落ちこぼれ魔女のリーサとラスボスのミーニャ

小松広和

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第3章 仲良し3人組

第53話 歩くのは嫌です

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 もう5時間も歩き続けています。足が痛くなってきました。ミーニャさんとナナカさんは明るい声で話し続けています。この2人には疲れというものはないのでしょうか? そもそも引きこもり体質の私がこんな長い距離を歩くなんて考えられない話なんです。まさかこのまま目的地まで歩いて行くなんてことはないでしょうね?

「ミーニャさん。つかぬ事をお伺いしますが、目的の場所まで歩いたとしたら何日くらいかかるのですか?」
「1ヶ月だな」
ええーーー! まさか1ヶ月も掛けて歩かないですよね?

「バスかタクシーで言った方が早く着くと思います」
「異世界にそんな物があると思うか?」
それはそうですね。
「早く行かないと不正を働いたドラゴンの悪行が増えるばかりじゃないですか?」
「リーサ、いつからそんな正義感溢れるキャラになったんだ?」
「昔からです」
「‥‥‥‥」
ちょっと無理がありますね。

「リーサは歩きたくないだけだよ」
ナナカさん、その通りです。
「ミーニャさん、こうしましょう。一日歩いて次の日は瞬間移動をしてまた次の日は歩くというのはどうでしょうか?」
私は自分可愛さに必死で提案します。1ヶ月も歩いたら筋肉が付いて太ももが今の二倍になりそうですから。

「今回の旅行は瞬間移動を使わぬと決めたのだ」
旅行になってますね。パープルドラゴンの悪行を諫めに行くのではなかったのですか?

 何とか対策を考えねばなりません。私は大空を仰ぎながら必死で考えます。すると遙か上空を1匹のドラゴンが飛んでいきました。これです。
「ミーニャさん。空飛ぶドラゴンさんの背中に乗せて貰うことはできないのですか?」
「できるぞ。私が頼めばよほどレベルの低いモンスターでない限り背中に乗せてくれる」
やったー!

「頼んで乗せていただきましょう」
「ダメだ」
「どうしてですか?」
「そんなことをしたら早く着いてしまうではないか」
私は早く着きたいんです!

 仕方ありません。できればこの方法は使いたくないのですが。
「私ドラゴンの背中に乗ってみたいなぁ」
できるだけ甘えた声で言ってみます。
「う~ん」
悩んでますね。もう一息です。上目遣いで体をもじもじさせながらダメを押します。
「お・ね・が・いミーニャさん」
「わかった一度だけだぞ」
やりました! 私の作戦勝ちです。

「どのモンスターに頼むかだな」
「今、上空を飛んでいるのはどうですか?」
早く楽したい私は手っ取り早そうなモンスターを選びます。
「飛竜か。あいつはダメだな」
「どうしてですか?」
「背中がつるつるしていて捕まるところがないから飛んでる内に落ちる可能性が高い」
「それはダメですね」
死んだら元も子もありません。

 うまくいかないものですね?
「どうせなら速く飛ぶモンスターさんがいいな」
少しでも速く目的地に着くための工夫の一言です。
「速いならコンコルドンだな。あいつの速度は音速を超える」
「凄い!」
私の目が輝きます。そのスピードならどれだけ目的地に近付けることでしょう。

「だがこいつもダメだな」
「ええーーー! どうしてですか?」
「あいつの背中に乗って無事に目的地へ行けた者はいない」
考えてみればマッハですものね。

「スピードが遅いモンスターはいないんですか?」
「それならロカリーだ」
「それにしましょう」
「本当にこいつでいいのか?」
「どう意味ですか?」
「こいつの速度だと恐らく歩いた方が速い」
「使えないモンスターですね!」
ふと横を見るとナナカさんが笑い転げています。

 それにしても世の中うまくいかないものです。でもこのままだと1ヶ月歩かされます。すると遠く方で波の音が聞こえてきました。
「ミーニャさん、舟に乗って海の上を行きましょう」
「舟なんかないぞ」
「ナナカさん! 舟を作ってください!」
「凄い形相だね」
「私は歩きたくないんです!!」
「もろ本音言ってるけど」

 ナナカさんが舟を作るのに1時間かかりました。
「こんなに時間がかかるものですか?」
「なにせ大きいからね」
なるほど。

 できあがった舟は手こぎボートみたいな形状です。私はクルーザーをイメージしていたのですが。
「さあ、漕ぐんだ!」
私とナナカさんがオールのような物で舟を漕ぎます。ラスボスのミーニャさんが労働するわけないですからね。

 わずか10分で腕が痛くなりました。で、進んだ距離は20メートルくらいでしょうか? もしかしてかなり効率が悪いのでは?
「ナナカさん、動力の付いた舟を出してください」
「もう無理。魔力を使いすぎた」
「ええーーー!」

 こうして私は更に自分を苦しめる提案をしてしまったことに気付き後悔するのでした。これなら歩いたほうが楽でした‥‥。

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