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第二十八章 瞬間移動の黒魔術
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図書館通いの日々は暫く続いたが、有力な手がかりを得ることはできなかった。俺たちは時間だけが無駄に過ぎていくのに焦っていた。この間にも不良グループたちの容体は悪化し続けている。
そんなある日のこと、マリーが『もう一度自分の世界へ戻って史料を探してくる』と言い残し朝から出かけて行った。そして小百合はいつもと同じように朝九時半に我が家へやって来る。
あれ? これってつまり、今日の作業は小百合と二人きりで進められるということになるのでは? しかも、何気におじゃま虫の二号と三号もマリーと一緒に帰っているのだ。これは何という幸運! 俺の顔は自然とほころんでゆく。
「では、今日の会議を始めます。小百合さん図書館で集めた資料をお願いします」
「ちょっと待て! 芽依。何でお前がいるんだ!?」
「メンバーの一員なんだから当然だよ」
俺は両手で頭を抱えた。こんな盲点があろうとは。
「お兄ちゃん、何してるの。会議始まってるんだよ」
「ところで、何でお前が仕切ってるんだ?」
「黒魔術に一番詳しいのは芽依だよ。これも当然じゃない」
「こういった会議は誰が仕切るかによって大きく成果が変わってくるんだ。今日の場合は誰が考えても小百合が仕切るべきだろう」
ここで自分の名前を出さず小百合の名前を出さなければならないあたり情けないにもほどがある。
「芽依は黒魔術が使えるんだよ」
「この前はお前じゃなくてマリーの父親が呪文を唱えたからできたんだぞ」
「そんなことないもん。芽依一人だってできるよ」
「いいか、お前は普通の地球人なんだ。急に黒魔術なんか使えるようにはならんだろう」
「わかった。じゃあ、一人でできる証拠を見せてあげるね」
「どうする気だ?」
「マリーさんたちがいない今できれば認めるよね」
「ちょっと待て!」
「芽依ちゃん、早まっちゃ駄目よ」
俺は慌ててドアの前に仁王立ちし、小百合は芽依の手を捕まえて必死で止めた。
「どうして止めるの?」
「あの黒魔術は使っちゃ駄目だ」
「何で? 誰にも迷惑かけないよ」
「いや、確実に迷惑かけるから」
「芽依ちゃん、例え造花でも枯らしたらかわいそうじゃない」
俺達の必死の説得が効いたのか芽依は大人しくなった。
「じゃ、他の黒魔術にする」
「どんな内容だ?」
「飛んでる鳩が突然落ちて死ぬ」
「そっちの方がかわいそうだろうが」
「飛んでる蚊が突然落ちて死ぬ」
「それは単なる殺虫剤だ」
「瞬間移動する」
この言葉に俺達は反応した。
「そんなことができるのか?」
「だってこの本に書いてあるよ」
なるほど、確かに半径五メートルの範囲なら瞬間移動できると書いてある。
「これってもしかして」
「屋上でのことね」
「ああ、マリーは屋上へ行く前に鞄のポケットから俺の胸ポケットへ瞬間移動したんだ」
「そういうことだったのね」
「何二人で納得してるの?」
学校での出来事を知らない芽依が尋ねた。
「何でもない。気にしないでくれ」
「わかった。それじゃあ、準備してくるね」
「準備って何のだ?」
「瞬間移動の黒魔術」
これだけ言うと芽依は部屋から飛び出していった。そして例の土鍋に電気コンロ、更には訳のわからないものをたくさん持って戻ってきた。今の時点で既に異臭がしているから恐ろしい。
「瞬間移動するのにどうして土鍋が必要なんだ?」
「芽依はまだ初心者だから」
「理由になってない!」
「芽依ちゃんの実力はよくわかったから。ね」
「適当なこと言わないで。芽依のこと信じてないくせに」
俺と小百合は身構えながら説得を続ける。
「芽依ちゃんの黒魔術を信用しているのは本当よ。そんなことしなくても大丈夫だから」
必死に説得する小百合だったが、芽依は準備を淡々と進めていく。
「蛙の水かきと三毛猫の髭、トカゲの尻尾に鶏の心臓」
それにしてもどこからこんな材料集めてきたんだ?
徐々に強烈な臭いが立ちこめてくる。するとその時、突然芽依が電気コンロのスイッチを切った。
「鮒の浮き袋がないわ」
芽依は立ち上がると、
「ちょっと材料を調達してくるから待っててね」
と言い残し、釣り竿を持って外に出ていった。
そんなある日のこと、マリーが『もう一度自分の世界へ戻って史料を探してくる』と言い残し朝から出かけて行った。そして小百合はいつもと同じように朝九時半に我が家へやって来る。
あれ? これってつまり、今日の作業は小百合と二人きりで進められるということになるのでは? しかも、何気におじゃま虫の二号と三号もマリーと一緒に帰っているのだ。これは何という幸運! 俺の顔は自然とほころんでゆく。
「では、今日の会議を始めます。小百合さん図書館で集めた資料をお願いします」
「ちょっと待て! 芽依。何でお前がいるんだ!?」
「メンバーの一員なんだから当然だよ」
俺は両手で頭を抱えた。こんな盲点があろうとは。
「お兄ちゃん、何してるの。会議始まってるんだよ」
「ところで、何でお前が仕切ってるんだ?」
「黒魔術に一番詳しいのは芽依だよ。これも当然じゃない」
「こういった会議は誰が仕切るかによって大きく成果が変わってくるんだ。今日の場合は誰が考えても小百合が仕切るべきだろう」
ここで自分の名前を出さず小百合の名前を出さなければならないあたり情けないにもほどがある。
「芽依は黒魔術が使えるんだよ」
「この前はお前じゃなくてマリーの父親が呪文を唱えたからできたんだぞ」
「そんなことないもん。芽依一人だってできるよ」
「いいか、お前は普通の地球人なんだ。急に黒魔術なんか使えるようにはならんだろう」
「わかった。じゃあ、一人でできる証拠を見せてあげるね」
「どうする気だ?」
「マリーさんたちがいない今できれば認めるよね」
「ちょっと待て!」
「芽依ちゃん、早まっちゃ駄目よ」
俺は慌ててドアの前に仁王立ちし、小百合は芽依の手を捕まえて必死で止めた。
「どうして止めるの?」
「あの黒魔術は使っちゃ駄目だ」
「何で? 誰にも迷惑かけないよ」
「いや、確実に迷惑かけるから」
「芽依ちゃん、例え造花でも枯らしたらかわいそうじゃない」
俺達の必死の説得が効いたのか芽依は大人しくなった。
「じゃ、他の黒魔術にする」
「どんな内容だ?」
「飛んでる鳩が突然落ちて死ぬ」
「そっちの方がかわいそうだろうが」
「飛んでる蚊が突然落ちて死ぬ」
「それは単なる殺虫剤だ」
「瞬間移動する」
この言葉に俺達は反応した。
「そんなことができるのか?」
「だってこの本に書いてあるよ」
なるほど、確かに半径五メートルの範囲なら瞬間移動できると書いてある。
「これってもしかして」
「屋上でのことね」
「ああ、マリーは屋上へ行く前に鞄のポケットから俺の胸ポケットへ瞬間移動したんだ」
「そういうことだったのね」
「何二人で納得してるの?」
学校での出来事を知らない芽依が尋ねた。
「何でもない。気にしないでくれ」
「わかった。それじゃあ、準備してくるね」
「準備って何のだ?」
「瞬間移動の黒魔術」
これだけ言うと芽依は部屋から飛び出していった。そして例の土鍋に電気コンロ、更には訳のわからないものをたくさん持って戻ってきた。今の時点で既に異臭がしているから恐ろしい。
「瞬間移動するのにどうして土鍋が必要なんだ?」
「芽依はまだ初心者だから」
「理由になってない!」
「芽依ちゃんの実力はよくわかったから。ね」
「適当なこと言わないで。芽依のこと信じてないくせに」
俺と小百合は身構えながら説得を続ける。
「芽依ちゃんの黒魔術を信用しているのは本当よ。そんなことしなくても大丈夫だから」
必死に説得する小百合だったが、芽依は準備を淡々と進めていく。
「蛙の水かきと三毛猫の髭、トカゲの尻尾に鶏の心臓」
それにしてもどこからこんな材料集めてきたんだ?
徐々に強烈な臭いが立ちこめてくる。するとその時、突然芽依が電気コンロのスイッチを切った。
「鮒の浮き袋がないわ」
芽依は立ち上がると、
「ちょっと材料を調達してくるから待っててね」
と言い残し、釣り竿を持って外に出ていった。
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