ブラックテイルな奴ら

小松広和

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第五十章 二号の怒り

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 二人は何が起こったのか理解しているようだが俺にはさっぱりわからない。
「何を頷いているんだ?」
「わかったのよ。魔力を高める方法が」
「?」
「でも、どうしたらいいの?」
とマリーが尋ねると、
「私に任せて」
小百合は自信たっぷりに答えた。
「マリー、粉はまだあるわよね。じゃあ、もう一度やるわよ。全員さっきの役目でお願い」
小百合がそう言うと全員元の位置でスタンバイした。すると俺は成功を祈るだけか。
「あ、ごめん。その前に芽依ちゃん、例のボタン持ってきて」
芽依は暫く考え、
「あ! はーい」
と喜んで部屋から出ていった。
「例のボタンって何?」
マリーが当然の疑問を投げかける。
「いいから私を信用して」
芽依が俺の部屋に戻ってくると黒魔術の儀式が再開された。
「いい芽依ちゃん。私が合図したらそのボタンを押して」
「わかった」
「ちょっと待て。そのボタンてもしかして三号の」
俺がそう言いかけると小百合は大きな声でこれを制した。
「何も言わないで! これ以上邪魔をすると二度と口をききませんよ」
俺は思わず正座した。
 小百合の叱りつけるような口調を見る機会はほとんどなかったが、この迫力は一体何なんだ。華奢な体つきから出るオーラはただ事ではない。
 俺が余計なことを考えている間に二号の黒魔術は進んでいた。
 さっきと変わらない展開。魔力測定器も同じように上がっていった。
「芽依ちゃん、今よ」
芽依がボタンを押すと若い女性の立体映像が現れた。
「ピピプルさん、こんにちは。いつも楽しい話をしてくれてありがとうございます。今回は映像付きで送らせていただきました。私の映像を見て嫌いにならないでくださいね」
マリーと二号はあっけにとられたようにそれを見つめた。三号は慌ててボタンの回収に向かうが、俺はとっさに三号の尻尾を握って、これを阻止した。
「マリーのお母さん。これは今日発見したものなの。たぶん旦那さんが若い女性と文通をしている証拠だと思うわ」
小百合の言葉に二号は怒りに満ち溢れた形相で三号を睨みつけた。三号は素早く俺の後ろに隠れる。おい、俺を盾にしたら俺まで巻き沿いを食わねえか?
 二号がよくわからない言葉を叫ぶと俺と三号はうつ伏せに倒れ、もがき苦しんだ。やっぱり‥‥
「すごいさっきより魔力測定器の針が勢いよく上がっていくよ。二倍、三倍」
「お母さん早く、魔力を上げる魔術を」
二号が我に返り呪文を唱え始める。
「お願い。成功して」
小百合は目を閉じ祈るように言った。そして二号から光が溢れたかと思うと、その光は総合病院へと向かっていった。
「やったのね」
「ええ、やったわ」
心配そうに聞く小百合にマリーが自信たっぷりに答えた。
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