬ日々だな。もっとこうドキッとするような報告はないのか?
「申し上げます。極東部を統治しますパープルキングが自ら冒険者に挑みかかり、不正に冒険者達を倒している模様です」
「だからそんな下らん報告はしなくてよいと・・・・今なんて言った?」
「はい、パープルキングが不正に冒険者達を倒して・・・・」
「大事件ではないか!」

 私は早速パープルキングの元へと旅立つことにした。
「ラスボス様自ら行く必要はないかと思われます」
「いや私が行って罰することにする。これは異世界始まって以来の不正だ」
私が旅支度をしているとリーサが小さな声で聞いてきた。
「どうして異世界始まって以来の出来事なのですか?」
「異世界の暗黙のルールとして野生のモンスターは冒険者を見かけると攻撃していいことになっている。だがボスクラスのモンスターは向こうからやってくるのを待って攻撃をしなければいけないのだ」

「そんなルールがあったのですね」
その言葉にナナカが反論してきた。
「ちょっと待ってよ。私の友達は機嫌が悪かったあなたに殺されたって聞いてるわよ」
「全く記憶にない話だ。恐らくそれは私ではない誰かに殺されたのだろう」
「どういうこと?」
「どこで殺されたのだ?」
「かなり東の洞窟よ」
「東・・・・もしかしたらパープルキングかもしれんな? 私の名前を名乗っていると言うことか? 許せぬ」

「ラスボス様、1人で行かれるのは危険です。誰かお供の者を連れて行かれてはどうでしょうか?」
「いらぬ」
「しかし、もしものことがあると行けませんのでグレートジーニアスドラゴンをお供に付けましょう」
「絶対にいらぬわ! なんでこいつなんだ?」
「一番仕事がないのです」
「そんな奴をお供に付けようというのか? お前たち本当に私を心配しているのだろうな?」
「申し訳ございません」
心配してないんか~い!

 そして次の朝。
 さあ、いよいよ出発だ。
「ミーニャ気を付けてね」
「ナナカありがとう。私は大丈夫だ。留守を頼むぞ」
「ミーニャさん。無理をしないでくださいね。寂しいですけど次に会える時を楽しみに待ってます」
「・・・・・・・・」
「あれ? 私には『リーサありがとう』と言ってくれないのですか?」
「ああ、リーサには言えない理由があるのだ」
「え? 暫く会えないのに」

 私は一つ咳払いするとリーサに手を伸ばした。
「リーサ、行こうか」
「えー! どうして私も一緒に行くのですか?」
「1人では危険だからお供だ」
「この城にいるメンバーで私が一番不適任者だと思います」
「クロシッポも連れて行くから大丈夫だ」
「キュピーキュピー(嫌がっている)」
「ん?」
一応睨んでみた。
「キュピー-(下を向いて喜んでいる)」

 そして私はウキウキ気分でリーサと城を出た。
「また、リーサと旅ができるとは思わなかったな」
「あのう瞬間移動で行かないのですか?」
「あの機械は今壊れているのだ。修理の必要があるな」
「瞬間移動って魔法ですよね?」

「どうせリーサを独り占めできるから時間を掛けていこうってことだろう?」
魔王城にいるはずのナナカが言った。
「ナナカ! どうしてお前がここにいるのだ!」 
「あんなモンスターの中に人間を1人置いていくつもり? ミーニャがいなくなったのをいいことに食べられたらどうするのよ」
「それはそれで好都合というか」
「何か言った?」
「な、何も言ってないぞ」

 1人余分なのが付いてきてしまったが、私はリーサと再び旅ができることに胸を弾ませるのだった。
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