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第二十四章 恋敵に差を付けろ!
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結局、今日は何もできないまま一日が終わろうとしている。時刻は夜の十一時をまわったところだ。
「あのう、小百合さん。いくら何でもそろそろ帰った方がいいのでは?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「嫌よ。帰るならマリーと一緒に帰るわ」
さっきから小百合のスマホが鳴り続けている。
「聞き分けが悪い女ね。私があなたと帰るわけないでしょ?」
「無理やりにでも連れて帰るわよ」
「ほう、あなたは私に触れることができて?」
「そんなの簡単じゃない」
小百合はマリーを掴み上げようとして慌てて手を離した。
「あら? どうしたの? 私を掴むんじゃなかったの? それとも電気は嫌いなのかな?」
悔しそうに眼を閉じ握りこぶしを作る小百合。怒りのオーラが小百合を包み込む。今は何も話しかけないでおこう。何を言っても怒られそうな気がする。
一方マリーは、
「あれ? どうしたの?」
と言いながら、小百合の顔の周りをちょろちょろ動き回っている。此奴もしかすると性格悪いのか?
その時、一階から母親の声がした。
「小百合ちゃん、お母さんから電話よ」
小百合はしぶしぶ立ち上がると下へと降りて行った。
「やっと邪魔者がいなくなったわね。ダーリン」
「マリー、ちょっとやり過ぎじゃないか?」
「このくらいでめげるキャラじゃないでしょ。叩ける時には徹底的に叩いておかないと」
小百合は霊にでも憑りつかれたような暗い表情で部屋に戻ってきた。
「私、帰るわ」
「ああ、その方がいい。家の人も心配してるだろうし」
俺は小百合と一緒に玄関へと向かいかけると、
「私も見送りしないとね」
マリーは明るい声で言うと、“ポン”という音と共に人間の姿に変身した。
「やっぱり私帰らない」
小百合は顔に手を当て泣き出した。
「マリー! いくら何でも小百合が可哀想すぎるだろう」
「ライバルが弱ってる時に差を広げるのは常識じゃない。もし、帰らなければ小百合は両親から『この家には行くな!』と言われるはずよ。帰ったとしても精神的ダメージを大きくしておけば、この恋に疲れて四郎から離れていく可能性が大きいわ」
マリーの頭脳作戦は予想以上に奥が深かった。もしかして異世界人は頭がいいのだろうか? でも待てよ。本能のまま生きている三号を見るに、とても知能が高いとは思えないのだが。
「大丈夫だよ。小百合さん」
さっきから二人のやり取りをじっくりと観察していた芽依がいきなり話し出した。よく考えたら小学六年生がこんな時間まで起きていたらあかんやろ。
「どうしたの? 芽依ちゃん?」
小百合は涙を拭きながらそっと顔をあげた。
「ちょっと待って。もう少しで三分経つから」
それを聞くとマリーは慌てて尻尾アクセサリーの姿に戻った。
芽依はマリーが尻尾アクセサリーになるのを確認すると、小さな箱を見つけ何やら妙な呪文を唱え始めた。そしてゴム手袋をはめるとマリーをおもむろに掴みその箱に入れた。
「ちょっと何するのよ!」
「この箱に白魔術をかけたの。ここにマリーさんを入れておけば黒魔術は使えないよ」
「芽依ちゃん」
「更に小百合さんが不安にならないよう、この箱は私の部屋に置いておくね」
「あ、ありがとう芽依ちゃん。私なんてお礼を言っていいか」
「芽依は小百合さんの味方をするからね」
「本当! とても嬉しいわ!」
小百合は芽依の手を握り締めた。
「ところで芽依。何でお前はこんなことができるんだ?」
「お兄ちゃんが怪しいって言ってた本に書いてあったの。『邪悪な黒魔術を封じる方法』というページだよ」
「覚えてなさいよー!」
こうして波乱の一日は幕を下ろすのであった。それにしても芽依って意外に頭がいいのでは? となると登場人物で一番頭が悪いのは俺なのか?
「あのう、小百合さん。いくら何でもそろそろ帰った方がいいのでは?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「嫌よ。帰るならマリーと一緒に帰るわ」
さっきから小百合のスマホが鳴り続けている。
「聞き分けが悪い女ね。私があなたと帰るわけないでしょ?」
「無理やりにでも連れて帰るわよ」
「ほう、あなたは私に触れることができて?」
「そんなの簡単じゃない」
小百合はマリーを掴み上げようとして慌てて手を離した。
「あら? どうしたの? 私を掴むんじゃなかったの? それとも電気は嫌いなのかな?」
悔しそうに眼を閉じ握りこぶしを作る小百合。怒りのオーラが小百合を包み込む。今は何も話しかけないでおこう。何を言っても怒られそうな気がする。
一方マリーは、
「あれ? どうしたの?」
と言いながら、小百合の顔の周りをちょろちょろ動き回っている。此奴もしかすると性格悪いのか?
その時、一階から母親の声がした。
「小百合ちゃん、お母さんから電話よ」
小百合はしぶしぶ立ち上がると下へと降りて行った。
「やっと邪魔者がいなくなったわね。ダーリン」
「マリー、ちょっとやり過ぎじゃないか?」
「このくらいでめげるキャラじゃないでしょ。叩ける時には徹底的に叩いておかないと」
小百合は霊にでも憑りつかれたような暗い表情で部屋に戻ってきた。
「私、帰るわ」
「ああ、その方がいい。家の人も心配してるだろうし」
俺は小百合と一緒に玄関へと向かいかけると、
「私も見送りしないとね」
マリーは明るい声で言うと、“ポン”という音と共に人間の姿に変身した。
「やっぱり私帰らない」
小百合は顔に手を当て泣き出した。
「マリー! いくら何でも小百合が可哀想すぎるだろう」
「ライバルが弱ってる時に差を広げるのは常識じゃない。もし、帰らなければ小百合は両親から『この家には行くな!』と言われるはずよ。帰ったとしても精神的ダメージを大きくしておけば、この恋に疲れて四郎から離れていく可能性が大きいわ」
マリーの頭脳作戦は予想以上に奥が深かった。もしかして異世界人は頭がいいのだろうか? でも待てよ。本能のまま生きている三号を見るに、とても知能が高いとは思えないのだが。
「大丈夫だよ。小百合さん」
さっきから二人のやり取りをじっくりと観察していた芽依がいきなり話し出した。よく考えたら小学六年生がこんな時間まで起きていたらあかんやろ。
「どうしたの? 芽依ちゃん?」
小百合は涙を拭きながらそっと顔をあげた。
「ちょっと待って。もう少しで三分経つから」
それを聞くとマリーは慌てて尻尾アクセサリーの姿に戻った。
芽依はマリーが尻尾アクセサリーになるのを確認すると、小さな箱を見つけ何やら妙な呪文を唱え始めた。そしてゴム手袋をはめるとマリーをおもむろに掴みその箱に入れた。
「ちょっと何するのよ!」
「この箱に白魔術をかけたの。ここにマリーさんを入れておけば黒魔術は使えないよ」
「芽依ちゃん」
「更に小百合さんが不安にならないよう、この箱は私の部屋に置いておくね」
「あ、ありがとう芽依ちゃん。私なんてお礼を言っていいか」
「芽依は小百合さんの味方をするからね」
「本当! とても嬉しいわ!」
小百合は芽依の手を握り締めた。
「ところで芽依。何でお前はこんなことができるんだ?」
「お兄ちゃんが怪しいって言ってた本に書いてあったの。『邪悪な黒魔術を封じる方法』というページだよ」
「覚えてなさいよー!」
こうして波乱の一日は幕を下ろすのであった。それにしても芽依って意外に頭がいいのでは? となると登場人物で一番頭が悪いのは俺なのか?
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